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道東

道東 北海道 名所健在、景色の宝庫

「幸福駅」には願いごとが書かれた大きな「切符」が、ところ狭しと貼り付けてある=北海道帯広市で

「幸福駅」には願いごとが書かれた大きな「切符」が、ところ狭しと貼り付けてある=北海道帯広市で

 1枚持っていた覚えがある。友人にもらい、定期入れに入れていたと思うがいつの間にかなくしてしまった。テレビ番組で紹介されたのをきっかけに「愛国から幸福ゆき」の切符がブームになったのは1970年代の半ばだった。1年に300万枚売り上げた年もあったという。

 それから40年余り。北海道帯広市近郊の廃線の跡を辿(たど)り、ローカル線にも乗って根室市の納沙布岬を目指すツアーに参加すると・・・。

 帯広空港から車で5分あまり、「幸福駅」はまだあった。87年、広尾線(帯広-広尾)の廃線で廃駅になった後も訪れる人は多く、公園として整備されている。駅舎は建て替えられたが、ホームは当時のままでキハ22形のディーゼルカーも2両が展示されている。

 駅舎には、願いごとが書かれた大きな「切符」が、絵馬代わりにところ狭しと貼り付けてある。同行したとかち青空レディの金谷美来さんに「貼ったことある?」と尋ねると、「地元の人はやらないんですよ。でも『切符』は財布に入れてます」と原寸大の「切符」を見せてくれた。

 
11連のアーチが美しいタウシュベツ川橋梁。現在は増水期で水没しており、再び姿を現すのは来年年明けごろになるという=北海道上士幌町で

11連のアーチが美しいタウシュベツ川橋梁。現在は増水期で水没しており、再び姿を現すのは来年年明けごろになるという=北海道上士幌町で

 広尾線と同じ年には、帯広を起点とする士幌(しほろ)線(帯広-十勝三股)も廃線になった。同線のコンクリートアーチ橋の一つ、上士幌町のタウシュベツ川橋梁(きょうりょう)(長さ130メートル)は55年の糠平ダム完成とともに増水期には水没。新しい線路が敷かれ役目を終えたが、渇水期には北海道遺産にも選定されたその美しい全容を現す。ただ2003年の十勝沖地震以降、特に傷みが激しくなり、見学ツアーを主宰するひがし大雪自然ガイドセンターの河田充さんは、「あと何年持つか分かりません。背後のウペペサンケ山が残雪を冠している6月ごろの姿は、本当におすすめですが」と残念がる。

 この日は夕刻、列車で釧路に向かう。「動物が飛び出し急停車することがあります」と流れる車内放送は北海道らしい。

日本最東端の駅、東根室駅

日本最東端の駅、東根室駅

 翌日、沿線・浜中町出身の漫画家モンキー・パンチさんの協力で走るルパン三世のラッピング列車で根室を目指すと、ひっきりなしにエゾシカが現れる。遠くでタンチョウが餌をついばみ、上空をオジロワシが舞う。

 釧路-根室駅間の根室線に「花咲線」との愛称がつけられたのは1990年代初め、広尾線などが廃止された後だ。そういえば、昨年発売された松原健之さんが歌う「花咲線~いま君に会いたい~」(石原信一さん作詞、幸耕平さん作曲)の歌詞には、「ふるさとの線路またひとつ 失(な)くなると噂(うわさ)流れたよ」とある。何とももの悲しいがこうした中、花咲線では朝の普通列車上下1本を観光列車にする取り組みが始められている。

 ラムサール条約湿地の別寒辺牛(べかんべうし)湿原や落石(おちいし)海岸など景勝地では速度を落とす。日本最東端の東根室駅では停車時間を長くし、記念撮影できる時間を確保している。スマホのアプリで沿線の音声ガイドも聞ける。

 
日本本土最東端に立つ納沙布岬灯台=いずれも北海道根室市で

日本本土最東端に立つ納沙布岬灯台=いずれも北海道根室市で

 根室に近づくにつれ、この地方特有の海霧が辺りを覆いだした。沿線の木々の間を白い霧が漂う。「霧が出ると残念がる人が多いのですが、幻想的な光景だと思います」。同行した根室市観光協会の有田茂生さんの意見に同感だ。「海霧が運ぶミネラルはいい牧草を育ててくれる」のだそうだ。

 東根室駅でバスに乗り換え、納沙布岬を目指す。「四島(しま)のかけ橋」のモニュメントを眺め、たどり着いた納沙布岬灯台の裏に野鳥観察舎がある。日本本土最東端の建物だ。

 晴れた日にはくっきり見えるはずの歯舞群島貝殻島や水晶島は、白い靄(もや)の向こうだ。この時ばかりはすっきりしない天候が恨めしい。足元の岩礁から国境など関係ないオオセグロカモメが沖へと羽ばたいた。

  文・写真 仁賀奈雅行

(2018年8月3日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
とかち帯広空港へは羽田空港から毎日7往復。
8月は中部国際空港からの直行便も週4往復。

◆問い合わせ
とかち観光情報センター=電0155(23)6403
釧路観光コンベンション協会=電0154(31)1993
根室市観光協会=電0153(24)3104

おすすめ

勝手丼

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炙屋(あぶりや)

炙屋(あぶりや)

★旧国鉄士幌線アーチ橋見学ツアー
タウシュベツ川橋梁や幌加駅跡などを訪れる。
糠平温泉文化ホール集合、所要約2時間半。
大人3500円、小学生1500円。
1人だけの時は4000円。
定員制で前日までに予約が必要。
予約・問い合わせはNPO法人ひがし大雪自然ガイドセンター=電01564(4)2261=へ。

★勝手丼
釧路市黒金町の和商市場内の飲食店などでご飯(大250円、中200円、小150円など)を買い、鮮魚店や総菜店で切り身や量り売りの具材を購入、丼に載せて完成。
釧路和商協同組合=電0154(22)3226

★道の駅コンキリエ
厚岸町住の江2。
全国的に有名な厚岸牡蠣(かき)をはじめサケ、サンマ、ツブ貝などを炭焼きにして食べられる「炙屋(あぶりや)」、生牡蠣にウイスキーを垂らして食べられるオイスターバール「ピトレスク」などのほか、とれたての魚介類が並ぶ魚介市場も。
コンキリエ=電0153(52)4139

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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