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新上五島と小値賀

新上五島と小値賀 長崎県 五島列島 民泊で島の食材満喫 

海に面して立つ教会。町内には29の教会がある=長崎県新上五島町で

海に面して立つ教会。町内には29の教会がある=長崎県新上五島町で

 長崎港から1時間40分、高速船に乗り五島列島・中通島(長崎県新上五島町)の鯛(たい)ノ浦港に着いた。島は山が海に迫り緑が濃い。集落に教会の建物が目につく。江戸幕府のキリシタン禁教令のもと、潜伏して信仰を続けた信者たちの苦難の歴史を秘めた島でもある。「町の人口約2万人のうちカトリックの信者の方は5000人ほどいます」と、案内してくれた町観光商工課の中多育郎さん(42)。

 新上五島町だけで今も29の教会が大切に守られている。中でも頭ケ島(かしらがしま)天主堂は、迫害が終わった明治から大正にかけ、島の信者たちが自ら切り出した砂岩を積んで造った珍しい石造りの教会だ。天主堂がある頭ケ島集落は、2018年の世界文化遺産登録を目指し、国が7月に推薦を決めた「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の構成資産のひとつになっている。

 
世界遺産へ国の推薦が決まった頭ケ島集落にある頭ケ島天主堂=新上五島町で

世界遺産へ国の推薦が決まった頭ケ島集落にある頭ケ島天主堂=新上五島町で

 この教会堂は花の御堂とも呼ばれ、内部は島に自生するツバキなどの花柄装飾が華やかだ。5弁のツバキがここではなぜか4弁に描かれている。潜伏時代は、4弁に描くことで十字の象徴にしたり、バラの代わりに聖母マリアの象徴にしたりしたといわれ、装飾はそれにならった可能性があるという。

 
五島うどん手作り体験。2本の棒に生地をかけ、手で延ばしていく=新上五島町で

五島うどん手作り体験。2本の棒に生地をかけ、手で延ばしていく=新上五島町で

 島の「船崎饂飩(うどん)伝承館」で五島うどん作りを体験した。8世紀ごろ、島に滞在した遣唐使が製法を伝えたとされ、船崎地区では今もうどん作りが代々受け継がれている。生地を畳んで切る手打ちではなく、生地を2本の棒にかけて細く延ばす手延べで作る。途中で麺が切れ苦労した。半生の麺をゆで、そのまま鍋からすくってアゴ(トビウオ)だしで食べた。モチモチの食感とだしが絶妙で、何杯もおかわりした。

民泊先の山田さん夫妻。食卓には島のごちそうがずらり=同県小値賀町で

民泊先の山田さん夫妻。食卓には島のごちそうがずらり=同県小値賀町で

 旅2日目。中通島から船で五島列島の北部にある小値賀(おぢか)島(小値賀町)に渡った。30分もあれば車で1周できる小さな島だ。ここでは島の一般家庭に民泊した。
 港に着くと、民泊先の元役場職員山田清澄さん(74)が軽自動車で迎えに来てくれていた。車で5分ほどで海を見下ろす高台の家へ。妻のヨシ子さん(70)が笑顔で迎えてくれた。

 ヨシ子さんは、早速夕食の準備だ。「やってみますか」。誘われて島の郷土料理ダイコンのごま酢あえに挑戦した。すり鉢でゴマをすると香ばしい匂いがたちあがる。ダイコンとみそ、揚げ豆腐などを混ぜて出来上がり。「後はやるからお風呂どうぞ」。言われるまま風呂をいただき、戻ると食卓にはヨシ子さんの手料理がずらり。

 旬のイサキ、タイ、アオリイカの刺し身、アゴの薩摩(さつま)揚げ、アオサの天ぷら、ブリの照り焼き、ホウレンソウのイカ墨あえ、カツオのなまり節を使った押しずしなど。すべて島の食材で作った料理はどれも最高のごちそうだ。まずはビールで乾杯し焼酎を酌み交わしながらだんらんに。島の暮らしから人生論まで、気が付くとあっという間に夜が更けていた。

 島では山田さん宅など27軒が民泊を行っている。山田さんは始めて8年、今や国内ばかりか世界中からお客さんがやって来るという。「おかげで、世界中に親戚ができたよう。こうしていろんな方といろんなお話をするのが何より楽しいんです」とヨシ子さん。

 旅立ちの時、山田さん夫妻が港まで見送りに来てくれた。見えなくなるまで手を振る2人の姿に「また来よう」、自然にそう思っていた。

 文・写真 橋本節夫

(2016年8月19日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
長崎空港へは羽田、中部国際空港から約1時間半。
空港から長崎港はバスで約40分。長崎港-上五島・鯛ノ浦港は高速船で1時間40分。
上五島(中通島)-小値賀島は高速船(35分)かフェリー(50分)で。
小値賀島へ直行する場合は、博多港発の夜行フェリー(約5時間)か、佐世保港発の高速船(1時間25分)またはフェリー(2時間40分)が便利。

◆問い合わせ
長崎県東京事務所観光物産センター=電03(3241)1771

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国指定天然記念物のアコウ樹

国指定天然記念物のアコウ樹

★国指定天然記念物のアコウ樹
新上五島町の奈良尾神社にある。
樹齢650年以上、高さ約25メートル、幹周り約12メートルの巨樹。
根が2股に分かれ天然の鳥居のように参道をまたいでいる。
下をくぐると長生きできるといわれる島のパワースポット。

★船崎饂飩伝承館
島の民家に受け継がれる五島うどん作りを2、3時間で体験できる。
延ばしたうどんは半生でゆで上げ味わえる。
残りは後日配送。
4人まで1万円、5人以上は1人2200円。
1週間前までに要予約。
新上五島町観光物産協会=電0959(42)0964

★小値賀島の民泊
島人の家に宿泊し一緒に食事の支度をしたり、ごはんを食べたり、釣りや農作業をしたり、島の日常を体験できる。
受け入れ民家は漁師や農家などさまざま。
料金は1人8640円(2人以上の場合)。
おぢかアイランドツーリズム=電0959(56)2646

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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