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シュガーロード

シュガーロード 佐賀県小城市、佐賀市 歴史豊かな羊羹の町

断崖のような、153段の石段の須賀神社。奥に中世の山城、千葉城跡がある

断崖のような、153段の石段の須賀神社。奥に中世の山城、千葉城跡がある

 長崎から佐賀を通る、かつての長崎街道を近年、シュガーロード(砂糖の道)と呼ぶという。春らしい甘い言葉にひかれて、旧街道沿いの羊羹(ようかん)の町、佐賀県小城(おぎ)市を訪ねた。

 JR佐賀駅から単線の唐津線に乗る。小城駅を出ると、すぐ左手に羊羹の出店。正面の目抜き通りに4軒並ぶように羊羹の看板やのぼりが見える。平成の合併で人口は約4万4000人だが、旧小城町地域は約1万5000人。この小さな町に19軒もの羊羹店がある。

 小城は、源頼朝により地頭職として移ってきた千葉氏の築城に始まり、鍋島家の小城藩の城下町として栄えた。千葉氏時代から、京文化の影響が強く、小京都といわれる。それにしてもなぜ、羊羹の店がこれほど多いのか。

 「長崎に近く、輸入の砂糖の入手が容易だったこと、当時は小豆など豆の産地だったこと、きれいな水があることが大きい」と案内してくれた市商工観光課の光岡晋宏さん(27)が説明した。

 街歩きを後にして、まずは駅から少し離れた村岡総本舗羊羹資料館に向かう。店の前に祇園川を挟み、須賀神社の153段の険しい石段が目を引く。神社の奥に中世の山城、千葉城跡がある。れんが造りの羊羹資料館は元砂糖蔵で国登録有形文化財。入館無料で、2階には小城の羊羹の歴史と羊羹づくりの道具などが展示されている。

 小城で羊羹づくりが始まったのは明治の初め。村岡総本舗は1899(明治32)年の創業で、長崎から呼んだ職人に製法を学んだ。「小城羊羹」と名付けたのはこの会社という。昔ながらの小城羊羹は、表面に砂糖のシャリ感が残るのが特色だ。

元砂糖蔵を利用した村岡総本舗羊羹資料館(建物の右側。左側は同本舗本店)

元砂糖蔵を利用した村岡総本舗羊羹資料館(建物の右側。左側は同本舗本店)

 資料館の1階では、緋毛氈(ひもうせん)の座台が置かれ、無料で羊羹と抹茶をふるまってくれる。「明治から昭和にかけ、戦地の近かった九州は、軍隊用に日持ちの良い羊羹の需要が高かった」と同本舗社長、村岡安廣さん(68)は歴史的要因も指摘する。

 
「頑固な技」と羊羹づくりの思いを額にして掲げるむら雲堂の月岡輝弘さん

「頑固な技」と羊羹づくりの思いを額にして掲げるむら雲堂の月岡輝弘さん=いずれも佐賀県小城市で

 資料館を出て、駅に向かって通りを歩く。途中、羊羹店「むら雲堂」に立ち寄る。小城では多くの店で羊羹とお茶を出してくれる。

 経営者の月岡輝弘さん(45)は昨年11月、小城羊羹協同組合が開いた「羊羹王国・小城 日本一!ようかん祭り」で実行委員長を務めた。県内外から約5000人の客でにぎわった。「各店で個性の異なる小城の羊羹とともに、歴史の豊かな小城の町を知ってもらいたかった」と話す。

 リピーターの観光客には好みの店があるといい、一緒に案内してくれた市観光ボランティアガイドの田尻治昭さんは「店によって味は全然違う」と言った。

 古い城下町だけに街歩きの楽しみは多い。羊羹資料館近くの小柳酒造は文化年間(1804~18年)創業で町屋造りの主屋をはじめ、蔵、釜場、煙突などが国登録有形文化財。また、市の施設「桜城館」には小城出身で明治の代表的書家、中林梧竹の記念館もある。

 佐賀市に戻る。ここでも、中央大通り沿いにある4つの老舗菓子店と7つのえびす像をめぐる「佐賀銘菓めぐりの恵比須散歩」を展開している。市内には820体以上と日本一の数のえびす像がある。羊羹や丸ぼうろなどの4店のうち3店は小城ゆかりの店だ。500円でチケットを入手し、各店で提示すれば、菓子とお茶を出してくれ、お土産をもらえる。通りや街角でさまざまな表情のえびす像を見つけるのも楽しい。

 まさに甘いもの尽くしの旅。羊羹の味の違いが分かったかと問われれば、甘党ではない身としては自信がない。ただ、「甘さ控えめがいい、という今の風潮はおかしい。甘くておいしい、というのが本当だ」と力説した老舗の村岡社長の言葉が印象に残った。

 文・写真 朽木直文

(2017年4月7日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
佐賀空港から佐賀駅バスセンターまで連絡バス約30分。
佐賀駅から小城駅までJR唐津線で約20分。

◆問い合わせ
小城市観光協会=電0952(72)7423、佐賀市観光協会=電0952(20)2200

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★長崎街道
長崎と小倉(北九州市)を結ぶ旧街道。
のちに途中、複数ルートとなり、佐賀県内では現在の国道34号、同207号にほぼ相当するという。

★鯉(こい)のあらい
小城市の名物料理。
通称清水観音(見滝寺宝地院)には清水の滝(高さ約75メートル)があり、清水川は名水百選の一つ。
その水を使ったいけすで、鯉は「さらす」といって餌を20日以上抜くので臭みがない。
清水地区には9軒の鯉料理店がある。
あらいの上に氷をびっしりとかぶせるのはこの地区独特。
「鯉しげ」では2、3人分の舟盛りと鯉こくをセットで3240円。
鯉しげ=電0952(72)2008

★佐賀バルーンミュージアム
熱気球(バルーン)の町として知られる佐賀市に昨年10月、常設施設として誕生した。
熱気球の仕組みや歴史を映像で紹介するほか、バルーンの操縦を疑似体験できるフライトシミュレーターもある。
大人500円、小中高生200円。
原則月曜休館。
電0952(40)7114

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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