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「3時代」が一つに調和

「3時代」が一つに調和 京都市 旧三井家下鴨別邸

広い庭に面して立つ主屋。3階に望楼がそびえ立つ

広い庭に面して立つ主屋。3階に望楼がそびえ立つ

 京都の街を北に抜け、出町柳まで来ると辺りは静かになる。京都三大祭りの1つ「葵祭(あおいまつり)」で知られる世界遺産・下鴨神社も近い。この神社は、東京ドームの3倍という広い原生林「糺(ただす)の森」があることでも知られている。その森に向かって歩いていくと、木々に囲まれたりっぱな門構えの屋敷が見えてくる。豪商・三井家の旧下鴨別邸(京都市左京区下鴨宮河町)だ。修復工事を終え、昨年10月から一般公開されている。場所は糺の森の南端、ちょうど高野川と鴨川がY字に合流する地点の北側辺りになる。

 門を入ると、広い屋敷はとても静かだ。時折、鳥の声も聞こえてくる。木造の建物は、ひょうたん池のある広い庭に面して縁側があり、やわらかな日差しがあたっている。庭の眺めが良さそうだ。そびえ立つような3階の望楼の存在が、豪商のぜいたくな屋敷を感じさせるが、建物は全体としてとても簡素なつくり。華美な印象はない。これが京都らしさなのだろうか。

 約5700平方メートルある敷地に、木造3階建ての主屋、玄関棟、茶室、煉瓦(れんが)塀などがある。かつて三井家の祖先を祭った祖霊社がこの地にあり、別邸はその参拝の際の休憩所として1925(大正14)年に整備されたそうだ。

 「主屋は、もとは三井家の木屋町別邸として明治時代につくられたものです。大正14年にここに移築し玄関棟はその際新築されました。茶室は江戸時代からここにあったもので、江戸、明治、大正の建築物が1カ所に現存するのはとても貴重です」。京都市観光協会の天鷲(あまわし)和彦さん(50)が説明してくれる。

 建物は戦後、三井家から国に譲渡され、しばらく隣の京都家庭裁判所の所長官舎として使われていた。国の施設整理で一時、競売にかけられそうになったが、京都弁護士会などから保存要望が出され、修復して京都市が一般公開することになったという。

 玄関棟を入ると、NHKの朝のドラマ「あさが来た」のヒロインのモデルとなった三井家生まれの明治の女性実業家・広岡浅子が、京都の実家に出した書状(複製)が展示されている。どんなことを書いているのか。ちょっと興味をそそられる。

 手紙は「文にして一寸 ねかひ上まいらせ候(手紙でちょっとお願いいたします)」の書き出しで始まり、時候のあいさつ、自分は(嫁ぎ先で)無事に暮らしていることの報告に続いて、棚物飾り用の書付(かきつけ)(茶道具)を借用したい旨、記している。用件で出したもののようだが、家の当主の持病を心配する文言などもあり、女性らしいこまやかな気遣いもうかがえる。大阪の広岡家に嫁いだ後に出された手紙だろうという。

 江戸時代に三井家の事業について記した「商売記」(1722年、複製)や、京本店(呉服部門の本店格)の支配人のための規則を記した「支配勤(つとめ)集」(1703年、同)など、興味深い資料も展示されている。

1階縁側に面した和室はカフェになっている

1階縁側に面した和室はカフェになっている

 奥に進むと庭に面して日当たりの良い縁側と8畳、6畳の和室。ここはカフェにもなっていて、静かに庭を眺めながらお茶を飲むことができる。京都のお寺めぐりもよいが、時にはこういう場所で、ゆったりと庭を眺め過ごすのも悪くない。

 
3階の望楼からの眺め、東山を望む景色が広がる=いずれも京都市左京区下鴨宮河町で

3階の望楼からの眺め、東山を望む景色が広がる=いずれも京都市左京区下鴨宮河町で

 2階は庭を見下ろす14畳の広々とした和室がある。そのわきから狭く急な階段を上ると、そこが3畳ほどの広さの望楼だった。一気に視界が開け、開け放した窓から比叡山や東山を望む景色が広がった。

 文・写真 橋本節夫

(2017年2月10日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
旧三井家下鴨別邸へは、京都駅からJR奈良線に乗り、東福寺駅で京阪線に乗り換え、出町柳駅下車、徒歩5分。
または京都駅から市バス4号系統に乗り出町柳駅前下車、徒歩5分。

◆問い合わせ
京都市観光協会=電075(213)1717

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