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アブダビ

アブダビ アラブ首長国連邦 砂漠の街 間近に名画

木漏れ日のように光が差し込むルーブル・アブダビのドーム下の広場。ヤシの木をイメージしたという

木漏れ日のように光が差し込むルーブル・アブダビのドーム下の広場。ヤシの木をイメージしたという

 屋根越しに幾筋もの陽光が、木漏れ日のように差し込む。11月でも気温32度。日本なら真夏日というところだが、不快さはない。半屋外の空間を、海風が吹き抜けていく。

 アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビのサディヤット島。パリのルーブル美術館初の海外別館としてオープンしたばかりの「ルーブル・アブダビ」を訪れた。シンボルである直径180メートルのドームは、オアシスを覆う巨大なヤシがモチーフ。穴の開いた幾何学模様の屋根材が幾重にも重なり、太陽の動きとともに光が変化する仕組みだ。

 収蔵作品は約600点。冷房の効いた展示室には、ダビンチの「ミラノの貴婦人の肖像」、マネの「笛を吹く少年」など、本家ルーブルをはじめフランス各地の美術館から貸し出された絵画や彫刻も並ぶ。撮影は自由で、スマートフォンで「自撮り」に興じる人も多い。せっかくなので、私もゴッホの自画像とツーショットで納まってみた。

 展示は先史時代から現代まで12の時代別。人類の歩みを俯瞰(ふかん)しながらの鑑賞は、さながら美術史博物館のよう。エジプト出身の同館職員、マハムード・ヤコブさん(30)は「国や宗教、文化が違っても、同時代の人間が生み出すものはどこか似ています。人類の共通性に気が付いてもらえたら」と狙いを話す。民族や宗教の「壁」ばかり強調される、昨今の風潮へのメッセージなのだろうか。

ゴッホの自画像の前でポーズをとり写真に納まる女性

ゴッホの自画像の前でポーズをとり写真に納まる女性

 ルーブルのあるサディヤット島は、アブダビで今、最も注目される開発エリア。今後も海洋博物館、グッゲンハイム美術館と文化施設のオープンがめじろ押しだ。市内では高級リゾートホテルの建設も相次ぐ。日本ではドバイの陰に隠れがちだったアブダビだが、近年は存在感を着実に増しつつある。

日没後、ライトアップされるシェイク・ザイド・グランドモスク。シルエットが夕闇に浮かび上がった=いずれもアラブ首長国連邦・アブダビで

日没後、ライトアップされるシェイク・ザイド・グランドモスク。シルエットが夕闇に浮かび上がった=いずれもアラブ首長国連邦・アブダビで

 街では、赤、緑、白、黒の国旗色で彩られた「1971」という看板が目に付く。UAE建国の年というから、国としては若い。今でこそオイルマネーで潤うが、1950年代ごろまでは砂漠に覆われた貧しい地だったらしい。それを有数の産油国として急発展させたのが、故ザイド・ビン・スルタン・ナハヤン初代大統領。死後も国民の尊敬を集めている。

 ザイド氏は国を富ませるとともに、砂ばかりの首都に緑を植えた。道路沿いにはナツメヤシが並び、広大なマングローブの森もある。「砂漠の街に豊かな緑があることに注目してください」と、ガイドを務めてくれた高橋由希子さん(48)。彼女が住むドバイにも、これほどの緑はないという。砂漠の民にとって緑は豊かさの象徴。アブダビは特別な街なのだ。

 「建国の父」の名を冠したシェイク・ザイド・グランドモスクには、訪れる人々が後を絶たない。世界中から集めた大理石でつくった白亜の巨大モスクには1000本もの柱が整然と並び、本堂には世界最大の手織りカーペット。直径10メートル、高さ15メートルのシャンデリアは圧巻だ。

 突然、拡声器から礼拝時間を知らせる「アザーン」の呼び声が響く。やがて日が落ち、ライトアップされたモスクが夕闇に浮かんだ。幻想的な光景に息をのむ。イスラム圏にいることをあらためて実感した。

 道端に礼拝用マットを敷き、祈り始めるタクシー運転手もいた。欧米文化が浸透し、立派な高層ビルや美術館が立ち並ぶ一方で、素朴に息づく信仰心。短い旅だったが、変わりゆく国の変わらぬ横顔を、少しだけのぞけた気がした。

 文・写真 渡辺武

(2017年12月15日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
エティハド航空が成田から直行便を毎日、中部から北京経由で週5便運航している。
所要時間は12~13時間。
予約センター=電03(3298)4719

◆観光情報
アブダビ文化観光局の日本語サイト「ビジットアブダビ」が充実している。

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金箔入りカプチーノ

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★ルーブル・アブダビ
フランスの建築家ジャン・ヌーベル氏が設計した。
入場料は60ディルハム(約1800円)。
開館時間は午前10時~午後8時(木、金曜は午後10時まで)。
月曜休館。

★デザートサファリ
四輪駆動車でアブダビ近郊の砂漠を走行する。
激しい砂煙を上げながらのアップダウンはスリル満点。
ツアーの時間帯によっては砂漠に沈む夕日を見ることができる。

★エミレーツパレス
「7つ星」の超高級ホテル。
内装は金やクリスタルをちりばめ豪華絢爛(けんらん)。
宿泊者以外も一部を見学できるが、ロビーのカフェで予約が必要となる。
金箔(きんぱく)入りカプチーノが人気。

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