【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. 阿蘇と雲仙
阿蘇と雲仙

阿蘇と雲仙 熊本、長崎県 門前町に復興の足音

熊本地震でぺちゃんこにつぶれた阿蘇神社の楼門(復旧工事の前)=熊本県阿蘇市で

熊本地震でぺちゃんこにつぶれた阿蘇神社の楼門(復旧工事の前)=熊本県阿蘇市で

 「熊本へ旅行に来ることもボランティアになります」。熊本地震から半年が過ぎた10月中旬、蒲島郁夫熊本県知事の復興支援の呼び掛けに引かれ、熊本に向かった。阿蘇山の噴火からまだ間もなかった。まずは、地震で倒壊した同県阿蘇市の阿蘇神社を訪ねた。

 同神社は、阿蘇山火口を神様としてまつる火山信仰の神社。日本三大楼門の1つで高さ18メートルを誇る楼門や神殿など6棟が国重要文化財(重文)に指定されているが、4月の地震で大きな被害を受けた。

 訪れた時の神社は、威風堂々と周囲を圧倒していた巨大な楼門もぺちゃんこにつぶれ、ブルーシートが掛けられていた。境内の拝殿なども同様な姿で、地震の破壊力を思い知らされた。

 池浦秀隆権禰宜(ごんねぎ)は「11月から復旧工事が始まる。重文部分は国の補助事業だが、それ以外は寄付など自前で賄い、後世に恥じない完全な修復には約10年かかります」と話す。それでも来訪者は後を絶たず、この日も倒壊した拝殿そばに設置された仮参拝所で手を合わせる参拝者らが相次いでいた。

 参拝の続く理由を、案内役で阿蘇市観光協会副会長の菊池秀一さんは「あの地震でも神社周辺の家々はそれほど被害に遭わず、神社が身代わりになって守ってくれたと評判になりました。新たな神社の伝説が生まれたのです」と教えてくれた。

阿蘇神社の門前町商店街に30カ所以上もある阿蘇の湧き水の一つ「金脈の泉」=熊本県阿蘇市で

阿蘇神社の門前町商店街に30カ所以上もある阿蘇の湧き水の一つ「金脈の泉」=熊本県阿蘇市で

 神社には全国でも珍しい正面を横切る横参道があり、門前町商店街の「仲町通り」となっている。昔懐かしいレトロな趣の土産店や食事どころ、カフェ、菓子工房などが並ぶ商店街には、「水基」と呼ばれる阿蘇の湧き水が30数カ所あり、無料で提供されている。それぞれユニークな名が付けられており、地元銀行裏にある「金脈の泉」を手おけでくみ、口に含むとその新鮮な冷たさがのどに染みた。

 

 阿蘇地域は、世界最大級の規模を誇る阿蘇山のカルデラ内にある。周りを総延長128キロの外輪山が囲む。その中でも絶景スポットとして知られる大観峰にも立ち寄り、カルデラ内部の中央火口丘として連なる阿蘇五岳(ごがく)を眺めた。

大観峠付近から眺めると涅槃像に似ているといわれる阿蘇五岳の絶景=熊本県阿蘇市で

大観峠付近から眺めると涅槃像に似ているといわれる阿蘇五岳の絶景=熊本県阿蘇市で

 お釈迦(しゃか)様が横たわっている姿(涅槃(ねはん)像)に似ているといわれる阿蘇五岳は壮大で幻想的でもあり、大自然が創り出した不可思議な美しさに魅せられた。五岳の中で10月8日に噴火した中岳から噴煙は見られなかった。

妙見岳山頂付近から眺めた雲仙普賢岳(手前)と平成新山=長崎県雲仙市で

妙見岳山頂付近から眺めた雲仙普賢岳(手前)と平成新山=長崎県雲仙市で

 この日は熊本港から、長崎県島原半島の島原港までを約30分で結ぶ高速カーフェリーで有明海を横断し、同県雲仙市の雲仙温泉に宿泊した。

 翌日は快晴の下、雲仙仁田峠に向かった。峠の手前の仁田峠第2展望所からは、1990年代に活発化した雲仙普賢岳の噴火による溶岩ドームで誕生した平成新山が眼前に迫った。同県島原市内に続く裾野の山肌は火砕流の痕跡がむき出しとなっており、取材の報道陣や消防団員ら43人の命を奪った火山活動の激しさをあらためて感じた。

 島原半島地域では、こうした自然の脅威と災害の教訓を伝える建造物などの保存展示や施設整備をしている。その拠点である雲仙岳災害記念館の総務部長、石川博和さんは「災害の爪痕を見てもらうことが観光資源になり、復興にもつながった。熊本にも頑張ってもらいたい」とエールを送る。

 仁田峠からは妙見岳に登るロープウエーに乗車、有明海や雲仙温泉を眼下に空中散歩を楽しんだ。妙見岳の展望所では、半島と湾が入り組んだ長崎県内や天草諸島が一面に広がる一大パノラマを満喫した。有明海を挟んで遠く阿蘇山や熊本市内が一望できたことも、印象に深く残った。

 文・写真 松井稔

(2016年11月25日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
熊本空港から阿蘇神社へはJR豊肥線が寸断されているため車が便利。
車も国道57号が不通なのでミルクロードを回って約2時間半。
熊本港-島原港のカーフェリー予約は熊本フェリー予約センター=電0957(63)8008=へ。

◆問い合わせ
阿蘇市観光協会=電0967(34)1600。
雲仙温泉観光協会=電0957(73)3434。
JTB旅の予約センター=電0570(040)489

おすすめ

阿蘇の大草原で育った褐毛(あかげ)和種の肉

阿蘇の大草原で育った褐毛(あかげ)和種の肉

★あか牛
阿蘇の食を代表するブランド牛。
阿蘇の大草原で育った褐毛(あかげ)和種の肉で、無駄な脂肪が少なく和牛本来のうま味があり、ヘルシーと評判。
ステーキやハンバーグ、カレー、焼き肉など多種多様の店がある。

★熊本伝統工芸
「肥後象嵌(ぞうがん)体験」 細川家の保護を受け、刀のつば等に使われた肥後象嵌。
熊本市の「肥後象嵌 光助」で、熊本城やくまモンのストラップなどの製作を体験する。
料金3500円。
前日までに予約が必要。
電096(324)4488

★雲仙地獄のナイトツアー
白い噴煙と硫黄のにおいが立ち込める温泉噴出口が約30カ所点在する雲仙温泉の観光名所を夜の暗闇の中、懐中電灯を片手にガイドの案内で巡る。
昼間と違って幻想的でスリル満点。
午後8時15分からと9時10分から約1時間、1人500円。
事前予約が必要。
雲仙ガイド「さるふぁ」=電0957(73)2626

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

旅コラム
国内
海外