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南大東島

南大東島 沖縄県 日常忘れる絶海の島

毎日、朝晩の2回大気の状態を観測するため大空に放たれる気象観測器=南大東島地方気象台で

毎日、朝晩の2回大気の状態を観測するため大空に放たれる気象観測器=南大東島地方気象台で

 「非常に強い台風○○号は南大東島の北西約310キロをゆっくりした速さで北上中」

 台風シーズンになると、テレビの天気情報で名前が挙がる南大東島。台風上陸が相次いだ今年は、何度も耳にしたフレーズだ。南大東島? どこにあるのだろうか? 疑問の答えを求め、絶海の孤島に向かった。

 南大東島は沖縄本島から東に約360キロ離れた太平洋上にあった。面積は30.57平方キロで人口は約1300人。一番高いところで標高75.8メートル。沖縄らしいエメラルドグリーンの海や白い砂浜を求めてはいけません。サンゴ礁が隆起して誕生した島なので、海岸線は断崖絶壁。毒ヘビのハブがいないのはいいことだ。

 那覇から小型プロペラ機で南大東空港に降り立つと、射るような強い日差しに出迎えられた。気温は29度、タンスの奥から引っ張り出した半袖シャツで快適だ。南大東村観光協会の桃原祥子事務局長(37)に「一番の観光スポットは星野洞、保存状態が良く、東洋一美しいと評する人もいますよ」と、見どころを教えてもらう。

 島は石灰岩でできており鍾乳洞が100以上あるといわれている。そのなかで最大規模を誇るのが星野洞。

天井からつらら石がぶら下がり洞床には無数の石筍(せきじゅん)や石柱が並ぶヨーロッパの宮殿のような星野洞

天井からつらら石がぶら下がり洞床には無数の石筍(せきじゅん)や石柱が並ぶヨーロッパの宮殿のような星野洞

 受付で強力な懐中電灯と、案内が聞けるタブレットを受け取る。風化を防止するための重い扉を開けると、地上の畑からは想像できない神秘的な鍾乳石が目の前に飛び込んできた。長さ375メートル、高低差約40メートル、ライトアップされた約1000坪の絶景空間が広がる。

 歩道は整備されているが、暗くぬれている場所もあるので慎重に。鍾乳洞の中は気温18度で湿度100%、最初は涼しいと思っていたが、階段を上っていると汗が噴き出した。聞こえてくるのは滴の落ちる音とカメラのシャッター音だけ。ひっそり静かな洞窟タイムのなかで騒々しい日常生活が抜けていく。

 岩陰などに、泡盛の瓶を発見。聞けば、これは中学の卒業生が置いたのだとか。島には高校がなく、中学を卒業すると多くの人が島外に旅立つ。洞内の泡盛は、成人式で帰ってきた時に家族らと飲もうと納めるのだそうだ。

 「島民100人ぐらいから激励の言葉をいただきました」。南大東村役場に勤める田仲康治さん(26)は自分の成人式を振り返る。鍾乳洞で熟成させた泡盛で、父親と初めての酒を酌み交わそうと楽しみにしていたが、お祝いに次々と訪れる島民に振る舞ったところ、瓶は瞬く間に空になってしまったという。

世界でも珍しいクレーンを使った乗下船。ほとんど揺れることはなく、しばしの空中散歩が楽しめる=いずれも沖縄県南大東島で

世界でも珍しいクレーンを使った乗下船。ほとんど揺れることはなく、しばしの空中散歩が楽しめる=いずれも沖縄県南大東島で

 次は南大東島の名物「クレーン上陸」の見学で西港へ。島の港は台風などによる高波を避けるため海面から高く築かれている。さらに、強いうねりでの衝突を避けるため船は岸壁から10メートルほど離れて停泊。人も荷物も、クレーンでつり上げて乗下船している。これが目的で来島する旅の上級者もいる。私も体験してみた。

 鉄格子のおりのようなカゴに入り、出発を待つ。クレーンの機械音が響くとフワリ、ゆっくりと上空へ。海面ははるか下に見え、紺碧(こんぺき)の海に飛び出す瞬間はスリル満点。20秒ほどで着陸。気分爽快な浮遊感に、くせになる人の気持ちが分かった。

 無人島だった島は八丈島の人たちが開拓したため、沖縄に見られるようなサンゴの石垣や、シーサーの載った赤瓦屋根などはほとんどない。その後には沖縄から移住してきた島民も多く、食文化や話し言葉に影響を及ぼしている。ウチナー(沖縄本島)と関東文化が融合した異国情緒あふれる島だった。

 文・写真 嶋邦夫

(2016年12月2日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
空路は那覇空港から南大東空港まで約1時間(1日1、2便)。
フェリーは那覇・泊港から13時間(週1、2便)。

◆問い合わせ
大東海運=電098(861)0515
南大東村役場産業課=電09802(2)2037

おすすめ

大東そば

大東そば
ふるさと文化センター

ふるさと文化センター

★星野洞
利用は予約制で曜日によって予約先が異なるのでご注意を。
平日は南大東村役場産業課、土日祝日は大東観光商事=電09802(2)4333。
見学は午前9時~午後5時。
大人800円、小人350円(5歳以下は無料)。

★大東そば
麺は太めでモチモチしてスープはあっさり。
冨士食堂ではサワラの漬けで握られた大東ずしとセットで味わえる(1000円)。
電09802(2)2230

★ふるさと文化センター
島の開拓の歴史がひと目でわかる史料館。
当時の農耕具や生活雑貨、自然標本などが展示されている。
サトウキビ運搬用に使用されていた通称シュガートレインも展示。
月曜休館。
入館料は大人200円、小中高生100円。

★日の丸山展望台
島に到着したら最初に訪れるのがお勧め。
島の全体を見渡せる数少ないスポット。
天気の良い日には8キロ北に北大東島も見ることができる。

★南大東島地方気象台
日本の台風観測の最前線で1階に気象関係の見学ホールがある。
入場無料。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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