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一乗谷

一乗谷 福井市 朝倉氏の栄華を「復原」

まっすぐな道だが場所によっては曲がって見える復原町並の道路。戦国時代の衣装を着たスタッフが出迎えてくれる

まっすぐな道だが場所によっては曲がって見える復原町並の道路。戦国時代の衣装を着たスタッフが出迎えてくれる

 16世紀の戦国時代、日本最大の都市だった京都、南蛮貿易で栄えた堺と並び称される「城下町」が福井にあった。

 市街地から東南に10キロほど行くと、険しい山に囲まれた一乗谷(朝倉氏遺跡)に着く。うっそうと茂る常緑樹や竹林が川沿いの狭い平地に迫る。マイナスイオンを含んだ風が吹き渡り、山あいの静寂を甲高いクマタカの鳴き声が破る。発掘された石垣や土塁、あちこちに掘られた井戸の跡がなければ、里山の風景そのものだ。

 1573年に起きた戦乱で、一乗谷を拠点に100年にわたって越前(福井)を支配してきた朝倉氏の栄華はついえた。織田信長の命で放たれた火は三日三晩燃え続け、武家屋敷や数多くの寺院、町家は全て焼失。1万人以上の人々が暮らした城下町は数メートルの灰の中に埋まったまま400年を超える時が過ぎた。

 「今からは想像できないが、一乗谷は別格の城下町だった」。朝倉氏遺跡保存協会長の岸田清さん(69)が熱っぽく語ってくれた。

 一乗谷の遺跡は1967年から発掘調査が始まり、今も続く。塀に囲まれた武家屋敷や庶民の町家は「復原」されて400数10年前の町並みを思い起こさせる。岸田さんは「復元ではなく東京駅と同じく復原です」と強調する。つまり、大正時代に開業した鉄骨れんが造りの東京駅が2012年に復原される際、鉄骨やれんが、銅板の一部で当時の材料を再活用したように、一乗谷の遺跡も発掘された塀の石垣、建物の礎石をそのまま使って往時の町並みを再現したというわけだ。

 訪れた人が想像力をかき立てるための装置もある。一乗谷の管理棟で貸し出しを始めたタブレット端末。復原された武家屋敷などのポイントで端末を使うと、戦国時代の家並みがバーチャル映像として再現される。復原された町並みと映像を見ればより理解が深まる仕掛けだ。

 「世界中を探しても、こんな道はどこにもない」。岸田さんが復原された町を貫く幹線道路に立ち、一乗谷でしか見ることができない光景を教えてくれた。一見すると何の変哲もない約200メートルの道。一乗谷を攻める敵方が侵入して前方を見ると、道は曲がっているような錯覚に陥って見渡せない。ところが、守る側の朝倉氏側から見れば、同じ200メートルの道は直線道路のように視界が開け、敵の動きが手に取るように分かる。まか不思議な道だ。

遺跡の復原図を手に観光客に話しかける岸田清さん

遺跡の復原図を手に観光客に話しかける岸田清さん

 難しい言葉で表現すると「遠見遮断(とおみしゃだん)」方式という。「こちらから見れば突き当たりまで見通せるのに、向こう側からだと曲がって見える。ただ、悲しいかな言葉の説明だけでは分かってもらえない。この場所に実際に立ってもらわないとね」(岸田さん)と、一乗谷を訪ねる魅力を力説する。

 この「錯覚」をまねく秘密は復原された石垣の凸凹にある。当時の石垣をそのまま利用して高さ2メートルほどの塀を造って初めて明らかになった景色。焼き打ちに遭った屋敷の石垣は、黒ずんだままだ。

一乗谷(朝倉氏遺跡)のシンボル的な建築物といわれる唐門=いずれも福井市で

一乗谷(朝倉氏遺跡)のシンボル的な建築物といわれる唐門=いずれも福井市で

 復原された町並みを見終え、300メートルほど歩くと、一乗谷のシンボルともいえる唐門(からもん)に着く。朝倉氏5代、義景の菩提寺(ぼだいじ)の山門として江戸時代中期に建てられた。栄華を誇った一乗谷の歴史を静かに語りかけてくれるような風情だ。

 文・写真 白石徹

(2016年11月11日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
JR北陸線の福井駅は東京から北陸新幹線の金沢駅で乗り換えて特急を使い計3時間30分、名古屋からは東海道新幹線の米原駅で特急に乗り換え計1時間40分。
福井駅からJR越美北線の一乗谷駅に15分、バスは福井駅西口交通広場から25分ほど。

◆問い合わせ
福井市おもてなし観光推進課=電0776(20)5346、朝倉氏遺跡保存協会=電0776(41)2330 

おすすめ

一の丸コース(柿なますと秋サケ・ザクロのジュレなど)

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東郷地区

東郷地区

★一乗谷レストラント
遺跡の入り口にある。
地元料亭が提供する創作和食は福井県産の魚介類や野菜、コメなどを利用し、器や小物も県内産を使用。
コース料理が3種類あり、一の丸コース(3500円)は柿なますと秋サケ・ザクロのジュレなど。
水曜日休み。
電0776(37)3712

★東郷地区
一乗谷駅から1駅の越前東郷駅周辺。
朝倉氏の出城があった城下町として栄え、コメどころとしても有名で、日本酒の蔵元や寺院が点在する。
荘園時代から用水として利用されてきた堂田川が流れ、放流されたニシキゴイや川魚が泳ぐ。
カッパをまつっているとの言い伝えもある地蔵院の近くにはカッパのブロンズ像があり、季節によって衣装を替える。

★福福館
今春オープンした福井駅前の再開発ビル「ハピリン」内に入る観光物産館。
地元の特産品や工芸品の品ぞろえが豊富で、郷土料理や地酒を味わえるコーナーも。
ハピリン内にはショッピングモールのほか、自然史博物館の分館、ドームシアターも設置されている。

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