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岩手山、八幡平

岩手山、八幡平 岩手県 豊かな地熱の恵み実感

日本初の商用地熱発電を始めた松川地熱発電所。谷あいから水蒸気が噴き出す

日本初の商用地熱発電を始めた松川地熱発電所。谷あいから水蒸気が噴き出す

 岩手県の中央部にそびえる巨大火山・岩手山。数10万年にわたって、巨大なエネルギーを地下から地上へと運んでいる。主峰は2.038メートルに達し、広大な裾野には温泉あり、牧場あり、火山の恵みを実感できるスポットがたくさんある。

 マグマの熱を電力に変えよう-。日本で初めてそんな夢を実現したのが、岩手山西麓にある松川地熱発電所(岩手県八幡平(はちまんたい)市)だ。深さ1000メートルもの井戸を掘って、高温の水蒸気を取り出し、タービンを回す。渓谷にはもうもうと蒸気が立ち込め、大きな冷却塔が、発電所であることを示している。

 ここに発電所ができたのは半ば偶然だ。当時の松尾村(現八幡平市)が、硫黄を産出していた松尾鉱山の衰退に代わる「飯の種」として、温泉掘削を試みていた。ところが温泉ではなく、強烈な水蒸気が噴出し、日本重化学工業の前身の会社が地熱発電に乗り出した。「社長の号令で『やってみよう』となった。チャレンジ精神です」と、同社地熱グループリーダーの高橋昌宏さん(58)は言う。

 1966年に発電を始めたものの、同社は経営が傾き、発電所を東北電力系の会社に譲渡し、地熱発電から撤退した。だが最近再参入を決め、八幡平市の別の場所で新規の発電所を建設している。「どうしてリスクの高い地熱事業に?」と尋ねると、「地熱が好きだから」と高橋さん。発電所の展示館は見学自由。映像で、山あり谷ありの歴史を知ることができる。

地熱と馬とキノコ栽培を結び付けた船橋慶延さん(右端)友紀恵さん(馬上)夫妻ら=いずれも岩手県八幡平市で

地熱と馬とキノコ栽培を結び付けた船橋慶延さん(右端)友紀恵さん(馬上)夫妻ら=いずれも岩手県八幡平市で

 同じ八幡平市に、地熱を利用し、走れなくなった競走馬を保護している変わった農園があると聞いて、地元の人に案内してもらった。

 「ジオファーム八幡平」といい、経営者は大阪市出身の船橋慶延さん(35)と、神奈川県小田原市出身の友紀恵さん(36)夫妻。馬ふんを堆肥にして、月産5~6トンのマッシュルームを栽培し、各地に出荷している。地熱は隣の温浴施設から温水の形で供給され、馬ふんの発酵に利用する。「堆肥舎が臭くないでしょう。牧草しか食べていないからです」と慶延さん。

 馬は14頭いて、思い思いに草をはんだり、駆け回ったりしている。「中央競馬で活躍した馬もいます。馬は行きどころがないと、食肉用として処分される。ここでのんびりと過ごすことができれば…」。馬がいる里山景観を復活させ、観光に結び付ける計画も抱いている。

森の中の秘湯「仙女の湯」も火山の恵みの一つ=岩手県雫石町で

森の中の秘湯「仙女の湯」も火山の恵みの一つ=岩手県雫石町で

 山麓には野趣あふれる湯が多い。網張温泉(岩手県雫石町)の「仙女の湯」もその一つ。岩手山南西麓にある「休暇村岩手網張温泉」の入り口から徒歩5分の森の中にあり、手軽に秘湯気分が味わえる。

 1960年代に宿泊施設を新築するとき、工事関係者が源泉付近から流れ出す渓流に滝を発見。「ここに風呂を造ったら」と思いついたという。何度か大水で流され、今の位置に落ち着いた。混浴で、タオル巻きの入浴OK。管理する休暇村によれば「近頃の女性は堂々としています。男性の方が遠慮がち」とのことだ。

 網張温泉自体は、飛鳥時代開湯と伝えられるほど歴史が古い。湯には硫黄分が多く、火山から流れ出たことを濃厚に感じられる。

 火山は時に、猛然と暴れることがあるが、普段はどっしりと構え、存分に恵みを与える。山麓の人々が山と共生し、楽しむ知恵にあふれていることを知る旅になった。

 文・写真 吉田薫

(2017年9月29日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
東北新幹線盛岡駅が起点となる。
松川地熱発電所へは、松川温泉行きバスで2時間、終点下車すぐ。
10月22日まで「八幡平自然散策バス」がある。網張温泉へはバスで1時間。
休暇村の送迎バスもある。

◆問い合わせ
八幡平市観光協会=電0195(78)3500。
雫石町役場観光商工課=電019(692)6407。
休暇村岩手網張温泉=電019(693)2211

おすすめ

焼走(やけはし)り熔岩(ようがん)流

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しゃぶしゃぶ定食

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★焼走(やけはし)り熔岩(ようがん)流
江戸時代半ばの1732年、岩手山の噴火で流れた溶岩が、冷えて固まってできた。
国の特別天然記念物。
扇状に広がる黒い岩石帯は、長さ3キロ、幅1キロあり、散策路から雄大な岩手山が望める。
噴火から300年近くたってもコケ類以外の植物がほとんど見られない。
問い合わせは八幡平市観光協会へ。

★杜仲(とちゅう)茶ポーク
八幡平市の特産。名の通り杜仲茶を食べさせて育てた豚。
臭みがなく、あっさりした味。
しゃぶしゃぶにすると柔らかさが際立ち、とろけるようにおいしい。
地元の食肉業者直営の「八幡平ハイツ」では「しゃぶしゃぶ定食」を1100円で味わえる。
電0195(78)2121

★小岩井農場
岩手山の南に広がる雫石町の荒野に植林、開墾して造られた大農場。
国の重要文化財に指定された建物が多数ある。
原乳に近いしぼりたての牛乳や特製チーズなどが美味。
電019(692)4321

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