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エルサレム旧市街

エルサレム旧市街 厳か 3つの聖地巡り

オリーブの丘から見下ろした旧市街。中央に岩のドームが見える

オリーブの丘から見下ろした旧市街。中央に岩のドームが見える

 乾いた空にそびえ立つ石造りの重厚な壁が、聖地をぐるっと取り囲む。世界遺産に登録された建造物が200以上も存在するエルサレム旧市街はユダヤ、キリスト、イスラムの3つの宗教が融合した場所。さまざまな肌の色や信仰、文化を持つ人々が交錯し、長い歴史を見守ってきた町並みが観光客を迎える。

 旧市街とつながるのは、8つの門だ。住民の排せつ物を運び出すために使われた「糞門(ふんもん)」から入城した。しばらく進んでいくと、角笛を吹くなどしたにぎやかな集団に遭遇。「バル・ミツワー」と呼ばれるユダヤ教徒の元服式だ。男子は13歳になると、成人とみなされる。大人たちに囲まれ、民族衣装の「キッパー」を頭に載せた男の子は周囲から視線を浴び、少し恥ずかしそうな表情を見せた。

 旧市街で最も有名な観光地と言えば、嘆きの壁だろうか。実は、ローマ軍によって破壊されたユダヤ教の神殿の外壁の一部。1948年のイスラエル建国後もヨルダンが支配し、ユダヤ人は近づくことができなかった。彼らが祈りをささげられるようになったのは、イスラエル軍が周辺を占領した67年の第3次中東戦争後だ。

多くのユダヤ教徒が祈りをささげる嘆きの壁。手前側が女性用、奥が男性用

多くのユダヤ教徒が祈りをささげる嘆きの壁。手前側が女性用、奥が男性用

 祈りの場所は男性用と女性用に区切られている。現地ガイドの佐々木宏二さん(48)は「異性のことは忘れ、祈りに専念するため」と明かす。壁に額を当てながら聖書を読む人も多く、どの顔も真剣そのものだ。

欧米からの観光客でにぎわう岩のドーム周辺=いずれもエルサレム旧市街とその周辺で

欧米からの観光客でにぎわう岩のドーム周辺=いずれもエルサレム旧市街とその周辺で

 そして、壁の内側にある「神殿の丘」(イスラム名・ハラム・アッシャリーフ)へ。目玉は、預言者ムハンマドが昇天したとのいわれがあり、金色に輝く円形屋根が特徴的なイスラム教の神殿「岩のドーム」。現在はイスラム教徒以外は入れないが、緑、青などのタイルを張り合わせた色鮮やかな外観が、圧倒的な存在感を示していた。

 「ハロー、ハロー」。男性の野太い声が突然、周囲に響き渡った。声を上げたのは、この区域を管理するイスラム教団体の男性。肩を寄せ合いながら、記念撮影をしようとしていた白人カップルに、離れるように指示したのだ。公衆の面前で男女がむつみ合うことを嫌うイスラム教徒の視線は厳しい。

 キリスト教関連の施設の多いエリアも歩いた。イエス・キリストが死刑を宣告された後、十字架にかけられたゴルゴタの丘に立つとされる「聖墳墓(せいふんぼ)教会」が見どころ。薄暗い内部にイエスの墓や、亡きがらに香油を塗ったと伝わる石板があり、幻想的な雰囲気の中、信者たちが静かに指を重ねていた。

 旧市街には、衣類や土産物などを扱う店が連なる区域もあるほか、ここで生活する大勢の住民らも行き交う。だが各宗教ゆかりの施設が数多く点在するだけに、近代的な建築物も多い新市街と比べ、どこか厳かな空気を漂わせている。

 嘆きの壁などを見下ろすビルの屋上に、地方の部隊に所属する若い兵士たちが集結。小銃を肩に掛けながら、女性将校からエルサレムとユダヤ人の歴史を学んでいた。男性兵士の一人は「ここで自分たちのアイデンティティーを学ぶことが、私たちにとってとても重要なんだ」と教えてくれた。2000年にも及ぶ流浪の末、この地に戻ってきたユダヤ人たちにとって、旧市街は自らの歴史を確かめ、未来の繁栄を誓う場所となっている。

  文・写真 安田功

(2017年12月1日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
日本から直行便はなく、韓国や欧州を経由し、空路で入国するのが一般的。
所要時間は15~20時間程度。
テルアビブ近郊のベングリオン国際空港からエルサレムまでは乗り合いタクシーの利用が便利。

◆出入国・治安
観光目的であればビザは不要。
ただ入国時に半年以上のパスポートの残存期間が必要だ。
出国時のセキュリティーチェックが厳しく、出発3時間前の空港到着が求められる。
外務省は渡航に際し「十分注意してください」と呼び掛けている。

おすすめ

現地料理

現地料理
死海

死海

★グルメ
日本や欧州の品を味わえるが、現地料理は野菜を中心とした物が多い。
ユダヤ教の規定で豚やダチョウが禁じられ、貝やタコなども食べない。
乳製品と肉類を一緒に食べず、チーズバーガーはない。

★ベツレヘム
エルサレムから南へ10キロに位置するヨルダン川西岸にある。
イエスが生まれたとされる聖誕教会のほか、キリスト教各派の教会が集まる。

★死海
世界で最も低い海抜マイナス約400メートルにある塩水湖。
塩分濃度が非常に高いため、浮遊体験ができ、リゾートホテルが立ち並ぶ。

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