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大塚国際美術館 鳴門市

大塚国際美術館 鳴門市 徳島県 圧巻の「名画」と渦潮

ミケランジェロの最高傑作と呼ばれる天井画や壁画があるシスティーナ礼拝堂を再現したシスティーナ・ホール。その迫力に立ち尽くす人も多い

ミケランジェロの最高傑作と呼ばれる天井画や壁画があるシスティーナ礼拝堂を再現したシスティーナ・ホール。その迫力に立ち尽くす人も多い

 これまで美術鑑賞とは無縁だったが、友人に勧められたのがきっかけで、鳴門海峡を望む徳島県鳴門市の大塚国際美術館を訪ねた。古代壁画から26カ国、190余の美術館が所蔵する現代絵画までを原寸大で陶板にした千余点を展示する、陶板名画美術館だ。

 展示スペースは地下3階から地上2階まであり、鑑賞ルートは約4キロにも及ぶ。さながら「名画ハイキング」だ。大塚グループが創業の地である鳴門市に建設し、開館20周年を迎えた。これらの陶板名画はすべて同グループの会社が制作している。美術館にほとんど行った経験がないのを棚に上げ、「原寸大とはいえ、どうせ複製でしょ」という思いを抱えながら、入り口から長さ41メートルもあるエスカレーターを行く。

 まずは、バチカンの「システィーナ礼拝堂天井画および壁画」を再現した「システィーナ・ホール」に立ち寄る。ルネサンス絵画の最高傑作の一つと呼ばれるミケランジェロの天井画や壁画がある。正面の「最後の審判」(縦14.6メートル、横13.3メートル)には天国へ昇る人、地獄へ落ちる人が描かれ、いずれも筋肉質な人物の表情はさまざまだ。「さあ、おまえはどっちかな」と迫られているような気もする。

 お隣はイタリアの「スクロヴェーニ礼拝堂」(高さ12.6メートル)で、天井は鮮やかなブルー、壁には聖母マリアやキリストが描かれている。椅子に腰掛けて、描かれた物語を想像してみる。聖歌が流れる心安らぐ空間で、隣に座っていた年配女性は「館内を一通り見ましたが、意表を突くような仕掛けが、いっぱいあって楽しいわよ」と語っていた。既に1時間たっていたが、こちらは、ほとんど進んでいない。

多くの人でにぎわうゴッホの七つのヒマワリのコーナー=いずれも徳島県鳴門市の大塚国際美術館で

多くの人でにぎわうゴッホの七つのヒマワリのコーナー=いずれも徳島県鳴門市の大塚国際美術館で

 フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」、ダビンチの「最後の晩餐(ばんさん)」、ミレーの「落ち穂拾い」、ムンクの「叫び」と、次々と現れる作品に美術の教科書をめくるような感覚で回る。これらの陶板名画は、許諾取得、原画撮影、色の分解、陶板への転写、焼成、レタッチなど大きく九つの工程があるといい、2000年たっても色あせないという。原寸大で陶器の板に焼き付ける特殊技術はメード・イン・ジャパンならではの出来栄えだ。

 名画のオンパレードで疲れ、カフェで休憩。屋外にはモネの「大睡蓮(すいれん)」が展示され、それを取り囲むように池があり、睡蓮の花が咲いていた。空間をうまく利用した環境展示も多く、どっぷりと絵画の世界につかることができる。作品の写真撮影も自由で、スマホを手にあちらこちらで「ハイ、チーズ」の声。作品に出てくる人物のコスプレ衣装も全37着あった。これを着て作品の前でポーズをとる親子も多い。田中秋筰常務理事は「これからも遊び心が、たっぷり詰まった美術館でありたい」と語る。

 来館者に一番人気の高い画家がゴッホだ。開館20周年を記念し、ゴッホが描いた花瓶の「ヒマワリ」全7点を原寸大で再現した。ずらりと並んだヒマワリの中で太平洋戦争の阪神大空襲で焼失した「ヒマワリ」が目に留まった。ほかの作品とは違う濃い青の背景で、黄色い花が一層引き立ち、悲しみを誘う。ピカソの「ゲルニカ」を前にソファでくつろいでいたら、閉館時間が迫っていた。当初の思いは吹き飛び、満ち足りた気分だった。

観潮船から間近で見学できる鳴門海峡の渦潮

観潮船から間近で見学できる鳴門海峡の渦潮

 鳴門に来たからには、ぜひ見ておきたかったのが渦潮。美術館から徒歩数分の亀浦漁港から観潮船に乗ってみた。港から数分で大鳴門橋下に到着。満潮少し前だったが、海流が激しくうねる。「あ、出たぞ。大きな洗濯機だ」と家族連れが叫ぶ。直径10メートルを超える渦が現れては消える。これだけ速い潮にもまれているマダイなどは身が締まっておいしいのもうなずけた。陶板名画と渦潮の迫力に圧倒された旅だった。

 文・写真 柳沢研二

(2018年9月7日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
鳴門へはJR山陽新幹線・新神戸駅から高速バスで約1時間半。
高速鳴門下車が便利。
徳島阿波おどり空港からバスで約30分。

◆問い合わせ
徳島県名古屋事務所=電052(262)4677
同県東京本部=電03(5212)9022

おすすめ

ルノワールの幸せパフェ

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鳴(なる)ちゅるうどん

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★スイーツ
大塚国際美術館には三つのカフェやレストランがあり、画家や名画にちなんだメニューも多い。
「カフェ・ド・ジヴェルニー」では「ルノワールの幸せパフェ」(800円、30日まで)が人気。
10月28日までコスプレイベントもある。
同美術館の開館は午前9時半~午後5時で、月曜(祝日の場合は翌日)休館。
特別休館あり。
入館料は一般3240円、大学生2160円、小中高生540円。
電088(687)3737

★鳴(なる)ちゅるうどん
鳴門市民のソウルフードで、麺の形や長さがふぞろいなのが特徴。
鳴門市鳴門町の「船本うどん本店」は手打ちにこだわる老舗。
「鳴門うどん」(350円)は黄金色のだし汁に手打ち麺と刻んだあげとネギが載る。
電088(687)2099

★渦潮見学
観潮船「うずしお」の乗船料は中学生以上1550円、小学生780円。
電088(687)0613。
大鳴門橋遊歩道「渦の道」は長さ450メートルで渦潮を真上から見学できる。
徒歩数分で渦潮について学べる「大鳴門橋架橋記念館エディ」がある。
両施設セットの入館料は大人900円。
渦の道=電088(683)6262、エディ=電088(687)1330

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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