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土佐の日曜市

土佐の日曜市 高知市 長い歴史 変わらぬ活気

地元の人や県外、海外の観光客でにぎわう街路市

地元の人や県外、海外の観光客でにぎわう街路市

 ふと、アラブの国々で出合った風景を思い出した。

 さまざまな国のさまざまなスーク(市場)。いろんな品物と行き交う人たちの活気。いつからここで店を?普段はどこに?何代続いているの?そんな問いが頭に浮かぶ風景が「土佐の高知」にもあった。

 高知城(高知市)に続く目抜き通りの追手筋で1.3キロにわたり毎週立つ日曜市。何世代にもわたって支えてきた人たちが、竹ざおで屋根を連ねている。

 「いつからって、おばあちゃんの代からや。“空襲でタイヤのゴムが焼けてもうて鉄の輪っぱでリヤカー押すんが大変やった”て話していたがやき、戦前からやな」

 
かつお節など乾物を出店に並べる近森道夫さん

かつお節など乾物を出店に並べる近森道夫さん

 土佐の名物、かつお節を並べる「近森海産物店」のあるじ、近森道夫さん(52)。一緒に手伝う姉の新開郁代さん(58)は「私が20代で親を手伝いよったころは、もっとすごかった。朝4時から準備して、昼すぎまでご飯も食べれんかったから」。バブル後は客足も落ち着いているが、民主党政権時代に高速道路が1000円になった時期は「県外からのお客さんですごかった。このままいったら蔵が建つねえ、と話しよったほど。終わった途端に来んようになったけどな」と振り返る。

 日曜市の歴史は古い。高知市のホームページによると、その発祥は300年前。元禄3(1690)年に制定した藩法「元禄大定目」に記述が見られるという。それ以前から、人がモノを持ち寄って売り買いする市のような場が形成されていたのは間違いないところだろう。貨幣経済がこの国に広がり始めたころには、人が集まり始めたのではないか。専業農家の鎌倉洋子さん(62)に話を聞きながら、想像をたくましくしてしまった。

 「私ら農家にとっては、ここに来れば、手っ取り早く、現金が入るからね。それに友達やなじみ客とおしゃべりする楽しさもあるしさ」

 この日の売り物は「秋タケノコ」。高知名産の四方竹のことだ。「家で湯がいた後、傷みやすいから、氷で冷やしてもってくるんよ。扱いが難しい、デリケートな“娘さん”のような感じね」。神戸からの常連客が、そのまま氷詰めの箱で買っていった。

 
旬の地元食材「四方竹」を販売する鎌倉洋子さん(右)

旬の地元食材「四方竹」を販売する鎌倉洋子さん(右)

 「年に1、2度顔合わす程度の人も多いけど、おなじみさん。ありがたいね」

 向こう三軒両隣は、週に一度のご近所付き合い。私と話しているところへ、三軒隣の吉松典子さん(73)が「はい、持って来たよ」。売り物をそれぞれ交換することも。1週間分の世間話がひとしきり盛り上がる。

 吉松さんも農家。「生活は年金で。ここは、孫にやるお小遣い程度のこと。1週間分の食料をここで買うから、軽トラで送迎してくれる夫から『行きより帰りの方が荷物が増えちょるな』って」とからから笑う。

 約420軒もの出店があるが、この20年近くで200軒も減ったのは、農家の減少が影響している。出店全体の4分の3が農産物で、他には刃物、衣類、土産物、菓子、焼き鳥やお好み焼きなどだ。

吉本忠之さんは名木を自ら打った能面を並べていた=いずれも高知市で

吉本忠之さんは名木を自ら打った能面を並べていた=いずれも高知市で

 お城に向かって歩いて行くと、木彫りの能面を並べたお店があった。「能面は彫る、とは言わず、打つと言うんや」と吉本忠之さん(83)。建具店をたたんだ後、20代からの趣味を生かして並べるようになった。

 「たいした金にはならんが、遊びにしては上等やな。月に1、2面で、これまでに200面」と話した後、隣の奥さんに聞こえないよう耳打ちしてきた。「実は、あと200面分の銘木を買ってある。一体、わし何年生きるつもりやろうな。はっはっは」。余生としてうらやましい限りだ。

 夜明け前の5時半から並んでいた店も、夕暮れ時の5時には店じまい。そして、月曜の朝・・・。日曜市で封鎖されていた道路には通勤の車や自転車が行き交い、あのにぎわいが夢だったかのように、普段の風景に戻っていた。

 文・写真 秦融

(2016年11月18日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
高知空港へは、羽田空港から約1時間半、愛知県営名古屋空港から約1時間。鉄道では、岡山駅から高知駅までJR特急で約2時間半。

おすすめ

ひろめ市場

ひろめ市場

★街路市
日曜市の他に火曜市(上町)、水曜市(百石町)、木曜市(本町)、金曜市(愛宕町)が開かれる。
高知市産業政策課=電088(823)9456

★ひろめ市場
高知の食が一堂に集まる屋内の屋台村で、市中心街の同市帯屋町にあり地元の人や観光客で終日にぎわう。
名前は、土佐藩家老・深尾弘人蕃顕(ひろめしげあき)の屋敷跡付近という場所にちなむ。
名物カツオのたたきは、豪快にわらを燃やしてあぶる伝統的な料理の実演もある。
営業時間は午前8時(日曜は7時)~午後11時。
同市場=電088(822)5287

★高知城
関ケ原の戦いの功績で土佐一国を拝領した山内一豊が1601年に築城。
3層6階の天守閣や追手門などの建物は国の重要文化財で、現存する木造12古天守の一つ。
城内に内助の功で知られる千代夫人の像がある。
高知城管理事務所=電088(824)5701

★龍馬の生まれたまち記念館
上町2にあり、坂本龍馬に由来する歴史の流れをわかりやすく展示してある。
同館=電088(820)1115

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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