【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. 瀬戸内沿岸 柳井、下松市
瀬戸内沿岸 柳井、下松市

瀬戸内沿岸 柳井、下松市 山口県 歴史薫る白壁の町並み

白壁の古い町並みの軒先には金魚ちょうちんがつるされている

白壁の古い町並みの軒先には金魚ちょうちんがつるされている

 寒い冬だけに瀬戸内の穏やかな陽光を期待して出掛けた。山口県の岩国錦帯橋空港を出て、車で南西へ。ところが、白壁の町並みで知られる同県柳井市の古市金屋地区に入るころには冷たい雨となった。

 室町時代の町割りが残っているといわれる国の重要伝統的建造物群保存地区で、漆喰(しっくい)塗りの白壁の落ち着いたたたずまい。柳井津として瀬戸内の重要な港町となり、藩政時代には岩国藩のお納戸(なんど)と呼ばれたという。

 軒先に赤と白の金魚ちょうちんがずらりとつるしてある。はて、青森県で見たことのある金魚ねぶたでは、と考えていると、「150年前の幕末のころ、柳井の商人が青森のねぶたをヒントに考案した」と、案内してくれた市商工観光課の高杉政章さん(33)が説明した。子どものために工夫されたといわれるだけに、顔かたちも愛らしい。山口県だからか、ちょっとフグにも似ている。今ではすっかり、柳井市名物の民芸品。市のシンボルともなり、高杉さんの名刺にも金魚ちょうちんがデザインされていた。

 通りには豪商だった、国の重要文化財指定の国森家住宅などが並び、往時の繁栄ぶりをうかがわせる。少し進むと、白壁土蔵造りの醬油(しょうゆ)蔵を活用した市の観光施設「やない西蔵」がある。金魚ちょうちん作りや、伝統の木綿織物の柳井縞(じま)の機織りが体験できる。

(左)三十石おけが並ぶ醬油蔵で甘露醬油について話す桐山尚久さん(右)やない西蔵では手軽に金魚ちょうちん作りが楽しめる=いずれも山口県柳井市で

(左)三十石おけが並ぶ醬油蔵で甘露醬油について話す桐山尚久さん(右)やない西蔵では手軽に金魚ちょうちん作りが楽しめる=いずれも山口県柳井市で

 金魚ちょうちん作りは、あらかじめ、ろうをほどこした胴が用意されている。目を貼り、色を塗り、尾やひれをつけて30分ほどで出来上がった。「お急ぎコースですから」と中村勝治館長が笑いながら言った。機織り体験では、「縦糸と横糸を交互に入れ替え、飽きずに続けることです」と教える女性スタッフの声が聞こえた。

 向かいの1830年創業という佐川醬油店(甘露(かんろ)醬油資料館)へ。天井の高い蔵に入ると、醬油の匂いがした。奥には大きなおけが並んでいる。三十石(約5400リットル)おけという。一升瓶で3000本が入る。

 「甘露醬油」は柳井の名産として名高い。手間暇をかけた二度仕込みの醬油。1780年代に考案され、時の藩主に献上したところ、「甘露甘露」と称賛されたのが由来といわれ、明治時代の鉄道唱歌にも歌われた。社長の桐山尚久さん(56)は「大切なもろみの熟成などは職人の手作業で行っている。7軒あった醬油づくりの店も2軒だけになったが、伝統の味を守っていきたい」と話す。

天気がよければ、夕日岬から、はなぐり岩を抜ける夕日の影を入れて撮ることができる=山口県下松市で(広中作次さん撮影)

天気がよければ、夕日岬から、はなぐり岩を抜ける夕日の影を入れて撮ることができる=山口県下松市で(広中作次さん撮影)

 足を延ばして西の同県下松(くだまつ)市へ。笠戸大橋を笠戸島へ渡る。あいにくの雨だが、笠戸湾を望む夕日岬で、夕日の写真を撮り続けている市老人福祉会館館長、広中作次さん(68)に話を聞いた。絶景の1つは、目の前の通称はなぐり岩の穴を抜ける夕日の影を入れて撮影することという。「穴は戦時中、旧陸軍が舟艇を隠すために掘り広げたもの」と広中さんが言った。

 戦争の遺跡はまだある。左手の浜の一角に、戦争末期に造られたコンクリート製の油槽船の残骸が置かれている。鋼材不足のためだが、敵に見つからないように海中に沈めて運ぶ狙いもあったという。さらに「戦艦大和は向かいの島の裏側に停泊していた」と聞くと、穏やかな海が少し違って見えた。

 笠戸島では、1983年開設の市栽培漁業センターでヒラメやオニオコゼ、トラフグなどの養殖に取り組んでいる。中でもヒラメは「笠戸ひらめ」としてブランド化して島の名産に。改築し、昨年11月にオープンしたばかりの「国民宿舎 大城(おおじょう)」のレストランで、そのヒラメ料理を食べた。刺し身に甘い味わいがあった。いつのまにか雨が上がり、窓の外には笠戸湾の夜景が広がっていた。

 文・写真 朽木直文

(2017年1月27日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
柳井市へは、空路利用の場合、岩国錦帯橋空港で降り、バスで岩国駅まで約12分。
JR山陽線に乗り換え、柳井駅まで約35分。
山陽新幹線利用の場合は広島駅で乗り換え、山陽線で約1時間25分。

◆問い合わせ
柳井市観光協会=電0820(23)3655、下松市産業観光課=電0833(45)1841

おすすめ

山下工業所が打ち出し板金技術で製作した、金属製のチェロなど

山下工業所が打ち出し板金技術で製作した、金属製のチェロなど

★やない西蔵
柳井市柳井。午前9時~午後5時。入館無料。
製作体験は金魚ちょうちん900円、
柳井縞(コースター製作。午後から)300円など。
いずれも約30分。
多人数の場合は要予約。
原則火曜休み。
電0820(23)2490

★国民宿舎 大城
下松市笠戸島。
笠戸湾を見渡せる露天風呂があり、37の部屋がある。
同市には新幹線の車両製造工場があり、
ロビーに、新幹線の顔を製造している
同市の山下工業所が打ち出し板金技術で製作した、
金属製のチェロなどの楽器が飾られている。
電0833(52)0138

★周南工場夜景
山口県周南市の沿岸部。
全国有数のコンビナート群の夜景を楽しむ。
JR徳山駅から徒歩で晴海親水公園(日本夜景遺産に認定)などの
ビュースポットへ行ける。
工場夜景鑑賞クルーズなども。
2014年には第5回全国工場夜景サミットを開催。
市観光交流課=電0834(22)8372

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

旅コラム
国内
海外