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グラース

グラース フランス 花と人 輝く「香水の都」

花のイラストが描かれた看板が掲げられた香水ショップなどが並ぶ旧市街

花のイラストが描かれた看板が掲げられた香水ショップなどが並ぶ旧市街

 フランスの観光都市ニースから西へ35キロ。バスに揺られ「香水の都」と呼ばれるグラースを訪れた。6月下旬の南仏は強い日差しがまぶしくて目が開けられないほど。この温暖な気候が香水の原料となる花の栽培に適しているのだという。

 14~17世紀のグラースはなめし革業で栄え、良質な革製品を生産した。手に残る革手袋の臭いを嫌がる女性の声を受け、香りをつけて販売したところ、上流階級の婦人らに人気となった。これが産業として発展し、18世紀には香水産業がなめし革業を超えた。

 人口約5万人の地方都市だが、香水産業は2700人の雇用を生み出す。香水メーカーのガリマールやフラゴナール、モリナールなどの工場が操業し、周辺では高級ブランドのシャネルやクリスチャン・ディオールの香水の原料となる花が栽培されている。

 グラースの旧市街地を歩いた。青空に映える黄色い壁の建物が並び、細い坂道は、まるで迷路のようで、あちこちに香水店がある。店内をのぞくと、棚にかわいらしい瓶が並び、出産祝いに贈るぬいぐるみ付きの「赤ちゃん用」香水もあった。

 じりじりと照りつける暑さもあって、思わず街角のジェラート店に入った。バラやラベンダーなど花の香りがする商品の中からスミレのジェラートを選び、あっという間に平らげて暑さをしのいだ。

国際香水博物館植物園の花畑。6月下旬には紫色のラベンダーが見頃を迎えていた

国際香水博物館植物園の花畑。6月下旬には紫色のラベンダーが見頃を迎えていた

 郊外にある国際香水博物館植物園に足を延ばした。2.5ヘクタールの畑で香水の原料となる花を栽培している。一面に紫色のラベンダーが咲きそろい、青い空と緑の山とのコントラストが美しい。5月にはバラのローズ・センティフォリア、7、8月にはジャスミンなど季節ごとに多彩な花が楽しめるという。

 ガリマールの工房では香水の調合を体験。選べる香水は127種類で、好みの香りを選んでいく。直感で選んでいると、スタッフのナタリー・ネスレさん(50)に「春の花の香りが多い。あなたロマンチストでしょう」と指摘された。香りに性格が出てしまうのかもしれない。

 調合している最中に鼻がまひしてきた。ハンカチを当てて休みながら調合し、修了証をもらった。フランス中央部のクレルモンフェランから一緒に参加したデクール真由子さん(48)は「自分で香りを選んでいくことで、自分自身について改めて知ることができた気がする」と話した。

 花を使ったジャムを製造しているティエリー・ボルトリーニさん(53)には、花畑を案内してもらった。祖父の代から香水の花を栽培していたが、1971年に香水用の花作りはやめたという。人件費の安い北アフリカでの生産が増え、天然香料よりも安価な合成香料が流通したことが背景にある。

ガリマールの香水調合体験を案内するナタリー・ネスレさん。瓶に入った127種類から調合して自分だけの香りを作りだす=いずれもフランス・グラースで

ガリマールの香水調合体験を案内するナタリー・ネスレさん。瓶に入った127種類から調合して自分だけの香りを作りだす=いずれもフランス・グラースで

 例えば、香料に根を使うアヤメの香水を作るためには、3年かけて根を育て、さらに3年間乾燥させる。バターのような香水のもとを1キロ作るためには10トンものアヤメが必要になるという。気の遠くなるような作業で、伝統の文化や技術を継承することの難しさは、日本も海外も同じだと知った。

 パリ在住の石井千恵さんはグラースで香水の調香を学んだ。地下鉄で出会った女性の香りが、あまりにもその人に似合っていて衝撃を受けたのがきっかけ。「香水は人を輝かせることができる」と感じ、今では「生きる喜び」と言い切る。

 グラースで香水産業に関わる人たちの笑顔を見て、私もその言葉に素直にうなずくことができた。香水の魅力は自分らしさを表現できること。グラースで作った「ロマンチスト」らしい香水は、私を輝かせてくれるだろうか。楽しみにしている。

 文・写真 小寺香菜子

(2017年8月18日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
羽田、成田、関西の各空港からパリのシャルル・ドゴール空港まで直行便で約12時間。
同空港またはパリのオルリ空港からニースのコートダジュール空港まで約1時間半。
ニースからグラースまではバスで約1時間半。
カンヌからバスもある。
ガリマールの香水工房はグラース中心部からバスで10分。

◆観光情報
フランス観光開発機構やマイ コートダジュール ツアーズのホームページなどがある。

おすすめ

香水の瓶の飾り付け体験

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ガリマールやフラゴナールの工場にはショップが隣接

ガリマールやフラゴナールの工場にはショップが隣接

★食べ物
フガセットはオレンジフラワーの水を使ったグラースらしいパンで、ほんのり甘い香り。
エショーデはオレンジの皮を使い、クッキーのような食感。

★香水の瓶の飾り付け体験
旧市街地にある香水店「M.Micallef」では49ユーロ(約6300円)で好きな香水の瓶に飾り付けができる。
瓶を選んで文字を彫ったり、絵を描いたり、小さなガラスの飾りを付けたり。

★買い物
ガリマールやフラゴナールの工場にはショップが隣接。
せっけんは、きれいな包装が多く、お土産にぴったり。
ガイドのステファニー・ルモアンヌさん(37)のお薦めはアルガンオイル。
バスターミナル近くの観光案内所にあるパンフレットで10%引きの店もある。

★プロバンス民族衣装・宝石博物館
18~19世紀のドレスや帽子などが展示されている。
素朴な衣装から当時の生活の様子を知ることができる。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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