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小布施・飯山

小布施・飯山 長野県 栗の里 北斎画ひっそり

北斎最後の大作といわれる天井の鳳凰図。鮮やかな色彩に驚かされる=長野県小布施町で

北斎最後の大作といわれる天井の鳳凰図。鮮やかな色彩に驚かされる=長野県小布施町で

 初夏の信州は緑いっぱい。その中に昔から伝えられたお宝が隠れている。とくに長野県小布施町には、葛飾北斎(1760~1849年)の作とされる絵が多く残る。いったいどうして-。長年の疑問を確かめに出掛けた。

 江戸の下町に住んでいた北斎は、80歳を過ぎてから数回小布施を訪ね、長くとどまったという。北斎を招き、住居を提供したのは、当地の豪商にして文化人の高井鴻山(こうざん)だ。

 町はずれの山裾にひっそりと立つ岩松(がんしょう)院の本堂天井にある鳳凰(ほうおう)図は、北斎最後の大作とされる。大きさは21畳分もあり、長いすに体を預けて見る。鳳凰の鋭い目に射すくめられるようだ。鮮やかな色彩は、約170年前のものとは思えない。

 住職の娘、渡辺みよえさんは「地元では北斎より鴻山の方が高名だったので、絵も長らく鴻山の作とされてきました。値打ちも分からず、本堂でボール遊びをしていたくらいです」と話す。確かに富嶽(ふがく)三十六景などの版画とは、作風がだいぶ異なる。「近年、専門家による技法や筆運び、顔料の分析から、重要な鳳凰の顔などは北斎が直接手掛け、周囲は何人かの絵師の協力によるのだろうと考えられています」

 絵に署名はなく、絵の裏などを調べたら新事実が見つかるかもしれない。ただし、将来は天井画の真下に入ることはできなくなりそうだ。振動で顔料がはがれ落ちるのを防ぐためだ。訪問しておいてよかった…。

北斎館と高井鴻山記念館を結ぶ「栗の小径」は散策にぴったり=長野県小布施町で

北斎館と高井鴻山記念館を結ぶ「栗の小径」は散策にぴったり=長野県小布施町で

 町の中心は栗菓子店が軒を並べる。小布施堂、桜井甘精堂、竹風堂の大手3社は、レストランやカフェの他、それぞれ美術館や博物館を持ち「和風モダン」を演出する。あちこちに花が植えられ、民家の庭や工場の敷地も通り抜けられる。

 栗ソフトクリームを手にしたカップルを横目に、北斎の肉筆画を多数所蔵する「北斎館」を見て、栗の小径(こみち)をたどり、鴻山の屋敷を生かした「高井鴻山記念館」に向かう。このあたりを北斎も歩いたはずだ。

 高齢の北斎はどのように信州と江戸を行き来したのだろう。記念館の金田功子(いさこ)館長に伺うと、「北斎は旅が好きでした。江戸から倉賀野(群馬県高崎市)までは舟があり、そこからは陸路になりますが、牛馬やかごの助けがあれば無理ではありません」とのこと。

 「当時は天保の改革による引き締めで、絵師は失業のピンチ。最初はふらりと旧知の鴻山を訪ね、後は鴻山の招きに応じたのです。やりとりの手紙がたくさん残っています」

ブナ林の中でヨガ教室。光と風を感じながらリラックスできる=長野県飯山市で

ブナ林の中でヨガ教室。光と風を感じながらリラックスできる=長野県飯山市で

 エネルギッシュな北斎に驚きつつ、足を延ばして、初夏の森を楽しめる長野県飯山市の「なべくら高原」へ向かった。北信の中心都市で新幹線の駅もある飯山からバスが出ている。

 見渡す限りのブナの原生林。木漏れ日が優しく地面に届き、聞こえるのはザワザワという葉ずれの音と、鳥の鳴き声だ。

 観光の中心となる「森の家」支配人の高野賢一さんは「ブナ林は全国にあったのですが、成長が遅く、使いにくいので、どんどん伐採されました。ここには樹齢400年の大木もあります」と話す。世界遺産になった東北の白神山地にも負けないブナ林を多くの人に知ってもらおうと、散策道の整備が進められた。コテージに宿泊でき、森の中でヨガ体験もできる。自然と一体となり、新しい自分を見つけることができるかもしれないと実感した。

 文・写真 吉田薫

(2017年6月23日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
小布施へはJR長野駅から長野電鉄で約30分。
見どころは小布施駅から徒歩10分程度の「栗の小径」周辺に集中する。岩松院はやや離れているが、土休日を中心に周遊バスを利用できる。

◆問い合わせ
小布施文化観光協会=電026(214)6300、なべくら高原森の家=電0269(69)2888

おすすめ

みそすき丼

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★みそすき丼
小布施の隣の長野県須坂市は、かつて製糸業で栄え、蔵の町としても知られる。
生糸商人のおもてなしに考案されたのが、地元産のみそで味付けされたすき焼き。
それが丼として名物料理になった。
市内の食事どころで800~900円の手ごろな価格で楽しめる。

★米子不動尊
須坂駅から市民バスで30~40分ほどの寺。
深い山中にある修験道・密教寺院の里堂にあたり、上杉謙信ゆかりの仏像や軍配を所蔵する。
7月からは長野駅発「びゅうばす」(観光バス)訪問先となり、宝物が公開される。
電026(245)0972

★おぶせミュージアム・中島千波館
小布施中心部近くにある町立の立派な美術館。
当地に生まれた日本画家中島千波氏の作品を多く展示する。
筆者が訪れた時、中島氏本人が友人と談笑中で驚いた。時折絵画教室や講演をしているという。
電026(247)6111

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