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タガズート

タガズート モロッコ 国を超え波と一つに

海沿いのタガズートはサーフタウンとして名高く、街並みは白色と青色に統一されている

海沿いのタガズートはサーフタウンとして名高く、街並みは白色と青色に統一されている

 航空機の窓外、赤茶けた大地を煌々(こうこう)と照らす月の巨大さに度肝を抜かれ、アフリカ初上陸の感慨を強くした。空港のあちこちに、サーフボードを持つ人がいる。欧州に寒波をもたらす大西洋の爆弾低気圧がモロッコにうねりを運ぶ。呼応するように、欧州サーファーも小さなサーフタウン、タガズートに集う。

 タガズート南郊の集落タンラートにある宿「サーフ・スター・モロッコ」のキャンプに参加した。いわゆる合宿だ。寝起きや食事を共にし、毎日、海に通う。イスラムと欧州文化の融合を思わせる独特の図柄のタイルが敷き詰められた廊下。黒檀(こくたん)に金色の不思議な模様が描かれたインテリア。「一体どんな波だろう」。2人のルームメートが寝入った後も、期待と緊張でしばらく眠れなかった。

 午前6時、集落中にけたたましく流れる礼拝呼び掛けのアザーンで跳び起きた。強い日差しが照り付け、気温は20度を超えている。ビュッフェ形式の朝食を食べ、昼食の弁当を詰めて自分の名前を書く。サーフスクールは初級と中級があり、上級者はスクールで習うのではなくガイドと海に入る。

 約20人を乗せた中級クラスのミニバスは土ぼこりを上げながら、四角い家々が並ぶ集落を抜け、ポイントに到着した。緑青色の海。砂漠のような細かい土色の砂。紺碧(こんぺき)の空。敬虔(けいけん)なイスラム教国だが、ビーチだけは女性のビキニ姿も許可され、大勢が日光の恩恵を浴びている。

モロッコの波に乗る記者(撮影してもらった)。大西洋の低気圧がうねりを運ぶ冬がベストシーズン

モロッコの波に乗る記者(撮影してもらった)。大西洋の低気圧がうねりを運ぶ冬がベストシーズン

 インストラクターは地元や欧州出身の熟練サーファー。彼らの励ましに鼓舞され、モロッコの波に挑んだ。波のトップで一瞬で立ち上がり、うねりの表面をボードの端で切るように斜めに下りるスピード感と爽快感は言葉に尽くせない。背丈より高い青い壁を右手にボードを走らせると、周囲のサーファーやインストラクターが「ヒュー」と大きな歓声を送ってくれた。

 多い時、参加者は60人を超えていた。英国、米国、ロシア、ポルトガル、アイルランド、スウェーデン、ドイツ、オランダ、デンマークなど多彩。毎夜、モロッコ料理を囲んだ後、インストラクターが食堂の大画面に、参加者のライディング写真を映し出し解説する。自分の写真が褒められ、拍手をもらった時は天にも昇る気分だった。キャンプは真剣そのものだが、決して強制はされなかった。ビーチで読書をしたり、ヨガやマッサージ、スーク(市場)に出掛けたりと、サーフィン以外の楽しみ方も自由に選択できた。

時折、ラクダが往来するモロッコのビーチ=いずれもモロッコ・タガズートで

時折、ラクダが往来するモロッコのビーチ=いずれもモロッコ・タガズートで

 テレビはなく、自室にネット環境もない中、夕食後はみな自然と食堂やテラスに集った。付近に酒を売る店がなく、大半の人はしらふ。各国の自慢話や世界中の旅行談に花が咲き、時には英国の欧州連合(EU)離脱や移民問題まで議論した。テラスでは、火を囲み、地元スタッフが思いつくままにギターや太鼓で奏でる情熱的なモロッコ音楽に手拍子を合わせた。金曜の夜は市街地に繰り出し、ラクダを食べ、シーシャ(水たばこ)の煙が揺れるバーで踊った。

 海の中では誰もが平等だった。波の頂点から落下し、水中で回転し、ボードが当たってけがもした。失敗を繰り返しながら、沖で波待ちをしていると、次第に、自分の職業、人種、性別までもが意識から遠ざかり、何者でもない感覚に陥る。自然を相手にジタバタする無力な生身の人間。各国のサーファーもきっと、同じ心境だったに違いない。肌の色や言語の違いが、いかにちっぽけなものか、モロッコのサーフタウンに来れば知ることができる。

 文・写真 沢田千秋

(2018年2月23日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
ロンドン・ガトウィック空港やパリ・オルリ空港からアガディール空港まで約3時間半。
日本からの直行便はない。
空港からは宿が手配したタクシーで約50分。

◆観光情報
タガズート周辺のサーフキャンプは、インターネットサイト「BookSurfCamps.com」で検索、予約できる。

おすすめ

バブーシュ

バブーシュ
タジン鍋

タジン鍋

★バブーシュ
伝統の履物バブーシュは、アガディールの市場で25~30モロッコ・ディルハム(約300~360円)で買える。
羊やラクダの革を使用し、かかと部分が内側に倒れているのが特徴。
色やデザインの種類が豊富で、土産として人気が高い。

★タジン鍋
北アフリカの定番料理。
極力、水を使わなくて済むよう、野菜の水分を外に逃さないため、とんがり帽子のようなふたが考案された。
大きくカットした野菜、鶏やラクダの肉などを香辛料と一緒に煮込むと、ナイフがいらないほどやわらかく美味。

★ミントティー
モロッコでお茶といえばミントティー。
海ではビーチの売り子が、10ディルハム(約120円)で入れてくれる。
高い場所からつぐのがおいしさの秘訣(ひけつ)。
さわやかなミントの香りと砂糖、蜂蜜の甘さが融合し、飲むたびに癒やされる。

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