【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. 新世界
新世界

新世界 大阪市 昭和レトロ浪速の匂い

通天閣の展望台で「ここから見るあべのハルカスが1番の眺め」と話す高井隆光さん

通天閣の展望台で「ここから見るあべのハルカスが1番の眺め」と話す高井隆光さん

 「通天閣の展望台から見上げるハルカスはいい眺めでしょう。ハルカス見るなら通天閣へ」と、大阪市浪速区、通天閣観光の高井隆光副社長(41)は威勢がいい。

 隣接する同市阿倍野区に日本一の高層ビル「あべのハルカス」(高さ300メートル)が全面開業して2年5カ月。新しいランドマークの出現に、北西へ徒歩15分ほどの通天閣(高さ103メートル)は影響が出ているかと思いきや、さすが大阪人。逆境もチャンスに変える商魂と心意気に拍手を送りたくなる。

 実際、通天閣を中心に広がる新世界エリアの商店街は観光客や女性客でにぎやか。ハルカスの60階から見下ろすと豆粒みたいな通天閣だが、週末は展望台に1時間待ちの行列も。高井さんは「お客から『えろう(えらく)なったな』とどやされます」と苦笑いする。

 
新世界は若い観光客らで夜もにぎわう。背後はライトアップした通天閣

新世界は若い観光客らで夜もにぎわう。背後はライトアップした通天閣

 串カツ、どて焼き、スマートボール、囲碁将棋クラブ、芝居小屋、お笑い劇場…。昭和の雰囲気が色濃く残る新世界は、1903(明治36)年に催された内国勧業博覧会の西側跡地として整備された。大阪にはキタとミナミの2大繁華街があり、阿倍野を含めいずれも再開発で成長を続ける。新世界町会連合会の大西幸次郎会長(65)は「ここは開発から取り残されたが、むしろそれが街の魅力になった。昭和レトロは若者たちには新鮮で、まさに“新世界”に見えるようだ」と分析する。

 バブル崩壊までは労働者の街だったという。南側に近接する西成区の日雇い労働者のおなかを満たすのが衣をたっぷりつけた串カツだった。3代目、4代目の商店主有志の集まり、新世界援隊の近藤正孝代表(53)によると、新世界をにぎわせた集客の核はもとは演芸劇場で、時代とともに映画館へ、さらにパチンコ店へ、そして串カツ店に変わってきた。「串カツは女性や子供が食べるものではなかった。おっちゃんがビールを飲みながらつまむものであり、小さな老舗だけだったが、新世界名物としてブームになり今では40軒に増え、大型店に修学旅行生が観光バスでやって来る」という。

 
新世界の串カツ店には行列ができる店も=いずれも大阪市浪速区で

新世界の串カツ店には行列ができる店も=いずれも大阪市浪速区で

 さらに西成区の簡易宿泊所は、労働者の高齢化と景気低迷で、代わって外国人のバックパッカーが急増。1泊2000円前後という安さが魅力のようだ。「新世界はすっかり大阪観光のルートに入った」と近藤さん。街の魅力について「大阪ではアイスコーヒーを『冷コー』言います。もともと独特の文化としてあるのに気付かないものを見つけて、ブログやネットで発信する。それが本当の街おこしや思います」と語る。

通天閣のスタジオで歌って踊る関西のご当地アイドル「オバチャーン」。客もノリノリだ

通天閣のスタジオで歌って踊る関西のご当地アイドル「オバチャーン」。客もノリノリだ

 通天閣の展望台から下りると、地下スタジオでご当地アイドル「オバチャーン」のライブが始まった。平均年齢63・5歳。ディレクターの日座裕介さん(37)は「サバを読んでいるのでホンマは67歳」と笑う。「不倫や不正会計、薬物などでしくじりがちな方々を、人生経験豊富なおばちゃんたちが歌とダンスで元気づけます」とPR。香港からの旅行客、コーディー・モーさん(37)は「こんなアイドルは香港にはいない。新世界は楽しい街ですね」と笑った。

 ヨーロッパなどの上質なジャズを紹介する澤野工房も新世界にある。代表の澤野由明さん(66)の“本業”は履物店。「最初は本業で食べていたが、今ではジャズの方が売れてます」と話す。街の魅力について「キタやミナミは東京と変わらない。大阪らしい匂いがする街は新世界」。店主らの創意工夫もあって、ますます新しい世界が広がりつつあるようだ。

 文・写真 立尾良二

(2016年8月5日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
新幹線の新大阪駅から地下鉄御堂筋線の動物園前駅まで約20分。
同駅や地下鉄堺筋線の恵美須町駅、JR新今宮駅から新世界エリアまで徒歩数分。

◆問い合わせ
通天閣観光=電06(6641)9555
浪速区役所=電06(6647)9734
ハルカス300インフォメーション=電06(6621)0300

おすすめ

三桂クラブ

三桂クラブ

★通天閣
現在は1956(昭和31)年に再建された2代目。
幸運の神様「ビリケンさん」を祭る神殿や土産ショップも。
展望台は大人700円、小学生・幼児300円など。
営業時間は午前9時から午後9時(入場は午後8時30分まで)。

★串かつだるま新世界総本店
総本店セットは元祖串カツ(牛肉)、エビ、つくね、キス、紅しょうがなど9本にどて焼き付きで1512円。
串は20種類が1本113円。
ホタテなどは227円。
ソースは2度づけ禁止。
店員は「ソースが足りないときはキャベツですくってかけましょう」。
営業時間は午前11時から午後10時30分。
電06(6645)7056

★三桂クラブ
将棋と囲碁の盤がずらりと並ぶ。
席料は1時間300円。
3代目の席主、伊達利雄さん(51)が客の実力で対戦相手を選んでくれる。
客は北海道から沖縄まで全国から来るほか外国人も通う。
電06(6643)6019

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

目的で旅を選ぶ
気分で旅を選ぶ
旅コラム
国内
海外