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順天市

順天市 韓国 ドラマ撮影人気の聖地

1960~80年代の韓国の町並みが再現されている順天ドラマ撮影場。ソウルの集落は斜面に再現されている=いずれも韓国・順天市で

1960~80年代の韓国の町並みが再現されている順天ドラマ撮影場。ソウルの集落は斜面に再現されている

 入場門をくぐると、郷愁を感じさせる1980年代の韓国の町並みが広がる。右手に進むと60年代の集落。さびたトタン屋根や薄い板を打ち付けた壁の建物が続く。貧しかった時代の町の風景だ。突然、セーラー服を着た女の子たちが現れ、デジタルカメラやスマートフォンで記念撮影を始めた。

 韓国南部の町、順天(スンチョン)市を訪ねた。まずは、市東部の軍施設跡地に2006年に整備された順天ドラマ撮影場。約4万平方メートルの敷地に1960~80年代の町並みが再現され、一般公開もしている。「愛と野望」「ジャイアント」など、これまでに45本の映画やテレビドラマが撮影された。

 80年代のエリアには映画館やダンスホールなどがある。ホールをのぞくと中高年の男女が踊っていた。ここでも学生服姿の人が。撮影場では昨年3月から入場者に制服の貸し出しを始め、人気を博している。利用者の多くは10代や20代の若者たち。少数派だが両親、祖父母の世代も制服姿で青春時代を懐かしんでいる。

 ソウルから来たホン・キチョルさん(63)と妻のナム・ヨンウさん(61)が、教室を再現した建物内で、制服を着て席に座っていた。2人は60年代後半から70年代前半に高校生活を送ったという。

ドラマ撮影場にある教室で、制服姿になって昔を懐かしむホンさん(右)、ナムさん夫妻

ドラマ撮影場にある教室で、制服姿になって昔を懐かしむホンさん(右)、ナムさん夫妻

 ホンさんは「2人は小さいころから近所に住んでいたが、高校生の時、恋に落ちた。妻の方が私に夢中だった」と話す。一方ナムさんは「妹のようにしていただけ。当時はそんなに熱く恋していなかった」と笑い、ホンさんの顔をのぞき込んだ。

 敷地内の斜面では、70年代にソウル市にあった集落が、そのまま再現されている。これらの町並みは、違った作品の撮影が行われるたびに、少しずつ造り替えられる。そのため、訪れるたびに町の表情が変化する楽しみがある。

アシ畑内に整備された遊歩道を歩く観光客

アシ畑内に整備された遊歩道を歩く観光客

 この後、市南部の東シナ海に面した順天湾自然生態公園を訪れた。ここは、2300万平方メートルの湿地が広がり、うち約1割がアシ畑だ。水鳥の生息に重要な湿地の保全を目的とするラムサール条約に2006年に登録された。

 アシ畑の中に遊歩道が整備されている。人の背丈ほどもあるアシの間を抜けてくる風に体が包まれて心地よい。遊歩道から下をのぞくと、泥の上で何かがうごめいている。目を凝らすとムツゴロウやカニが至る所にいた。公園の周辺の飲食店では、滋養強壮に効果があるというムツゴロウ鍋を食べることができる。

 野鳥も豊富だ。順天湾解説員のキム・イッキさん(71)によると、韓国で見られる約450種のうち、約250種が観察できる。渡り鳥も多く、ナベヅルの越冬地としても知られる。昨年10月~今年3月には1430羽の飛来が確認されている。

 湿原の入り口から40分ほど歩くと、龍山という小さな山の上の展望台に着く。ここから、湿地帯を一望できる。夕方になると、アシ畑の向こうに夕日が沈む。晴れた日には、風にそよぐアシの穂が夕日を背に輝く光景を見ることができる。

展望台から見下ろす湿地帯=いずれも韓国・順天市で

展望台から見下ろす湿地帯=いずれも韓国・順天市で

 ここが観光地として脚光を浴びたのはラムサール条約に登録されてから。順天ドラマ撮影場と同じく観光スポットとしての歴史は新しい。まだ、日本人の少ない地で、ソウルや釜山のような定番ではない韓国を満喫できる。

 文・写真 飯田孝幸

(2016年12月9日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
東京から釜山の金海国際空港まで直行便で2時間前後、名古屋からは1時間半前後。
釜山から順天へは鉄道で約3時間。
バスなら高速道路を経由して2時間半前後。

◆問い合わせ
韓国観光公社東京支社=電03(5369)1755。
韓国観光公社名古屋支社=電052(223)3211

おすすめ

カンジャンケジャン

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エキスポ海洋公園のスカイタワー

エキスポ海洋公園のスカイタワー

★カンジャンケジャン
ワタリガニのしょうゆ漬け。
順天では多くの店で食べられる。
脚の部分は吸うように食べる。
カニみそがある甲羅部分にご飯を載せてかきまぜて食べる。
カニの風味としょうゆだれ、ご飯が絶妙に絡み合う。
地元では「ご飯泥棒」といわれるほど、ご飯が進む料理。

★エキスポ海洋公園
順天市の隣、麗水(ヨス)市で2012年に開催された海洋万博(EXPO)跡地にできた公園。園内で最も高い建物のスカイタワー(高さ73メートル)はセメント貯蔵塔を再利用したもの。
最上階に展望台があり周囲を一望できる。
タワーの外壁には巨大なパイプオルガンが設置されていて、音は6キロ先まで聞こえる。

★楽安邑城(ナガンウプソン)
わらぶき屋根にかまど式の台所の民家など朝鮮王朝時代(1392~1910年)の町並みがそのまま残る。
それぞれの建物では今も住民が生活している。
村全体が民俗博物館のよう。
民泊も可能。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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