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JR三江線

JR三江線 広島、島根県 沿線もてなし ほっこり

宇都井駅に到着した列車の乗客に旗を振って歓迎する周辺の人たち=島根県邑南町で

宇都井駅に到着した列車の乗客に旗を振って歓迎する周辺の人たち=島根県邑南町で

 山と川に囲まれた中をゆっくりと走るディーゼルカー。一日の利用客が数えるほどしかいない無人駅の数々。都会の日常生活とは懸け離れた旅ができるローカル線が、広島県三次(みよし)市から島根県江津(ごうつ)市まで、江の川沿いに走るJR三江(さんこう)線だ。沿線人口の減少などを理由に来年3月31日をもって廃止が決まり、なくなる前にぜひ乗りたいと、秋が深まる中国山地へ足を延ばした。

 列車は三次駅を出発すると川沿いを走り、1時間も過ぎると線路は広島、島根の県境を行ったり来たりする。いくつかのトンネルを抜けると、鉄道ファンには有名な宇都井(うづい)駅(島根県邑南(おおなん)町)に到着する。のどかな景色の中に突然現れたコンクリート製の高架駅は、地上から20メートルの高さにある。ホームまでは116段の階段を上らなければならないため、「天空の駅」と呼ばれている。

 下車すると眼下には、赤い石州瓦の家々が並び、山陰に来たことを実感できる。最近は廃止間近ということもあり、平日でも観光バスやマイカーで訪れる人が増え、列車が到着する午前11時すぎは一番のにぎわいを見せる。地元の人たちも列車が到着したときは「三江線ありがとう」「天空の駅ありがとう」と書かれた旗を振って、同線と訪れた乗客に感謝の気持ちを伝えている。

宇都井駅の旅の思い出が書き込まれた駅ノートを読み、感想を書き込む松島喜久恵さん。右奥は何冊もたまったノート

宇都井駅の旅の思い出が書き込まれた駅ノートを読み、感想を書き込む松島喜久恵さん。右奥は何冊もたまったノート

 駅の待合室には旅行客が思い出を書き込む「駅ノート」が25冊あった。ノートが文字で埋まるたびに補充してきた地元の松島喜久恵さん(92)は「三江線がなくなるのは悲しいけれど、少しでも多くの人に来てほしい」と語る。年を感じさせない軽い足取りでホームまでの階段を上りきり、書き込まれた内容に対して「宇都井の老人」の名前で返事を書いていた。この日、松島さんは広島から列車で来た姉妹と合流し、3駅先の潮駅近くにある潮(うしお)温泉(同県美郷(みさと)町)に出掛けていった。

潮温泉「大和荘」の部屋から見ることができる江の川沿いを走る三江線の列車=島根県美郷町で

潮温泉「大和荘」の部屋から見ることができる江の川沿いを走る三江線の列車=島根県美郷町で

 同温泉にある大和荘は、湯船や部屋からも、ゆったりと流れる江の川と三江線の線路を眺めることができる。潮の名前通り塩辛い茶色い湯とのどかな風景は日ごろの疲れを忘れさせてくれた。

 潮駅からさらに1時間弱走ると石見川本駅(同県川本町)に到着する。昼すぎに三次から到着する列車はこの駅が終着で、約1時間半後、同じ車両が江津駅行きとなるのだが、乗客はいったん、ここで下車する。待ち時間を少しでも楽しんでもらおうと、同町観光協会は駅前の空き店舗を利用した「おもてなしサロン」を開設。この列車が到着した前後の2時間だけ営業して、休憩所を無料で開放、地元の名産品、三江線グッズを販売している。

 観光協会の人も「廃線になっても、また来たいと思ってもらえるように案内しています」と話し、訪れた日は川本小学校の児童も集まり、町の特産品のエゴマの手作りレシピを乗客に配ったり、出発する列車を大勢で見送るなど、町総出で盛り上げようという熱気が伝わってきた。

 やがて列車の右側に寄り添うように流れてきた江の川が日本海に流れこむと終着の江津駅に到着し、108キロの三江線の旅は終わる。午前10時2分三次発の列車は、平日でも団体旅行客の乗車などがあり、混雑して座れなかったり、途中駅から乗車できなかったりしていたので注意が必要だ。

 廃線は惜しまれるが、沿線の人との心温まるふれあいを体験できてよかった。

  文・写真 中嶋大

(2017年11月24日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
広島県側の始発駅・三次駅へは、山陽新幹線・広島駅から芸備線に乗り換え。
石見川本駅へは広島駅から高速バス「石見銀山号」(1日2便)の利用が便利。
島根県側の始発駅・江津駅へは、県営名古屋空港から空路、出雲空港へ。
連絡バスで出雲市駅に向かい山陰線へ。

◆観光情報
沿線情報は「ぶらり三江線WEB」が詳しい。
そのほか島根県邑南町、美郷町、川本町などの各観光協会のホームページがある。

おすすめ

乗車記念切符

乗車記念切符

★エゴマ製品
石見川本駅前の「おもてなしサロン」では、香ばしい風味のエゴマ茶1袋(400円)や韓国風漬物エゴマ葉ヤンニョン漬け(みそ味、しょうゆ味があり各300円)など多数の特産品を販売。川本小学校の児童もお薦め。
サロンを訪れた人はもれなく名刺サイズの乗車記念切符がもらえる。

★潮温泉
大和荘は、宿泊7150円から(1泊2食付き)。
日帰り入浴も可能で420円。
電0855(82)2212

★ライトアップ
25、26日は宇都井駅周辺のライトアップと屋台村が出店する「INAKAイルミ@おおなん2017」がある。
午後4時から10時半まで。
電0855(88)0001

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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