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南アルプス・聖岳

南アルプス・聖岳 静岡・長野県境 心奪われる頂の眺望

聖岳の麓にある聖平小屋。テントで宿泊する人も多い

聖岳の麓にある聖平小屋。テントで宿泊する人も多い

 初めて名前を聞いたときから、なぜか無性に行きたかった山。南アルプス・聖岳(ひじりだけ)(3、013メートル)。どっしりとした姿形に、響きのいい名前。山深くにあるため、日帰り登山は難しく、なかなか簡単には登らせてくれない。夏山シーズンに合わせ、山小屋に泊まり、あこがれの「君」に会いに行ってみた。

 聖岳を含む南アは静岡、山梨、長野の3県にまたがり、南北約120キロにわたり3000メートル超級の山々がそびえる大山脈。中でも、静岡市葵区と長野県飯田市をまたぐ聖岳は、3000メートル超級では南ア最南端に位置する。名前の由来は、山奥深く、世俗を脱した「聖なる山」から来たともいわれている。

 北アルプスと比べ、南アは広大な樹林があるのが特徴だ。哺乳類はニホンカモシカやツキノワグマなど30種以上、鳥類も87種が生息。キタダケソウやサンプクリンドウなど高山植物の宝庫でもある。1964年に国立公園に指定され、2014年には自然を守りながら地域社会の発展を目指す「ユネスコエコパーク」にも登録された。周辺の3県10市町村が、自然を生かした魅力ある地域づくりを目指し、自然の保護と利活用に取り組んでいる。

 南アの山々は、登り口にたどり着くまでにまず時間がかかる。聖岳に登るため、5時間かけて麓の聖平小屋を目指した。早朝に出発すると、木々の葉を通した朝日が、登山道を黄緑の柔らかい光で包んでいた。肺いっぱいに空気を吸い込み、踏み締めるように登り道を進む。きしむつり橋を渡り、沢で水をくみ、ようやくたどり着いた聖平小屋で1泊。標高はすでに2、260メートル。日中でも気温は20度を切っていた。

そびえる聖岳。山頂へは険しい道が続く

そびえる聖岳。山頂へは険しい道が続く

 小屋は例年7月中旬から約2カ月間営業し、この日も40人ほどが宿泊。小屋では登山客同士で山の話が弾み、縦走中の東京都中野区の会社員中山沢子さん(45)は「高山植物があちこちで咲いて、まさに自然の庭園だった。うっとりする」と道中の様子を話してくれた。昨年、聖岳に登って日本百名山を制覇した浜松市の会社員高塚善仁さん(55)は「南アは一つ一つの山が大きくて、簡単にたどり着けないのがいいんです」。管理人の原田重二さん(71)に聖岳の魅力を尋ねると、「樹林の素晴らしさ、360度の眺望、空気、水、高山植物。聖岳は山の全てがありますよ」と教えてくれた。

 聖岳山頂で御来光を拝もうと、午前3時半に小屋を出発した。暗闇をとぼとぼ歩いていたが、夜明けが近づくにつれ、次第に辺りの山々が見えてきた。東の空に明けの明星がきらめき、遠方には朝焼けに照らされた富士山。そして、すぐそこに迫った巨大な聖岳。ひるんでしまうような急な登りが頂上へと続き、まるで「登ってみろ」と語りかけてくるよう。覚悟を決めて最後の登りに取りかかり、午前6時前に頂に立った。

南アルプスの山々が見渡せる聖岳の山頂=いずれも南アルプス・聖岳で

南アルプスの山々が見渡せる聖岳の山頂=いずれも南アルプス・聖岳で

 山頂には360度の眺望が広がっていた。朝日が山々を照らし、どこまでも緑の峰が続く。目の前にそびえる赤石岳(3、121メートル)の雪渓が真っ白く、山肌の緑を際立たせていた。続々と登ってきた登山者たちは、頂にある「3013 聖岳」の標識に抱きついたり、一緒に写真を撮ったり。お気に入りの場所を見つけ、汗を拭い、朝ご飯のおにぎりをほおばっていた。突き抜けるような青い空の下、全員に共通するのは満足げな笑顔だった。

 文・写真 蜘手美鶴

(2017年8月25日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
聖岳へは夏季はJR静岡駅から路線バス「南アルプス登山線」に乗り、静岡市葵区の畑薙(はたなぎ)第一ダム夏季臨時駐車場か畑薙第一ダムで下車。
聖沢登山口まで徒歩か、椹島(さわらじま)ロッヂ宿泊者は臨時駐車場からロッヂへ送迎バスがある。
翌日、ロッヂから登山口へ送ってもらえる。

◆問い合わせ
特種東海フォレスト 観光チーム=電0547(46)4717

おすすめ

椹島ロッヂ レストハウス

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聖平小屋 ウェルカムフルーツポンチ

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★椹島ロッヂ
南アルプス登山の拠点。
夏季は1泊2食9000円で大浴場あり。
レストハウスでは山の名前入り手ぬぐいやTシャツ、ソフトクリームや生ビールも販売。

★南アルプス赤石温泉「白樺荘」
畑薙第一ダムの手前にある。
日帰り入浴は中学生以上510円、小学生200円。
宿泊も可能。
単純硫黄泉で、神経痛や関節痛などに効能あり。電054(260)2021

★聖平小屋
聖岳麓にある。
1泊2食8500円。
宿泊客に無料で振る舞われる「ウェルカムフルーツポンチ」は小屋の名物。
地元の食材をふんだんに使った夕食はボリューム満点。
井川観光協会=電054(260)2377

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