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城崎温泉

城崎温泉 兵庫県豊岡市 昭和の趣 外国人魅了

浴衣姿になって温泉街にかかる橋でくつろぐ外国からの観光客ら

浴衣姿になって温泉街にかかる橋でくつろぐ外国からの観光客ら

 城崎温泉と聞けば、文豪志賀直哉の短編小説「城の崎にて」を思い浮かべる人が多いに違いない。歴史ある湯治場だが、ここ数年は、意外にも外国から注目を浴びている。

 大阪・伊丹空港を経由して、コウノトリ但馬空港に行く空路で向かった。ちょうど実りの時期だった。私が乗った小型飛行機からは、山に囲まれた田んぼが目に入る。濃淡のある黄金色がどこまでも広がっている。

 温泉街は、空港からバスで30分ほどの距離にある。午後2時ごろから観光客の姿が目につき始めた。

 旅館で貸してくれる浴衣とげたで、旅館の外に点在している7つの個性的な「外湯」を回るのが、城崎温泉の定番の楽しみ方だ。

 
外湯の中でも規模が大きい一の湯。午後11時まで入浴が可能だ

外湯の中でも規模が大きい一の湯。午後11時まで入浴が可能だ

 私も早速げたに素足を入れて外湯回りをしてみた。「まんだら湯」「地蔵湯」など歴史のある名前がついており、それぞれ効能が違う。湯船では日本語に交じって中国語、英語、フランス語も飛び交っている。

 「2007年に、欧米で定評のある旅行ガイド、ロンリープラネットに温泉のことが取り上げられました。13年にはミシュランガイドで二つ星の観光地に選ばれ、一気に知名度が上がりました」と話すのは、城崎温泉のある兵庫県豊岡市大交流課の谷口雄彦課長補佐(48)だ。

 同市によると11年に約1100人にすぎなかった城崎温泉への外国人宿泊客は、15年には約3万1000人と4年で30倍に増えた。

 城崎の旅館は比較的小さい。古い建物も多く、昭和の温泉地のムードが色濃い。そのレトロさが、逆に外国人には新鮮に映るようだ。 

 国内の宿泊者は集中する時期が決まっているが、外国人はあまり関係ない。この「キノサキ・オンセン」人気をもり立てようと、市役所と民間が連携し、世界へのPRを始めた。目標は20年に、外国人客を今の約3倍、10万人呼ぶことだ。

 温泉街に無料の無線LAN「Wi-Fi」網を整備し、旅館予約ができる英語版のホームページも開設した。

 温泉の若手経営者たちも、NPO法人「本と温泉」をつくって、温泉街に文学の薫りを取り戻そうと乗り出した。

志賀直哉が泊まった部屋。机は当時のままで、ここで名作が生まれた=いずれも兵庫県豊岡市で

志賀直哉が泊まった部屋。机は当時のままで、ここで名作が生まれた=いずれも兵庫県豊岡市で

 湊かなえさんら人気作家に依頼して城崎をテーマに小説を書いてもらった。城崎でしか買えない「地域限定本」だ。「新しい本の売り方だと、作家の方も大歓迎でした」(大将伸介NPO理事長)という。

「外国の方からは交通に関する質問をたくさん受けます」と話すアナスタシア・ウィンダラーさん=JR城崎温泉駅前で

「外国の方からは交通に関する質問をたくさん受けます」と話すアナスタシア・ウィンダラーさん=JR城崎温泉駅前で

 英語の通じる観光案内所も登場した。JR城崎温泉駅にオープンした「SOZORO(そぞろ)」だ。地元の「全但バス」が運営し、自転車の貸し出しもしている。

 ここに勤務する米国人のアナスタシア・ウィンダラーさん(26)は、4年前にアラバマ州から来日。英語教師をしていたが、応募して案内所の正式職員となった。

 「城崎の人はとても優しい。もっともっと地元に詳しくなり、魅力を伝えたいですね」

 話を聞いていたらバスが駅前に着いた。アナスタシアさんは案内所の外に飛び出して「大阪行きです」と、巧みな日本語で呼び掛けていた。

 海が近いので、海産物も人気だ。温泉街の一角にある海鮮レストランで友人とカニを食べていた中国・上海の医師、院卓尓さん(26)は、「これから京都と大阪に行きます。まず温泉で旅の疲れを取ろうと来ました。中国には外湯を巡る温泉はありません。とてもおもしろかった」と、満足そうだった。

 文・写真 五味洋治

(2016年9月30日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
大阪、京都から特急列車に乗って2時間半程度でJR城崎温泉駅に到着する。
駅前には温泉街を巡回するバスが待っており、行き先の旅館の前で降ろしてくれる。

◆問い合わせ
城崎温泉旅館協同組合=電0796(32)4141。
「SOZORO」城崎温泉ツーリストインフォメーション=電0796(32)0013

おすすめ

兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園

兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園

★志賀直哉の部屋
志賀(1883~1971年)は温泉街にある創業300年の老舗旅館「三木屋」を定宿としており、ここで名作短編「城の崎にて」が生まれた。
2階の26号室がお気に入りで、長編小説「暗夜行路」に描かれた庭もある。
部屋は当時のまま。
見学は同館=電0796(32)2031

★城崎温泉ロープウェイ
温泉街の外れにあり、大師山の山頂まで200メートルの標高差を、約7分で上る。
頂上からは温泉街の他、近くを流れる円山川、遠く日本海も望める。
原則第2、4木曜休み。
電0796(32)2530

★城崎マリンワールド
城崎温泉からバスで5分の距離にあり、若者に人気。
規模は小さいが、イルカやトド、アザラシのライブショーが人気。
電0796(28)2300

★兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園
狩猟や農薬の影響で絶滅の危機にひんしたコウノトリの保護増殖と野生復帰を実践する施設。
間近で鳥を観察することができる。
学習施設も充実しており、親子連れでにぎわう。
原則月曜休園。
電0796(23)5666

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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