【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. シャンパーニュ地方
シャンパーニュ地方

シャンパーニュ地方 フランス 地下で熟成 極上の発泡

地下のカーブを見学しながら、シャンパンの作り方などの説明を聞くことができる=ランスのブーブ・クリコ社で

地下のカーブを見学しながら、シャンパンの作り方などの説明を聞くことができる=ランスのブーブ・クリコ社で

 薄い黄金色の液体の中で、細かな泡が光りながらまっすぐに立ち上る。グラス越しに泡のはじける音を聞くのも楽しい。おいしいシャンパンを求めてたどり着いたフランスの町、エペルネはランス市と並んで、メゾンと呼ばれるメーカーが集まるシャンパン産業の中心地だ。

 長さ約1キロの目抜き通り「アベニュー・ド・シャンパーニュ」には、名だたるメゾンの本社がひしめく。お城のように豪華な建物群を眺めるだけでもわくわくするが、見ものは地下にあった。

 「総延長130キロのカーブ(地下貯蔵庫)がある町」。ホテルにあったメゾン巡りの紹介文だ。町の面積は20数平方キロ。「ちょっと大げさですね」と言ってみたら、モエ・エ・シャンドン社のジリアンさんが流ちょうな日本語で「わが社だけで地下3層に27キロです。今から案内します」と返してきた。

 長い階段を下りるに従い、空気がひんやりとしていく。石灰層にトンネルを掘って網の目のように張り巡らせたカーブは、広大な迷路のようだ。白っぽい壁からは水がしみ出している。カーブの至るところ、整然と並べられた無数のボトルで埋め尽くされていた。

カーブ見学の後は、試飲で締めくくる。なみなみとつがれたシャンパンは美しい泡を立ち上らせた=エペルネのモエ・エ・シャンドン社で

カーブ見学の後は、試飲で締めくくる。なみなみとつがれたシャンパンは美しい泡を立ち上らせた=エペルネのモエ・エ・シャンドン社で

 この地方では、最低でも瓶で15カ月熟成させてから出荷するという厳しい規定がある。ビンテージ(収穫年)が表記されるものになると、その期間は3年以上に。エペルネだけで地下に眠る瓶の数は1億本を超すとか。湿度が高く、温度は通年で10度前後を保つカーブは、シャンパンの寝床として最適なんだそうだ。

 カーブの網目は、ランス市ではもっと巨大だという。最深部は地下40メートルというルイナール社では「2000年前にローマ人が建築資材として石を掘り出した遺構を使っています」と、立体模型も使った説明を受けた。ドイツと国境が近く、2度の世界大戦では爆撃で市街地の8割ががれきになった。当時、市民は地下に逃れて生活した。カーブには病院や学校などの場所を示したマークや落書きが今も残る。

 立て続けにメゾンを巡って試飲ばかりしていると、さすがに酔っぱらった。観光しつつ酔いをさますことにした。

 ランスは、さまざまな歴史を見届けてきた街でもある。英仏百年戦争さなかの1429年、オルレアンを解放したジャンヌ・ダルクが列席し、シャルル7世が戴冠した。1945年にドイツ軍が降伏文書に調印したのもランス。国鉄(SNCF)の駅近くには戦争終結の記念博物館がある。

国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産にも登録されているノートルダム大聖堂。内部にはシャンパンの製造過程を描いたステンドグラスもある。手前はジャンヌ・ダルク像=フランス・ランスで

国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産にも登録されているノートルダム大聖堂。内部にはシャンパンの製造過程を描いたステンドグラスもある。手前はジャンヌ・ダルク像=フランス・ランスで

 街の顔ともいえるゴシック建築の傑作、ノートルダム大聖堂。内部を彩るステンドグラスは圧巻だ。一番奥の祭壇を飾る鮮烈な青はシャガールの作。その手前にはブドウの収穫から瓶詰めなどのシャンパンの製造過程を描いたステンドグラスもあり、いかにもこの街らしい。

 高級シャンパンの名前にもなっているドン・ペリニヨン修道士が過ごしたオービレー村にも足を運んでみる。家々には、消防士や大工、ブドウ農家・・・と、その家の職業を絵で表すかわいらしい看板があふれていた。

 村を案内してくれたガイドのレミさんが、いたずらっぽい笑みを浮かべて飾り文字だけの看板を示す。「この地方の人たちの心意気ですよ」

 朝の祈りの文だった。「長生きできますように。あんまり仕事が忙しくありませんように。時々、愛がありますように。でも、シャンパンはいつも飲めますように」
 
 文・写真 坂口千夏

(2017年10月20日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
成田、羽田、関西国際空港からパリのシャルル・ドゴール空港まで、直行便で約12時間。
パリからランスへは高速鉄道(TGV)で45分、車利用の場合は約2時間。
エペルネへはランスから在来線(TER)の急行で30分ほど。

◆観光情報
フランス観光開発機構のホームページ(日本語)など。

おすすめ

チャペル・フジタ

チャペル・フジタ
ビスキュイ・ローズ

ビスキュイ・ローズ

★メゾン訪問
個人で訪問する場合は事前に電子メールで予約を。
試飲は有料のところがほとんど。
英語でも対応してくれる。
パリやランス発の有料ツアーもある。
カーブ内は夏でも上着が必要なほど肌寒い。
階段を上り下りするため歩きやすい靴で。

★チャペル・フジタ
パリ画壇で活躍した画家・藤田嗣治がシャンパン大手マム社の資金援助を受けて建てた礼拝堂。
内部の壁一面のフレスコ画は藤田自身が手掛けた。
日本語パンフレットもある。
入場料5ユーロ(ランス美術館と共通)。

★ビスキュイ・ローズ
バラ色のサクサクした感触のビスケット生地に砂糖が薄くかかったランスの伝統菓子。
シャンパンに軽くひたして食べる。
現在もフォシエ社が作り続けており、市内に店舗があるほか、予約制で市郊外の工場見学(有料)もできる。

歴史・文化の宿泊情報

一覧

    現在この情報はありません。

歴史・文化のツアー情報

一覧

    現在この情報はありません。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

旅コラム
国内
海外