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洞爺湖・ニセコ周辺

洞爺湖・ニセコ周辺 北海道 湿原の奥に神宿る沼

朝搾乳した牛乳で作るというジェラートが人気のレークヒル・ファーム。平日でも多くの客が訪れていた=北海道洞爺湖町で<br />

朝搾乳した牛乳で作るというジェラートが人気のレークヒル・ファーム。平日でも多くの客が訪れていた=北海道洞爺湖町で

 厚い雨雲に覆われ、見えないもどかしさが続いた。

 秀麗な姿から蝦夷(えぞ)富士と呼ばれる羊蹄山(1、898メートル)。その山容を見ることを大きな楽しみに、北海道の洞爺湖からニセコあたりを旅した。

 まずは洞爺湖西岸にあるサイロ展望台(洞爺湖町)へ。洞爺湖は約11万年前の巨大な噴火で誕生したカルデラ湖で、向こうに、有珠山、昭和新山、有珠新山などが望める。「洞爺湖有珠山ジオパーク」として世界ジオパークに認定された。2008年には洞爺湖サミットの舞台ともなった。

 雨の中でも、中国人観光客らが次々と大型バスで訪れ、湖を背に、声を上げながら、記念撮影にいそしんでいた。そう思えば、墨絵のような景観もなかなかの味わいがある。

 サイロ展望台から約1キロのところにある牧場の「レークヒル・ファーム」。72ヘクタールの広さに90頭の乳牛を放牧している。その牧場の牛乳を用いたジェラートショップが人気の観光スポットだ。ジェラート作りは本場イタリアのミラノで学んだという。ホワイトクリーム、バニラ、アカシソ、シロハナマメなど約20種類から2つを選ぶ「ダブル」は350円。

 入社2年目という小野哲也さん(24)が「ほとんどは朝搾乳した牛乳で作っています。ほかとは味が全然違います」と自信を見せた。窓の外の花畑を見ながらのジェラートは格別で、人気の理由もわかる。

 羊蹄山の山麓は伏流水が豊かで名水として知られる。山に降った雨や雪が数10年という長い年月をかけ、溶岩や火山灰の隙間でろ過されるため、その湧き水はカルシウムやマグネシウムがほどよく溶け込んでいる。

「カムイワッカ(神の水)」と呼ばれる水をくむことができる羊蹄山の湧き水=北海道真狩村で<br />

「カムイワッカ(神の水)」と呼ばれる水をくむことができる羊蹄山の湧き水=北海道真狩村で

 水くみ場の一つが真狩村の「羊蹄山の湧き水」。アイヌ語で「カムイワッカ(神の水)」と呼ばれる。勢いよく水が噴き出し、なぜか、水面から湯気が立っていた。蛇口があり、飲むと冷たくておいしい。水温がほぼ6度前後と一定していて、湯気は、外気との温度差から生じているようだ。水は無料で、観光客のほか、中にはポリ容器を用意して来ている人もいた。

 隣接して、この水を用いた評判の豆腐「名水とうふ」を販売する「湧水(わきみず)の里」がある。

 試食コーナーで、一番人気の「すごいとうふ」を口に含むと、しっかりと大豆の味がした。製造課長の秋山英二さんが「道産の大豆を丸ごと使っているので味が濃い。水の良さも大きいですね」と話す。

神仙沼に続く湿原に点在する池塘。木道伝いに散策を楽しむ=北海道共和町で<br />

神仙沼に続く湿原に点在する池塘。木道伝いに散策を楽しむ=北海道共和町で

 翌日、ニセコ山系で最も美しいといわれる神仙沼(共和町)に向かった。着くころに青空が広がったが、ここからは羊蹄山は見えない。駐車場から徒歩で向かう。

 ダケカンバやエゾマツの林を抜けて木道が延びる湿原に出る。植物が分解されずに堆積した泥炭による湿原で雨水のみで維持されている。泥炭の堆積は1年に約1ミリと貴重な湿原だ。

 標高760メートルで北国のため、高山植物が多い。訪れた時は、ユリ科のエゾカンゾウ(ゼンテイカ)が黄色い花を咲かせていた。湿原のところどころに池塘(ちとう)と呼ばれる池沼がある。

 その奥に神仙沼が静かに水をたたえていた。周囲500メートル、水深2メートル。神秘的なたたずまいから神や仙人がすむようだ、と名付けられたという。沼のほとりにいると、次第に心が洗われてくる思いがする。

 入り口の駐車場わきの売店「神仙沼レストハウス」を経営する石塚貴洋さん(44)は「6月からのミズバショウ、チングルマ、ミツガシワなどもいいが、一番の見どころは9月、10月ごろ。紅葉の木々が沼に映り、また湿原の草紅葉が黄金色に輝いて本当に美しいですよ」と言った。

 結局、羊蹄山を仰ぐことはできなかった。心残りなだけに、またいつか、今度は紅葉の季節に来ることにしよう。

 文・写真 朽木直文

(2017年9月1日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
洞爺湖町へは、新千歳空港からJRで南千歳駅で特急に乗り換え、洞爺駅まで約1時間30分。
北海道新幹線を利用する場合は、終点の新函館北斗駅で特急に乗り換え、洞爺駅まで約1時間40分。

◆問い合わせ
洞爺湖温泉観光協会=電0142(75)2446、共和町産業課商工観光係=電0135(73)2011

おすすめ

カフェ弁

カフェ弁
特急「ニセコ」

特急「ニセコ」

★カフェ弁
新函館北斗駅構内(改札外)の「BENTO CAFE 41°GARDEN」で販売。
道産のカニ、ウニなどを材料とした弁当や生ハムサラダ、ローストビーフなど、約30種類のメニュー(180~920円)から好みの2つまたは3つを選んで購入。
予約もできる。
電0138(83)7114

★ニセコビレッジ
ニセコ町東山温泉にある羊蹄山を望むリゾート施設。元プリンスホテルだったところをマレーシア資本が買収した。
ホテル「ヒルトンニセコビレッジ」=電0136(44)1111=のほかゴルフ場、スキー場、自然体験グラウンド「ピュア」などがある。
木から木へのつり橋やロープを渡るツリートレッキングなどを楽しめる。
電0136(44)2211

★特急「ニセコ」運転
JR北海道が5日までと7~12日の期間限定で札幌-ニセコ-函館間で特急「ニセコ」を運転。
1日1往復。新函館北斗からニセコ方面へのアクセスに便利(3時間弱)。
同社電話案内センター=電011(222)7111

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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