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熊川宿と鯖街道

熊川宿と鯖街道 福井県若狭町、小浜市 海と都を結んだ拠点

往来に目を光らせた熊川番所の前を通って宿場に入る=福井県若狭町で

往来に目を光らせた熊川番所の前を通って宿場に入る=福井県若狭町で

 福井県若狭町の国道303号沿いの道の駅「若狭熊川宿」で待ち合わせた。熊川宿はかつて日本海側の小浜と京都を結ぶ若狭街道の中継地として栄えた。

 「道の駅も改修されて広くなった」と、案内してくれる宿場の語り部、宮本一男さん(75)が言った。昨年、「海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群~御食国(みけつくに)若狭と鯖(さば)街道~」として日本遺産の認定を受けたことも追い風となっている。

 御食国の歴史は古代から始まるが、鯖街道は、江戸時代以降、小浜で水揚げしたサバを一塩して若狭街道などを通って運んだことから名が付いた。古くから京と最短で結ぶ針畑峠を越える道なども鯖街道だが、若狭街道が最大の物流を担った。

 道の駅の裏手の旧街道に回る。緩やかにくねった道沿いに古い町並みが続く。1996年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。通りの入り口には平屋の「熊川番所」。復元の建物だが、2体の役人の人形が、刺股(さすまた)、突棒(つくぼう)などの捕物用武具を背に、当時のように往来に目を光らせる。

最盛期には1日1000頭もの牛馬が通ったという熊川宿=福井県若狭町で

最盛期には1日1000頭もの牛馬が通ったという熊川宿=福井県若狭町で

 宿場は東西に約1100メートル。番所から小浜方面へ坂を下るように、上ノ町(かみんちょ)、中ノ町(なかんちょ)、下ノ町(しもんちょ)と続く。そばでせせらぎが聞こえる。前川と呼ばれる水路を流れる音だ。家の前に川戸と呼ばれる洗い場があり、年配の女性が布のような物を洗っているのを見かけた。

 通りには、小浜から届く塩や海産物などを、馬借(ばしゃく)や、人力の背負(せおい)を使って京へ運ばせる問屋が軒を並べた。最盛期には1日1000頭もの牛馬が行き来したという。問屋だった名残か、多くの家の入り口の柱に、駒つなぎという鉄の輪が残っている。

 今でこそ往時を知る代表的な宿場の一つだが、保存活動は容易ではなかった。推進役の一人だった宮本さんは「妻籠(つまご)宿(長野県)がモデルだった。最後は全戸投票で決めたが、反対の人もいて苦労した」と振り返る。

 保存地区の選定で、宿場を盛り上げる動きも起こった。中ノ町の「まる志ん」の経営者、岡本宏一さん(51)は99年、築180年の旧商家の自宅で、葛(くず)とさばずしの店を始めた。「この宿場ならではの食べ物で訪れる人を迎えようと思った」と言う。

 熊川葛は、きれいな谷川で寒ざらしされることから、江戸時代から京都で珍重された。一時途絶えそうになった葛作りも町の有志によって続いている。

透明感を大切にしているという岡本宏一さんが作る葛もち=福井県若狭町で

透明感を大切にしているという岡本宏一さんが作る葛もち=福井県若狭町で

 店で人気の葛もちを頼んだ。1皿540円。透明感のある葛独特の見た目と味わい。「時間がたつと透明感が薄れる。葛の良さを知ってもらいたいと、注文を受けてから炊き上げています」と岡本さん。

 
いづみ町商店街で江戸時代以来の店を守る益田隆さん=福井県小浜市で

いづみ町商店街で江戸時代以来の店を守る益田隆さん=福井県小浜市で

 鯖街道の起点の福井県小浜市に足を運んだ。熊川宿から車で約20分。古い通りのいづみ町商店街に、「さば街道起点」の銘板が、「京は遠ても十八里(約71キロ)」の当時の言葉を添えて埋め込まれている。港で水揚げされた海産物がここから京に向かって送り出された。

 江戸時代からサバを取り扱う「益田商店 元祖朽木(くつき)屋」の益田隆さん(65)は12代目。京へは熊川宿などから朽木(滋賀県高島市)を抜けて運んだことから付いた屋号だ。店先に名物の浜焼きさばを並べている。

 「小浜で水揚げのサバですか」と聞くと、「もう今はノルウェーのサバだね。でも、脂がのっておいしいよ。近海ではいいサバは取れなくなったから、仕方がないね。回遊魚だから同じだよ」と屈託なく笑った。

 港近くの飲食店で、焼き魚、フライなどサバずくめの昼食を食べた。味は良かったが、このサバもノルウェー産かな、と思うとやや複雑な思いがした。

 文・写真 朽木直文

(2016年9月16日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
熊川宿へは、新幹線米原駅からJR北陸線で敦賀駅まで特急で約30分、小浜線に乗り換え、上中駅まで約50分。
同駅から路線バスで約10分。
車では、北陸自動車道敦賀JCTから舞鶴若狭自動車道・若狭上中ICを経由するなど多くのルートがある。

◆問い合わせ
若狭町観光交流課=電0770(45)9111、若狭おばま観光案内所=電0770(52)2082

おすすめ

御食国若狭おばま食文化館

御食国若狭おばま食文化館

★旧逸見勘兵衛家住宅
熊川宿にある。江戸末期の造り酒屋だったといわれ、若狭町が保存改修して1998年から一般公開。
町家造りの外観を残し、喫茶のほか宿泊もできる。
午前10時~午後4時。
入館料100円、中学生以下無料(喫茶、宿泊は別)。
休館は原則火・水・金曜。
電0770(62)0800

★御食国若狭おばま食文化館
小浜市川崎。
「食のまちづくり」の拠点施設として2003年に市が開設。
ミュージアムではいくつもある鯖街道のルートや当時の漁、運搬の様子も紹介。
2階に若狭塗などの体験工房もある。
午前9時~午後6時。
入館無料(体験料は別)。
原則水曜休館。
電0770(53)1000

★福井県立若狭歴史博物館
小浜市遠敷(おにゅう)。
若狭の歴史や仏像、祭りなどの文化を展示。
御食国の証しとして、奈良時代の平城京跡から発見された、若狭からの鯛鮓(たいすし)、胎貝(いがい)などの荷札(木簡・複製)もある。
午前9時~午後5時。
常設展は一般300円など。
電0770(56)0525

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