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さんふらわあ

さんふらわあ 神戸-大分 船で見る朝日に歓声

船の前方から姿を現した朝日に歓声を上げる乗客

船の前方から姿を現した朝日に歓声を上げる乗客

 銅鑼(どら)のけたたましい音が出港の時を告げる。夕闇迫る六甲アイランド(神戸市)から船体が静かに離れると、波穏やかな瀬戸内海を縫うように滑り始めた。揺れをほとんど感じさせない快適さだ。

 神戸-大分を結ぶフェリー「さんふらわあごーるど」は11,178トン、全長165.5メートルで旅客定員は716人と国内でも大型。第一船は1972年、名古屋-高知-鹿児島で就航し豪華客船として利用された。近年は豪華さを残しつつ、一般の客層にも部屋の設備を充実させ快適な旅を提案している。運営会社「フェリーさんふらわあ」営業企画室の高木俊彦さん(39)は「マイカーで乗船後、夜眠っている時間を移動に利用して、大分に着けばそのまま目的地に向けて出発できることがフェリーの醍醐味(だいごみ)。ホテル代もかかりません。学生の合宿などにも多く利用されています」と語る。昨年は同社の3航路合わせて55万人超が利用した。

 
乗船するとアテンダントが出迎え、部屋を案内してくれる=神戸港で

乗船するとアテンダントが出迎え、部屋を案内してくれる=神戸港で

 デッキがある6階を含む5階から7階に配置された客室の種類は、バルコニーやバス・トイレ付きのデラックスルームから、大部屋形式の「ツーリスト」まで幅広い。「近年はプライバシーを気にする利用者が増えているため、相部屋でありながらベッドスペースを仕切ったプライベートベッドも備えるようになりました」と高木さん。デラックスルームを利用していた神戸市の4人家族は「風呂付きの部屋は人気が高いので2カ月前の発売日初日に予約をしました。子どもの着替えなど荷物が多いですが、車で乗船すればとても楽です」と喜んだ。

 出航後約1時間で見どころの1つ明石海峡大橋へ。デッキに出ると、時速約40キロで進む船上は予想以上に風が強い。街からの光は届くが、その喧騒(けんそう)は海上までは追ってこない。右岸の神戸市や兵庫県明石市と左岸の同県淡路市の街の光をつなぐようにライトアップされた大橋が近づき、頭上を通り過ぎた。全長3911メートルの橋を真下から見上げ、その大きさに圧倒される。星空の下、デッキのあちこちで家族や仲間たちが楽しそうに語り合っていた。

 
ライトに浮かび上がる明石海峡大橋。後方は神戸市と兵庫県明石市街

ライトに浮かび上がる明石海峡大橋。後方は神戸市と兵庫県明石市街

 夕食はレストランでバイキング形式の食事を楽しんだ。大分の郷土料理「とり天」や九州産の野菜など地元食材を提供している。神戸の夜景が見える窓際のテーブルはすぐに埋まってしまった。

 翌朝の大分到着時間が早いため、午後10時の消灯とともに就寝した。目が覚めるともう西大分港が近づいていた。午前6時30分、観光客らとともに由布院の温泉地へと向かった。

別れと旅立ちを演出する「紙テープ投げ」のイベント=西大分港で

別れと旅立ちを演出する「紙テープ投げ」のイベント=西大分港で

 帰りは週末限定イベントの「紙テープ投げ」を体験できた。外部通路に集まった乗客が、アテンダントから配られる紙テープを見送る人たちに投げる、船ならではの別れと旅立ちの儀式。少し大げさな気もしたが、やってみると、岸壁で誰かを見送る見ず知らずの人が紙テープを拾ってくれ、手を振り合う。名残惜しい気持ちに浸った。

 翌朝、東進する船の行く先から昇る朝日を見た。日の出は雲に隠れていたが待つこと15分、雲間からようやく太陽が姿を現した。空が朱に染まり青へと刻々と変わる。「早起きしてよかった」。デッキに集まった人たちは旅の疲れが癒やされ、満足そうに下船準備のため部屋へ戻っていった。食事や風呂、景色を眺めているとあっという間に六甲アイランドに到着。往復約24時間の船旅だった。単なる移動手段ではなく、乗っていること自体が旅を楽しむことだと気付かせてくれる夜だった。

 文・写真 南方浩

(2016年9月23日 夕刊)

メモ

地図
「さんふらわあぱーる」(西大分港で)

「さんふらわあぱーる」(西大分港で)

◆交通
さんふらわあ号は大阪-別府と神戸-大分、大阪-志布志(鹿児島県)の3航路あり、いずれも毎日夕方に出港し翌朝到着する。
年中無休だが、整備点検時などは運休する。

◆問い合わせ
フェリーさんふらわあ=大阪-大分と神戸-大分航路は、電(0120)563268、大阪-志布志航路は、電(0120)326856

おすすめ

由布院の辻馬車

由布院の辻馬車

★ウィズペットルーム
神戸-大分航路ではペットと一緒に泊まれる部屋がある。
千葉県柏市の芳賀望実(はがもちざね)さんは「ケージに入れて運ぶペットルームもありますが、中型犬には窮屈なので一緒に泊まれる部屋は素晴らしい」。
スタンダードルーム料金に追加料金8600円(通常期)が必要。

★由布院の辻馬車
JR由布院駅前を発着し約50分かけて町をめぐる。
大人(中学生以上)1600円。
子ども(4歳以上)1100円。
予約は由布院温泉観光案内所。
電0977(84)2446

★由布見通りと湯の坪街道
由布院駅から金鱗湖方面へ続く通りは土産店などが並ぶ散策コース。
その中の一店「GABUGABU」のフレッシュジュースは冷えた果物の実をつぶし、皮をそのまま容器にして飲む。
グレープフルーツやオレンジは500円。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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