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サマルカンド、ブハラ

サマルカンド、ブハラ ウズベキスタン 都の盛衰知る建物群

3つのメドレセ(神学校)が向かい合うように立つレギスタン広場。抜けるような青空に映える=ウズベキスタン・サマルカンドで

3つのメドレセ(神学校)が向かい合うように立つレギスタン広場。抜けるような青空に映える=ウズベキスタン・サマルカンドで

 雲一つない空に、青のドームが溶けてゆく。古来、シルクロードの旅人を魅了してきたサマルカンド・ブルー。かつての都を彩った青は、建設から6世紀を経た今日も鮮やかだ。

 東西交易の要衝として栄え、国内に4つの世界文化遺産を抱えるウズベキスタン。その1つ、サマルカンドから旅は始まった。

 
黄金に彩られたグリ・アミール廟の天井。ティムール一族が眠る=サマルカンドで

黄金に彩られたグリ・アミール廟の天井。ティムール一族が眠る=サマルカンドで

 14~15世紀、中央アジアを拠点に大帝国を築いたティムールの一族が眠るグリ・アミール廟(びょう)や、街中心部のレギスタン広場に立つ3つの神学校。高さ30メートルをゆうに超えるそれらの壁面は、青いタイルのモザイクで装飾が施されている。

 「私の力を知りたければ、その建物を見ればいい」。異国の使者にそう語ったというティムール。権勢を体現した建築物の意匠は様式化され、以降の建築に大きな影響を与えた。

 青タイルのモザイクもそう。星空や宝石のようにも見えるが、クモの巣を表す。イスラム教の預言者ムハンマドが追っ手から逃れて山に隠れた際、巨大なクモが巣を張って手助けした言い伝えに由来するのだという。

 ティムールはモンゴル帝国を築いたチンギスハンの子孫をかいらいに自らの権力の正統性を主張する一方、イスラム教の保護に力を注いだ。建築群の意匠には、宗教の威光を背景に国の統治を図ったティムールの思惑が垣間見える。

 そんな祖国の英雄も不遇をかこった時期がある。19世紀以降本格化するロシア帝国の支配とその後のロシア革命、ソ連の誕生は、ティムールを歴史の表舞台から追いやった。栄華を誇った建物群は破壊の対象となり、街から青の輝きが失われた。

 存在に再び光が当たったのは1991年の独立以降。自国の歴史を見直す機運が高まり、ティムールは再び国民の敬慕の対象となった。主要都市には巨大な像が建設され、建物群の修復が急ピッチで進められた。

長い髪をなびかせて踊る娘たち。まとった民族衣装の柄にはそれぞれ意味があるのだという=ブハラで

長い髪をなびかせて踊る娘たち。まとった民族衣装の柄にはそれぞれ意味があるのだという=ブハラで

 街の中心で今日もにらみを利かすティムール像に別れを告げ、次の目的地ブハラに向かった。バスに揺られ、舗装もまばらな道を西へ220キロ。ブハラの旧市街はサマルカンド同様、世界遺産に指定されている。

 街のあちこちにコウノトリの像を見かけた。現地ガイドのナジロク・ドストンさん(26)によると、平和の象徴なのだという。旧約聖書の預言者に由来を持つ建物の屋根にも、コウノトリ。建物の厳かさと裏腹にどこかユーモラスだ。

 旧市街にはティムールが大帝国を築く以前の建築物が残る。代表的な建物であるイスマイール・サーマーニ廟は中央アジアに現存する最も古いイスラム建築として知られ、9世紀後半から10世紀に建てられた。その後、土中に埋もれたため、度重なる異国の来襲にも破壊を免れた。

 サマルカンドの青と比べると、土色のれんがを積み重ねた建物は華やかさに劣る。だが、目を凝らすと丸や三角の形を組み合わせた柱や壁面は実に複雑で、れんが一つ一つも黄みや青みを帯びるなど表情豊かだ。光の当たる角度などで日時によって違った色にも見えるという。

 予報は雨だが、その気配は一向にない。太陽の国と呼ばれる同国は、年間で晴れが300日近い。春先でも日中の気温は30度超。涼を求めて池のほとりのオープンカフェに立ち寄った。喫茶は現地でチャイハネと呼ばれ、盤ゲームに興じる老人やおしゃべりな男たちが思い思いに時間を過ごしていた。

 見上げた桑の古木にも、見つけた。平和の使者・コウノトリだ。牧歌的な光景を見守る姿に、破壊と再生を繰り返してきたウズベキスタンの歴史を重ね合わせた。

 文・写真 小笠原寛明

(2017年5月19日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
旅にはウズベキスタン航空のチャーター直行便の利用が便利だ。
8~10月に成田、中部国際、関西国際、仙台国際、福岡発着で7本の運航を予定している。
サマルカンドまでの所要時間は8時間40分。

◆問い合わせ
阪急交通社中部日本営業本部=電052(563)0600、同東日本営業本部=電03(6745)1800

おすすめ

ライトアップ・ショー

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名物のサマルカンド・ナン(かまどで焼いた丸く平たいパン)

名物のサマルカンド・ナン(かまどで焼いた丸く平たいパン)

★ライトアップ・ショー
レギスタン広場では夜間、幻想的な光と音のショーを楽しめる。
神学校を背景にしたプロジェクションマッピングはイスラム教の伝来やティムール帝国の誕生など、ウズベキスタンの歴史を印象的に映し出す。

★サマルカンド・ペーパー
紙すきの技術は8世紀半ば、中国から伝わったとされる。
蚕の餌である桑を原料に使っている点や、仕上げに紙の表面をこすって光沢を出すことからシルクペーパーの異名を持つ。
サマルカンド郊外に工房があり、見学や紙すき体験ができる。

★ショブ・バザール
ビビハニム・モスク隣の市場。
伝統的な刺しゅうを施した帽子や食料品などが格安で買える。
名物のサマルカンド・ナン(かまどで焼いた丸く平たいパン)は、もちもちの食感が特長。
水につけて焼き直せば、3カ月後でも食べられるという。

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