【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. 南三陸町
南三陸町

南三陸町 宮城県 観光も復興の後押しに

志津川湾を回る観光船にウミネコの群れが近づいてくる=いずれも宮城県南三陸町で

志津川湾を回る観光船にウミネコの群れが近づいてくる

 宮城県南三陸町の志津川湾。観光船にウミネコの群れがついてくる。デッキで乗船客が餌を手にすると、空中からさっと近づいてじょうずに餌をさらっていく。その瞬間をとらえようと構えたカメラにかけた指をくちばしでガツンとやられた。餌と間違えられたようだ。

 湾は波もなく穏やか。ホタテやホヤの養殖用ロープを下げた浮玉がそちこちに見え、その向こうに、リアス海岸特有の荒々しい岬や島々が広がる。この美しい景色からは、6年前のあの光景は想像もつかない。

 志津川湾は、恵まれた地形を生かし銀ザケやホタテ、ホヤなどの養殖がもともとさかんだった。それが東日本大震災でほぼ壊滅状態に。「比較的短期で出荷できるワカメの養殖から再開し、まだ完全とは言えませんが、ほぼ震災前の出荷量に戻ってきました」。南三陸町役場の宮川舞さん(42)が言う。

 景勝地の志津川湾を約1時間かけて回り人気があった観光船も津波で流失し3年前、新たな船で復活した。「今年7月には海水浴場も復活しますよ」。宮川さんが笑顔を見せる。

 震災による津波で800人以上の死者・行方不明者を出した南三陸町。壊滅的な被害を受けた町中心部は、かさ上げ用に土盛りされた小山や重機があちこちに見える。復興はまだまだこれからという印象だ。

 「造成工事で道路が毎日のように変わり地元の人間も迷ってしまうほどです」。南三陸町語り部ガイドの鈴木清美さん(60)が笑いながら話す。町は災害の教訓を観光客にも学んでもらおうと、語り部ガイドを行っていて、鈴木さんもその1人だ。

 「津波の時は、長男が通う町内の福祉作業所にいました。少し高台にあり、まさかここまでは、と思っていました。ところが津波はあっという間に押し寄せ、私はのみ込まれました。水中で意識がなくなりかけた時、目の前に物置の雨どいが見えたんです。必死でしがみつき水面から顔を出すことができました」。鈴木さんは「助かったのは奇跡」と言いながら振り返った。幸い長男も無事だったという。

43人が亡くなった元南三陸町防災対策庁舎。献花台には今も花が絶えない

43人が亡くなった元南三陸町防災対策庁舎。献花台には今も花が絶えない

 鈴木さんの案内で、津波で43人の犠牲者を出した町の元防災対策庁舎に行った。鉄骨だけの無残な姿になった庁舎は、周辺が工事中でそばに近づけなかった。しかし手前に設けられた献花台には、今なおたくさんの花が手向けられていた。

 海を見下ろす高台にあり、避難所になっていた町の戸倉中学校跡では、元校舎の1階天井付近に「津波到達地点22.6メートル」のマークが残っていた。そこから海の方を見ると、海面はかなり先の下の方だ。「こんなところまで来たのか」。津波の恐ろしさを改めて実感した。

 「ここだけは、自分だけは大丈夫という思い込みが避難を遅らせる。その怖さを思い知らされました。皆さんも心の片隅に覚えておいて」。鈴木さんはしみじみと話した。

観光客らでにぎわう「南三陸さんさん商店街」=いずれも宮城県南三陸町で

観光客らでにぎわう「南三陸さんさん商店街」=いずれも宮城県南三陸町で

 明るい話題もあった。復興の象徴でもある「南三陸さんさん商店街」は、5年間営業した仮設場所から、かさ上げされた場所に移り3月、再オープンした。最初の1カ月だけで18万人が訪れたという。ただ課題も。食料品店を営む山内正文さん(68)は「まだ住宅が近くにないので観光客が中心。早く復興して町の人も来る商店街にしていかなければ」と力を込めた。

 実は、被災地を観光で訪ねることにはためらいもあった。しかし旅館のおかみがこんな話をしてくれた。「ここでは身内が助かった人もいれば、亡くした人もいる。うかつに震災の話はできないんです。でも外の人になら話せるし、それが救いになる。皆さんに来ていただくことが私たちと町を元気づけ、それが復興にもつながっていくんです」

 文・写真 橋本節夫

(2017年5月26日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
南三陸町へは、JR仙台駅から東北線小牛田(こごた)駅で石巻線に乗り換え、前谷地駅から気仙沼線・バス高速輸送システム(BRT)でBRT志津川駅下車。
仙台駅前からBRT志津川駅へ行く高速バス(1日4本)もある。

◆問い合わせ
南三陸町観光協会=電0226(47)2550

おすすめ

レールバイク乗車体験

レールバイク乗車体験
地元産の旬の魚介を使った丼

地元産の旬の魚介を使った丼

★細倉マインパーク
宮城県栗原市にある。
1987年に閉山した細倉鉱山の往年の作業風景などを再現した長さ777メートルの観光坑道。
砂金採り体験もできる。
観光坑道は大人460円、中高生360円、小学生300円。
砂金採り体験は大人・中高生410円、小学生360円。
電0228(55)3215

★くりはら田園鉄道公園
2007年に廃線となったくりはら田園鉄道(石越-細倉マインパーク前駅、25.7キロ)で運行していた電車などを展示。
運転シミュレーターやレールバイク乗車体験(各500円)もできる。
入館料一般500円、小中学生300円。
電0228(24)7961

★南三陸キラキラ丼
地元産の旬の魚介を使った丼。
南三陸さんさん商店街の飲食店など町内11店舗で提供。
魚介は季節ごとに変わり5月から8月はうに丼(2000~2700円)。
電0226(47)2550

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

旅コラム
国内
海外