【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. 国東半島・真玉海岸
国東半島・真玉海岸

国東半島・真玉海岸 大分県 遠浅の浜 織りなす夕日

干潟と潮だまりが夕日に照らされて、幻想的なコントラストを描く=大分県豊後高田市の真玉海岸で

干潟と潮だまりが夕日に照らされて、幻想的なコントラストを描く=大分県豊後高田市の真玉海岸で

 潮が引いた遠浅の浜に、巨大な縞(しま)模様が現れた。点在する黒い干潟と、空の色を映す潮だまり。日が傾くにつれて、刻々と色を変え、光と影の壮大なコントラストが描かれていく。やがて水平線から太いオレンジの帯が延びてきた。
 国東(くにさき)半島の西側、大分県豊後高田市にある真玉(またま)海岸は「日本の夕陽(ゆうひ)百選」に選ばれた名所だ。訪ねた時は、引き潮と日没が重なる撮影日和。大勢のアマチュアカメラマンが訪れていた。

 空が徐々に暗くなる中、常連の初老の男性が「ああ…」と残念そうなため息を漏らした。水平線の黒雲が、日没の瞬間を隠してしまったのだ。「天気のいい日だと、日没直後の水平線に燃えるような赤の帯ができて、空とのコントラストが本当に見事なんだよ」

 そんな写真を撮れるのは年に数えるほどしかないそうだが、「至高の一枚」を求めて通う人は多い。船乗りをしていて世界の海を見たという同市の小野主計さん(62)は「季節や、空の雲の位置、空気の澄み具合で毎日違うから、毎日来ている。やっぱりここの夕日が一番」と誇らしそう。

 干潟に隆起とくぼみがあり、潮だまりができる地形が、この神秘的な風景を生む。同市は、この海岸で夕陽コンサートや、マラソン大会を企画。同半島の海岸線を走る国道213号の約20キロ間を「恋叶(こいかな)ロード」と名付けて、同海岸と「縁結びの神様・粟嶋社」や、「花とアートの岬・長崎鼻」などのPRに努めている。だが、同半島の東岸にある大分空港に降りた観光客の多くは、別府、由布院などの温泉地に流れ、滞在型の観光につながりにくいという。

両子寺の参道に立つ仁王像。国東半島を代表する石造文化財の一つだ=同県国東市で<br />

両子寺の参道に立つ仁王像。国東半島を代表する石造文化財の一つだ=同県国東市で

 翌日、地元の知人の案内で、半島を車で回った。百数十万年前に両子(ふたご)山(721メートル)の噴火で生まれた半島は、切り立った峰、奇岩、断崖が続き、坂道、トンネルが多い。点在する寺院はいずれも長い石段の上だ。

 同山の中腹にある両子寺は、参道の両側に高さ2. 45メートルのたくましい仁王像がそびえていた。右側の阿形(あぎょう)像は叫ぶように口を開いて、拳を握り、左側の吽形(うんぎょう)像は左足を一歩前に踏み出して戦闘ポーズ。1814年の作と伝えられる寺の守護役だ。

 
石造りの野仏、塔などが無数にあるのが国東半島の特徴だ=国東市で

石造りの野仏、塔などが無数にあるのが国東半島の特徴だ=国東市で

 国東半島は石造文化財の宝庫で、仁王像だけでも約130体が現存している。また、田畑、ため池のわき、山林の中などにたたずむ庚申(こうしん)塔(道教の庚申信仰に基づいて建てられた平穏祈願の石像)は正確な数がつかめないほど。

 半島東側の同県国東市の庚申塔約600基を調査書にまとめた元小学校校長の大上文紘さん(72)は「全国の八幡神社の総本宮である宇佐神宮(同県宇佐市)の八幡信仰と仏教、山へこもって厳しい修行をする修験者たちの山岳信仰などが融合して『六郷満山(ろくごうまんざん)』と呼ばれる独自の宗教文化が生まれた」と指摘。「平野が少なく、厳しい自然の中で平穏を願う住民の思いが、石像づくりにつながったのでしょう」と解説する。

 そんな歴史を持つ半島も、高齢化、人口減が進み、山間の農地はシカ、イノシシの食害が深刻。大上さんは郷土史研究の傍ら、猟師として畑の近くに仕掛けたわなを見て回るのが日課だ。

 文・写真 安藤明夫

(2017年4月14日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
大分空港へは、中部国際空港から朝夕の2便、羽田からは1日14便。
国東半島を回るにはレンタカーが便利だ。真玉海岸へは空港から1時間。
JR小倉駅からは高速道を使い1時間40分。

◆問い合わせ
豊後高田市観光協会=電0978(23)1860

おすすめ

国見郷愛記念館

国見郷愛記念館
シイタケ栽培

シイタケ栽培

★熊野磨崖仏
豊後高田市の田原山にある。
急な石段を上ると岩壁に刻まれた2体の巨大な磨崖仏が現れる。
平安時代末期の作とされ、国内最古、最大の磨崖仏として国の重要文化財に指定されている。
左側の不動明王像は、高さ8メートルに及ぶが、風化が進行している。
拝観料300円、小中学生150円。

★国見郷愛記念館
国東市国見町の築80年の精米所を改装した民営の記念館。
いずれも郷土出身の、日本芸術院賞受賞者の陶芸家・河合誓徳、洋画家・江藤哲(元名古屋芸術大教授)の両氏の遺作や、「キタキツネ物語」で知られる獣医師で写真家の竹田津実氏の写真などを展示している。
入場料300円、中学生以下無料。

★シイタケ栽培
大分県の干しシイタケの生産は全国の約半分を占める。
原木に適したクヌギ林が広がり、温暖で降水量も多いこと、高齢者にも負担の少ない作業であることから、国東半島でも山林やミカン畑の跡地などを使って、広く栽培されている。
大型で肉厚のシイタケは、香りの良さに定評がある。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

旅コラム
国内
海外