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滑床渓谷

滑床渓谷 愛媛県 スリル満点 天然滑り台

淵に向かって後ろ向きに滑り降りる参加者ら

淵に向かって後ろ向きに滑り降りる参加者ら

 大自然の中で非日常的な体験がしたい。そう思い立ち、キャニオニングのできる渓谷を探した。キャニオニングは、自分の体一つで渓流を滑り降りたり、滝つぼに飛び込んだりするフランス発祥のアウトドアスポーツだ。日本でも、3、40代の女性を中心に人気を集めている。愛媛県宇和島市と松野町にまたがる滑床(なめとこ)渓谷という国内有数のスポットを訪ね、ツアーに参加した。

 四万十川の支流、目黒川の源流にあたる同渓谷。既に梅雨入りしていたが、この日は時折、晴れ間が広がり、気温は25度前後だった。ウエットスーツやライフジャケット、ヘルメットなどを装着し、他の参加者3人と車に乗り込み出発。車を降りると渓流に沿った遊歩道をたどり上流に向かう。まずは「出合滑(であいなめ)」と呼ばれる地点に到着。なだらかな岩の上を水がさらさらと流れる。ツアーを運営するフォレストキャニオンのスタッフ石川雄一さん(34)が「ここは2、300メートル続く一枚岩なんです」と説明すると、参加者からは驚きの声が漏れた。

 渓流に足を入れると、靴やウエットスーツの内側に水が流れ込み冷たい。石川さんのお手本を見て、あおむけの状態で10メートルほど滑り降りる。ごつごつしているかと思いきや、こすれる痛みは全くない。流れに身を任せていると淵に突っ込んだ。数分で体回りの水が体温で温められ、寒さは吹っ飛んだ。参加者からは歓声が上がり、自然と笑顔になる。夢中になってうつぶせや後ろ向きなど、いろいろな体勢を試した。

 滑床渓谷は、名前の通り岩肌がつるりとして滑らか。長い年月をかけ、流水が花こう岩の表面を削った曲線が美しい。これが多彩な天然ウオータースライダーをつくり出す。キャニオニングの絶好の地たるゆえんだ。滑らかな岩が延々と続く地形は全国的にも珍しく、国内外から多くの人が訪れる。

 キャニオニングの醍醐味(だいごみ)は滑るだけではない。レスキュー隊を連想させる懸垂下降やターザンロープを使った川への飛び込みなど、楽しみ方はさまざま。初めて参加した松野町の地域おこし協力隊、真庭伸悟さん(22)は「岩場を登ったり、思い切り水にぬれたり、普段できないことをやれるスリルが面白い」と満足げに話した。

雪輪の滝を勢いよく滑り降りる参加者ら

雪輪の滝を勢いよく滑り降りる参加者ら

 ツアーも終盤に差しかかり一番の目玉、雪輪の滝へ。緩やかな5段の滝(全長約300メートル)で、日本の滝百選に登録されている。流れ落ちる水紋が雪の輪のように見えるためその名がついた。下から見えるのは最後の60メートルほど。安全性を考慮し、滑るのは40メートルほどの高さからだが、それでも十分な迫力だ。

 ロープを伝って登ると高度感がある。5人で連なり一気に滑り降りた。斜度は30度ほどだろうか。ぐんぐん加速し、「うわー」という歓声を上げながら滝つぼへ。痛みを伴うほどの水圧で脚が押された。4時間ほどのツアーのクライマックスは劇的だった。


岩の隙間に根を張る木について説明する久保田慶蔵さん=いずれも愛媛県宇和島市で

岩の隙間に根を張る木について説明する久保田慶蔵さん=いずれも愛媛県宇和島市で

 滑床渓谷の違った表情を見たくて、今度は森を歩いてみた。ネイチャーガイドの久保田慶蔵さん(56)の案内で、通常、1時間半ほどで回れる約5キロの遊歩道や林道を3時間かけて巡る。

 岩の上にのさばるように根を張る木々や微妙なバランスを保って積み重なる巨岩があちこちに見えてくる。耳を澄ませると鳥やカエルの鳴き声が聞こえてきた。急いでいたら知らずに通り過ぎてしまいそう。久保田さんは「五感を使って滑床の自然を感じ、心や体を解放してもらえれば」と語っていた。

 渓谷を体全体で満喫した後、電車で宇和島市街に向かう。体力を消耗しているはずなのにその疲労感さえ心地良い。童心に帰って、懐かしい感覚が呼び起こされたような気分だった。さっぱりとした爽快感が残っていた。

 文・写真 生津千里

(2018年6月29日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
名古屋、東京からは空路で松山空港へ。
JR松山駅から宇和島駅まで特急で約80分。
滑床渓谷へは予土線・松丸駅から車で30分。

★問い合わせ 
滑床アウトドアセンター=電0895(49)1535、宇和島市観光物産協会=電0895(22)3934

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ぐるり宇和海

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ほづみ亭

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★キャニオニング
中学生以上が対象で10月まで。
1日コースは一般1万500円から、中高生8500円から。
昼食に地元老舗レストラン特製のフォカッチャサンドが出る。
半日コースや家族向けコースもある。
フォレストキャニオン=電0895(49)6663

★ぐるり宇和海
宇和島市の宇和島新内港を発着する宇和海一周クルーズ。
リアス海岸や段畑を船から眺められる。
地元の人の生活船でもあるため、離島などの住民ともふれ合えるのも魅力。
高速艇は中学生以上2100円、小学生1050円。
盛運汽船=電0895(22)4500

★ほづみ亭
宇和島市新町にある郷土料理などの食事処(どころ)。
鯛(たい)の刺し身に自家製のたれや卵を混ぜ合わせ、ご飯にかける鯛めしや鯛のすり身と麦みそを混ぜたさつまめし(いずれも昼980円、夜1058円)をはじめ、じゃこ天やふくめんなどを手頃な値段で味わえる。
電0895(22)0041

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