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黒羽・川治

黒羽・川治 栃木県 芭蕉ゆかりの里 散策

臨済宗の修行道場・雲巌寺は、芭蕉の師・仏頂ゆかりの寺でもある

臨済宗の修行道場・雲巌寺は、芭蕉の師・仏頂ゆかりの寺でもある

 「奥の細道」で知られる俳人・松尾芭蕉。半年近い東北、北陸の旅で、最も長く滞在したのが黒羽(栃木県大田原市)だった。小さな町に2週間もいたのはなぜだろう。そんな疑問を心にいだきながら、春風が快い栃木路を旅した。

 黒羽は、鉄道の東北線や国道4号から外れた静かな集落だ。しかし江戸時代は1万8000石の城下町であり、那珂川の水運で栄えた商業の町でもあった。

 小高い黒羽城跡の麓に、展示施設「黒羽芭蕉の館」がある。「ふるさとを知る会」会長の直箟(すぐの)浩子さん(76)に話をうかがった。

 「芭蕉は、俳句を通じた知人である家老の屋敷の離れに滞在していました。長くとどまった理由は『おもてなし』だったのでは。地元に残る言い伝えでは、こんにゃくが好物と聞いて、こんにゃく料理を出して喜ばれたそうです」

 一方、芭蕉と、随行の曽良(そら)は、幕府の隠密で、仙台・伊達藩の様子を探るのが旅の目的だという説を、多くの人が唱える。

 同館の新井敦史学芸員は「黒羽では、地元の人々も交えて連句の会を催しています。芭蕉にとっては、俳諧の道を深めるための旅だったでしょう。ただ曽良は、何らかの任務を帯びていた可能性があります」と話す。

竹林の中に句碑や芭蕉ゆかりの地が点在する「芭蕉の道」=いずれも栃木県大田原市で

竹林の中に句碑や芭蕉ゆかりの地が点在する「芭蕉の道」=いずれも栃木県大田原市で

 「芭蕉の館」の前には、芭蕉と曽良の像が立つ。館の前から出発し、古刹大雄(こさつだいおう)寺まで続く「芭蕉の道」は、800メートルほど。竹林や杉木立の中を上り下りする。芭蕉が滞在した家老の屋敷跡もある。300年余り前、芭蕉が歩いたころの気分を味わうことができる。

 芭蕉はさらに、約10キロ先にある雲巌(うんがん)寺に、日帰りで往復した。禅の師であった仏頂(ぶっちょう)和尚が、ここで修行したからだ。今も臨済宗を代表する修行道場であり、参拝は自由だが観光対応はしていない。周辺に商店や土産物店はなく、俗世間と一線を画す。朱色のアーチ橋と巨大な山門が、厳かな雰囲気をかもしだしている。

 芭蕉は俳句を、言葉遊びから芸術へと変容させ、奥の細道はその頂点に立つ作品だ。旅行記の中に虚構が織り交ぜられ、その謎めいた部分も魅力の一つだと思った。

ダム本体に取り付けられた通路を歩く。ダムの下から60メートルの高さがある=栃木県日光市の川治ダムで

ダム本体に取り付けられた通路を歩く。ダムの下から60メートルの高さがある=栃木県日光市の川治ダムで

 この日は鬼怒川温泉に泊まり、翌朝、会津西街道沿いに、北へ向かう。平家の落人伝説もあるという深い山中だ。川治温泉を出発点に、ダムツアーが出ていると聞いて参加した。

 ハイライトは、周辺で最も大きい川治ダムの本体外側にへばりつくように取り付けられている管理通路「キャットウォーク」歩きだ。60メートル下の川面が、足場の鉄格子の間からキラリと光る。ゾッとする感覚が、爪先から脳天まで伝わる。外にいたのは往復10分ほどだろうか。もどってきて、ダムの上に出るエレベーターに乗ったときは、心底ほっとした。

 ガイドの坂内剛至さん(34)は「ダムのスケールを感じてほしいですね。上から見るよりも、下から見上げると大きさが実感できます」と話す。最近はダムサイト事務所などでもらえるダムカードが人気で、それを目当てに来る人が増えているという。

 黒羽も川治も、あまり知られていない穴場。栃木県にはまだまだ興味深いスポットがたくさんありそうだ。

 文・写真 吉田薫

(2018年4月20日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
黒羽へは、東北新幹線・那須塩原駅からバスで約35分、大雄寺入口下車。
雲巌寺にもバス便がある。
ダムツアーは、4月から6月の土・日曜午前に川治温泉を出発。
川治、五十里、小網の3ダムを巡る。
料金大人3000円。
問い合わせはネイチャープラネット=電0288(78)1177

◆問い合わせ
黒羽芭蕉の館=電0287(54)4151。
大田原市観光協会=電0287(54)1110。
日光市観光協会=電0288(22)1525

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大正天皇ご静養のために建てられた旧御用邸を栃木県が整備し、公開している。
江戸時代の大名屋敷を移築し、明治、大正時代の建築とつなげた全106室の広大な建物。
頂点を極めたしつらえがすばらしい。
国指定重要文化財。
東武日光駅などからバスがある。
入場料大人510円。
電0288(53)6767

★なすべん
那須の食材を取り合わせたランチプレート。
9尾のキツネの伝説にちなんで、9つの料理で構成した。
道の駅・那須高原友愛の森なすとらん=電0287(78)1219=など6カ所で食べられる。

★日光天然の氷
日光山中から流れ出た清水を、日陰の池に導いて作る。
代々、徳次郎の名で作られてきたこだわりの氷を、4代目徳次郎こと山本雄一郎さんが継承し、東京をはじめ各地に出荷している。
硬くて溶けにくい。
夏には地元でも天然氷のかき氷を出す店がある。
電0288(54)3355

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