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水原華城(スウォンファソン)

水原華城(スウォンファソン) 韓国 城壁連なるイ・サンの町

れんがと石を併用し、万里の長城のように連なる城壁

れんがと石を併用し、万里の長城のように連なる城壁

 中国の万里の長城のように延々と連なる城壁が、雨煙の向こうでかすんで見える。全長は5.7キロに及び、4~6メートルの黒と灰色の壁が威容を誇る。

 旧市街地を囲むように形成された水原華城(スウォンファソン)の総面積は、ナゴヤドーム27個分の130ヘクタール。1997年に世界遺産に登録された。築城したのは、朝鮮王朝後期の名君として知られる22代の正祖大王(1752~1800年)。韓国ドラマのファンには、「イ・サン」の名の方がなじみがあるだろう。

 ガイド歴25年以上の崔英淑(チェヨンスク)さんは「非業の死を遂げた父を弔うことと、自身の権威を示すために建てた」と解説する。朝鮮半島の城壁といえば、それより前は石が基本だったが、砲撃への守りを固めるため、れんがを併用した。これらを積み上げる機械も活用され、作業の効率化が図られた。着工から2年9カ月後の1796年9月に完成している。

 
(上)ソウルの南大門を上回る規模を持つ八達門。城の南側に位置する(下)国弓体験を楽しむ若者たち=いずれも韓国・水原市で

(上)ソウルの南大門を上回る規模を持つ八達門。城の南側に位置する(下)国弓体験を楽しむ若者たち=いずれも韓国・水原市で

 東洋、西洋の新しい構造理論を採用し、砲台、兵士の休憩所、軍事指揮所などが整然と並んだ城内。ソウルの南大門を超える規模の「八達門」など4つの大門を構えた。城郭の奥まった場所に人がすれ違えるほどの狭さの「暗門」は、敵の目に付かないよう、ひそかに家畜や軍需品を行き来させるためだったといい、4カ所に整備された。その一方、兵士の見張り場所は外側に突出し、接近する敵を発見しやすい構造だ。

 各地に日本語訳の書かれた案内板が整備され、勢いよく水の流れる水門も。晴れた日は、観光名所や地元住民の憩いの場として多くの人でにぎわう。国弓体験もできる。

 そして城の中央付近にあるのが、王の別邸「華城行宮(ファソンヘングン)」。韓国の行宮の中で最大級といわれ、建築当時は600棟以上が存在した。イ・サンがソウルを離れ、近くにある父の墓参をしている間に滞在したほか、母親の還暦祝いも盛大に行われた。現在は取り壊されているが、日本統治時代には、この中に病院もあった。「宮廷女官チャングムの誓い」などのドラマロケ地としても知られる。

 城内には軍事面以外でも、農業用の貯水池が2カ所に整備されたといい、イ・サンは豊かな町づくりにも腐心した。歴史研究家の中には、「もっと長生きしていれば、さらに西洋の技術が入り、後に帝国主義にのみ込まれる歴史は来なかったのでは」と声が上がるほど評価の高いイ・サン。だが、その死後、城内は次第に廃れていき、日本の統治時代や朝鮮戦争によって、施設の多くが破壊された悲しい歴史を持つ。

 1970年代から地元住民を中心に復元を求める声が相次ぎ、古い資料などを基に、現在の形に再建された。

 行宮の近くにある「工房通り」には手作り品の店などが軒を連ねる。売られているのは、ペンダントや木製品、陶器などさまざま。色とりどりのタイルが飾られた外壁もあり、おしゃれな雰囲気を漂わせている。

 貸しギャラリーで皿などを展示していた地元の陶芸家、盧承愛(ロスンエ)さん(58)も「この町にはイ・サンの夢が詰まっている。地元住民だけでなく、外国人観光客にも韓国の伝統に触れてほしい」と期待する。城外の新市街地は、近代的な高層ビルが際立つが、多くの市民が、200年以上の歴史を持つ城内の町に、深い愛着と誇りを抱いているようだ。

  文・写真 安田功

(2016年9月9日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
名古屋、東京、大阪から、仁川国際空港または金浦国際空港までは直行便で2時間前後。
ソウル方面から、水原市内まではバスや鉄道で1時間前後で行ける。

◆問い合わせ
インターネットで「水原華城」で検索すると、さまざまな情報が見られる。
水原駅などに観光案内所がある。

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★グルメ
骨付きで、塩ベースの味付けをしたのが特徴の「水原カルビ」の店舗が、市内に点在している。
食べやすいように、店員がはさみで小さく切ってくれる。
キムチやナムルなどが載った小皿もふんだんに食卓に並ぶ。
中国人ら外国人観光客も多い。

★韓国民俗村
水原市近くの龍仁市にあり、朝鮮王朝時代の村などを再現。
各地方の農家や貴族の屋敷など200以上の古い建物が並ぶ。
馬上武芸などの実演もある。

★エバーランド
龍仁市に所在する韓国最大級のテーマパーク。
ジェットコースターや花火、パレードなどが楽しめる。

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