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朝倉、日田、宇佐市

朝倉、日田、宇佐市 福岡、大分県 力強い水車 復興の支え

200年以上を経て今も現役。7月の九州北部豪雨にめげず、住民の手で稼働を再開した三連水車=福岡県朝倉市で

200年以上を経て今も現役。7月の九州北部豪雨にめげず、住民の手で稼働を再開した三連水車=福岡県朝倉市で

 まだ土砂の残る田んぼの先に見たいと思っていた三連水車があった。福岡県朝倉市の堀川用水。3基の水車が連なる。今年7月5日の九州北部豪雨で被災し、周囲の水田とともに土砂や流木で埋もれたニュース映像を見て心配していた。

 「水車自体は壊れておらず、みなで手作業で土砂などを取り除いて8月2日には通水を再開した」。案内してくれた、水車を管理する山田堰土地改良区理事長の徳永哲也さん(70)が言った。通水を急いだのは、高台には被害を受けなかった水田があったためだ。「農業をする者にとって、水不足による立ち枯れほど悔しいことはない」

 約230年前にできた三連水車は今も現役である。最も大きい水車の直径は約4.8メートルある。さらにさかのぼる今から約350年前の江戸時代初め、干ばつをきっかけに筑後川から取水する堀川用水を開削した。取水のために整備されたのが上流にある山田堰。そして用水からサイホンの原理で高所に送水する目的で設けられたのが揚水水車だ。堀川用水には三連水車のほかに二連水車が2基、計7基の水車が現存し、約35ヘクタールの水田を潤す。

 用水と水車は国の史跡に指定され、水車は6月中旬の田植えから10月中旬の稲刈りの時期まで稼働する。

 自然の力を用いた水利施設は「朝倉モデル」と呼ばれ、アフガニスタンの耕地開発にも導入された。約1万6000ヘクタールの荒野を農地に変えたという。「すばらしい先人たちの知恵を農業遺産として後世に残したい」と徳永さんは力を込める。

九州北部豪雨の後、小倉経由で運行を再開した特急「ゆふいんの森」=大分県由布市の由布院駅で

九州北部豪雨の後、小倉経由で運行を再開した特急「ゆふいんの森」=大分県由布市の由布院駅で

 県境を越えて大分県日田市へ。朝倉市同様、大きな豪雨被害を受けた。市内を流れる花月川では久留米と大分を結ぶJR久大線の鉄橋も流され、住民や観光客の足に大きな影響が出た。現在、JRの代行バスが運行されている。

 重要伝統的建造物群の古い町並みで知られる日田市豆田町は被災の跡はあまり見られないものの、市観光協会の藤川康太郎さん(34)が「被災のイメージが強かったのか、宿泊客などが半減して、まだ元に戻っていない」と嘆いた。

 鉄橋の復旧は来年7月の予定だが、JR九州はこの区間を走る特急「ゆふいんの森」(博多-由布院・大分・別府)の運行を今年7月15日に再開した。小倉(北九州市)を経由する迂回(うかい)ルートを取るため、それまでの約2時間が約5時間となったが、「復興の足がかりにしたい」(同社)と運行を早めた。由布院から大分まで同特急に乗った。車内には長時間の乗客のために新たに図書コーナーも設けられていた。

壮麗な檜皮葺丹塗の宇佐神宮の社殿(右手後方に勅使門)=大分県宇佐市で

壮麗な檜皮葺丹塗の宇佐神宮の社殿(右手後方に勅使門)=大分県宇佐市で

 大分県にせっかく来たので、宇佐市の宇佐神宮へ向かう。全国約4万社といわれる八幡社の総本宮。応神天皇をまつるために建てられた。奈良時代、皇位に就こうとした弓削道鏡の野望を覆した、和気清麻呂へのご神託でも名高い。

 「神域は東京ドーム約130個分、神殿、参道が整備されたエリアも約4個分と広い」。市観光協会事務局長の小野辰浩さん(46)が説明した。

 参道を進み、イチイガシの森の中、石段を上って西大門から上宮に入る。西大門や勅使門など檜皮葺丹塗(ひわだぶきたんぬり)の社殿は壮麗そのもの。小野さんに教わり、二拝四拍手一拝で参拝した。四拍手は出雲大社と同じだ。残念ながら、八幡造(はちまんづくり)といわれる3棟からなる国宝の本殿は通常は拝観できない。

 小野さんによれば、清麻呂がご神託を受けた所は、この本殿でなく、表参道を東に入った大尾(おお)山にある、現在の大尾神社の地だったという。

 神様を巻き込んだ古代の大政変劇の舞台。今は、子ども連れの参拝者らもいて、神殿に向かって小さな手を合わせていた。

 文・写真 朽木直文

(2017年12月22日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
朝倉市の三連水車へは、JR博多駅から鹿児島線二日市駅下車。
西鉄バスに乗り換えて約1時間、「菱野」で下車し、徒歩5分。
日田駅へはJR大分駅から特急で約1時間30分。
運休中のJR久大線日田-光岡(てるおか)駅(日田市)間はJR代行バスが運行。

◆問い合わせ
あさくら観光協会=電0946(24)6758、日田市観光協会=電0973(22)2036、宇佐市観光協会=電0978(37)0202

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富貴寺の大堂

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電0973(52)3700

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拝観料300円。文化財保存のため悪天候の場合は公開しない。
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★旅庵(りょあん)「蕗薹(ふきのとう)」
富貴寺に隣接してあり、土地の住人による運営で宿泊(8部屋)と食事処(どころ)。
そばは河野順祐副住職(36)らが手打ちする。
手打ちそば付きのおもてなし御膳は2510円。
電0978(26)2668

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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