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内陸縦貫鉄道で里山巡り

内陸縦貫鉄道で里山巡り 秋田県 優しい風景 車窓に次々

黒い板塀にこんもりとした並木の緑が映える角館の武家屋敷通り=仙北市で

黒い板塀にこんもりとした並木の緑が映える角館の武家屋敷通り=仙北市で

 里山風景の中をコトコト走る、何やら癒やされる鉄道が秋田にあると聞いた。秋田内陸線というそうだ。8月後半、うだる暑さの東京を出て、秋田県仙北市の角館(かくのだて)を起点にするツアーに参加すると-。

 雨上がりだった。ぬれたモミの木や枝垂れ桜の濃い緑が重厚な黒板塀に映える。武家屋敷が立ち並ぶ内町は、秋田内陸線の始発駅・角館駅から歩いても10分余り。江戸初期、芦名氏によって町づくりが行われ、その後も佐竹北家の城下町として栄えた角館の中心地だ。

 京都の公家から佐竹北家2代目義明に嫁ぐ娘が寂しくないようにと、母親が嫁入り道具と枝垂れ桜の苗木3本を持たせた。「その3本が元になり、見事な並木ができあがりました」。田沢湖・角館観光協会の吉成和子さんが説明してくれた。

 江戸時代のまま残された通りは幅6間(約10.8メートル)もあり、観光の人力車が通る。「道幅は当時の東海道に倣ったといいます」と吉成さん。

 映画「たそがれ清兵衛」の撮影に使われた岩橋家は、江戸末期に改造されてはいるものの、典型的な中級武士の屋敷をいまに伝える。庭のカシワの木は樹齢300年を超えるという。

 駅に戻って、いよいよ内陸線へ。乗り込んだのは、通常ならおよそ1時間20分で走る角館-阿仁合(あにあい)間を、2時間弱かけてゆっくり走る臨時列車だ。車内にはさまざまなポーズをした秋田犬の写真が何十枚も張られ、和ませてくれる。

クニマスと富士山を描いた田んぼアート。田沢湖にクニマスを復活させる願いが込められている=秋田県仙北市で

クニマスと富士山を描いた田んぼアート。田沢湖にクニマスを復活させる願いが込められている=秋田県仙北市で

 走りだして約5分。左手に田んぼアートが見えてきた。「クニマスと富士山です」。同乗した秋田内陸縦貫鉄道の吉田裕幸社長が紹介してくれた。自身も小学生ら80人ほどと半日がかりで田植えしたという。「田沢湖で絶滅したクニマスが富士五湖の一つ西湖で生息していることが分かりました。田沢湖の環境を改善し、再びクニマスがすめるようにとの願いを込めました」

 続いて登場したのは定番の秋田犬だ。田んぼアートは精密な設計図を描き、さまざまな葉の色の品種の稲を植えて造る。稲に色を塗っているのではないので念のため。

 残念ながら、田んぼアートは9月下旬ごろの稲刈りで姿を消し、来年7月まで待たなければならない。しかし、「代わりに10月半ばからは紅葉がきれいです。1番のおすすめは冬景色。秋田杉と枝に積もった雪の織りなすコントラストをぜひ」とアテンダントの畠本美登里さん。

 途中駅では台湾からの団体客で満員の車両とすれ違う。「こんなところに」と思っていると、「外国の方も増えており、台湾の方には特に人気。乗客が多くても2両編成にせず、1両で走らせないと苦情が出るんです」という。分からないものだ。

 沿線の秘境駅ナンバーワンは岩野目(いわのめ)駅。「四捨五入すると1日平均の乗客はゼロ人」と吉田社長。隣の「笑内」駅は「おかしない」と読む。駅の説明を聞いているだけで楽しいうえに、比立内川や阿仁川がつくり出す渓谷美も堪能できる。県内で1番長い12段トンネルでは入り口と出口が同時に見える10秒程度の間に願いごとをすると叶(かな)うそうだ。

 新しい駅舎が数字の4を組み合わせた形に造られ、「し(4)あわせの駅」と呼ばれる阿仁合駅で鉄道の旅を終え、宿がある男鹿温泉(同県男鹿市)へ。

訪れたなまはげをもてなす家の主人。男鹿真山伝承館ではなまはげの行事が体験できる=秋田県男鹿市で

訪れたなまはげをもてなす家の主人。男鹿真山伝承館ではなまはげの行事が体験できる=秋田県男鹿市で

 翌日は、午前4時53分の日の出を見るために早起きし、100体以上のなまはげが勢ぞろいするなまはげ館を見学した後、大みそかのなまはげ行事が体感できる男鹿真山伝承館に向かった。

 なまはげは子どもに声を掛けて、説教したりするものだとばかり思いながらカメラを構えていると、「本家のとっつぁんじゃねえが」と、突然声を掛けられてビックリ。周囲の爆笑を浴びたが、何だか厄落としできたような気分にもなった。

 文・写真 仁賀奈雅行

(2018年9月14日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
角館駅へは東京から秋田新幹線で約3時間、名古屋からは5時間程度。

◆問い合わせ
仙北市観光情報センター=電0187(54)2700
秋田内陸縦貫鉄道=電0186(82)3231(土日祝日を除く)

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ギャラリー「ブルーホール」

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人気沸騰の秋田犬

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★小玉醸造
秋田県潟上市。
1879(明治12)年の創業時の面影を残すれんが造りの清酒、みそ、醤油(しょうゆ)の蔵を見学できるツアーが午前11時と午後2時から(無料、当日申し込み可)。
うすくち醤油をブレンドした白だしは絶品。
敷地内には主に郷土出身の写真家中村征夫さんの作品を展示するギャラリー「ブルーホール」もある。
入場料は一般300円、中高生100円、小学生以下無料。
蔵見学の予約は電018(877)5772

★男鹿水族館GAO
男鹿市戸賀塩浜。
ホッキョクグマ「豪太」が人気、ハタハタが泳ぐ姿もみられる。
冬季はバックヤードツアーも実施。電0185(32)2221

★秋田犬ふれあい処(どころ)in千秋公園
秋田市の千秋公園二の丸。
11月4日までの午前11時から午後3時まで。
人気沸騰の秋田犬と写真撮影などができる。
秋田観光コンベンション協会=電018(824)8686
秋田駅西口の秋田犬サテライトステーションでは火、土、日曜の午前11時半と午後2時15分、駅徒歩5分の秋田犬ステーションでも午前11時から午後3時まで、散歩中などの時間を除き、合うことができるが、犬の体調などで中止の場合も。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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