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ハバナ、トリニダー

ハバナ、トリニダー キューバ 陽気な人々歴史の陰も

コロニアル様式の建物とレトロな車が目を引く町並み=キューバ・ハバナで

コロニアル様式の建物とレトロな車が目を引く町並み=キューバ・ハバナで

 首都ハバナのホセ・マルティ国際空港に着いたのは午前0時すぎ。9月半ば、空気は夜中でも蒸し暑い。宿へ向かうタクシーの窓からスペイン植民地時代の建物と、昔の米国映画から抜け出したようなクラシックカーに目を凝らす。「時が止まったよう」と形容されるカリブの社会主義国、キューバへやって来たことを実感した。

 翌朝、ハバナをいったん離れ、サトウキビ栽培で栄えた古都トリニダーを訪ねた。オレンジの瓦屋根が印象的な町だ。「15世紀末からスペイン人がキューバに町をつくり、サトウキビ農場を開きました。先住民は労働と疫病のために全滅したそうです」。ガイドのマリアさん(58)が説明してくれた。先住民の代わりにアフリカから奴隷を連れてきて、生産した砂糖を欧州へ運ぶようになった。世界史で習った「三角貿易」の一端だ。

 トリニダーと合わせて世界遺産に登録されているロス・インヘニオス渓谷の農場跡へ、観光用の列車で向かう。もともとサトウキビを運ぶために敷かれた路線という。ギターを抱えて乗り込んできたおじさんが、陽気な歌を披露し始めた。キューバは音楽文化が盛んで、街角やレストランなど至る所で生演奏に触れる機会がある。歌声を聴きながらのどかな景色を眺めれば、かつて奴隷たちが苦しい労働を強いられた場所にいるとは信じられない。農場跡では監視に使われた高さ45メートルの塔に登って渓谷を見渡した。緑豊かな絶景も植民地主義の負の遺産かと思うと、何だか切ない。

サトウキビ栽培で栄えた古都トリニダー

サトウキビ栽培で栄えた古都トリニダー

 ハバナへ戻ってからは、文豪ヘミングウェーも定宿にしていた旧市街のホテル「アンボス・ムンドス」を拠点に町を見て回った。列柱やバルコニーが特徴的なコロニアル(植民地)様式の町並み、貿易による富をねらう「カリブの海賊」から町を守った石造りの要塞(ようさい)。派手な色と装飾を競うように走る米国車は、革命前の1940~50年代に輸入された。「キューバは大きな博物館」というマリアさんの表現通り、歴史がそのまま固まったような風景だ。南国の真っ青な空と、カラフルな建物や車の組み合わせは気持ちが浮き立つが、観光客が訪れない地域では閉まっている店も多い。スーパーマーケットでは空っぽの棚も目立ち、依然として厳しい経済状況が伝わった。

 
海辺で思い思いに過ごす人々=ハバナで

海辺で思い思いに過ごす人々=ハバナで

 しかしキューバの人々はどこまでも明るい。日本人とみれば「コンニチハ」「サヨナラ」と声を掛けられ、カメラを向けると笑顔でピースサイン。タクシーの運転手は「ハバナは最高だろう」と胸を張る。おしゃべりも大好きなようで、バルコニーから下を通る知り合いに声を掛け、大声で会話する光景は愉快だった。どう見ても勤務中の警察官や店員もおしゃべりに興じているが、まあご愛嬌(あいきょう)。夕方からは、海沿いのマレコン通りに人が集まる。防波堤に腰かけて、やっぱりおしゃべりに熱中し、釣りをしたり泳いだり。どこからともなく音楽も聞こえてくる。夕日を眺めながら、ゆったりと時が流れた。

 旅の最終日。厳重な警備の中、旧市街に日の丸を付けた車が止まった。現れたのはキューバを初訪問した安倍晋三首相。遠まきに眺めながら、米国と国交を回復したこの国が国際的に大きな注目を集めているのだと改めて感じた。「米国との関係改善には時間がかかるでしょう。でもキューバは少しずつ変わっていくかもしれません」とマリアさんは言った。高層ビルがそびえるハバナを真新しい車が走る日が、やがて来るのだろうか。人々は変わらず陽気でいてほしい。

 文・写真 川原田喜子

(2016年10月21日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
日本からの直行便はなく、カナダ、メキシコ経由が一般的。
ハバナからトリニダーへは車で5時間程度。

◆入国準備
観光目的の滞在にはツーリストカードが必要。
東京の大使館領事部で取得できる。
海外旅行保険への加入も義務付けられており、事前に英文の加入証明書を発行して持参する。
ただし、米国系保険会社は不可。

おすすめ

コングリ

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フローズンダイキリと砂糖抜きのパパ・ヘミングウェー

フローズンダイキリと砂糖抜きのパパ・ヘミングウェー

★食べ物
肉や豆を使った素朴な料理が中心。
豆を炊き込んだご飯「コングリ」は、どこか赤飯やチャーハンに似ていて日本人にも食べやすい。
庶民向けの食堂では、鶏肉や豚肉のおかずとコングリの定食が味わえる。

★飲み物
モヒート、ダイキリなど特産のラム酒を使ったカクテルは飲み口さわやかで暑いキューバにぴったり。
ヘミングウェーが通ったというハバナのバー「フロリディータ」ではフローズンダイキリと砂糖抜きのパパ・ヘミングウェーが人気だ。

★ラム酒ハバナ・クラブ博物館
ハバナ旧市街にあり、代表的ラム酒「ハバナ・クラブ」の歴史と製造過程を古い道具や模型など充実した展示で紹介。
ラム酒の試飲と購入もできる。

★映画ポスター
キューバは独特のデザインの映画ポスターで有名。
1枚ずつシルクスクリーン印刷で作られ、お土産として買うこともできる。
ハバナ旧市街のアルマス広場には毎日、ポスターや古本を扱う露店が並ぶ。

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※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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