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石見地方

石見地方 島根県 安息の地で星に願いを

 毎日都会で働いていると、たまに「スピードについていけない」と思うことがある。ちょっと前にはやっていた店がなくなっていたり・・・。そんな時、島根県石見地方が「住みたい田舎」1位に選ばれたことがあると聞いて、都会の喧噪(けんそう)を忘れるために訪れることにした。

 東京・羽田空港からわずか1時間30分のフライトで萩・石見空港に到着。意外と近い。まずは島根県津和野町に向かった。

 津和野は江戸時代初めごろから幕末まで亀井家が治めていた津和野藩の城下町。山上には津和野城の石垣がそびえ、中腹には太鼓谷稲成(たいこだにいなり)神社が鎮座している。「稲荷」ではなく「稲成」と表記するのは、願い事がかなうようにとの思いからとされる。掘割にコイが泳ぐ殿町通りの古い町並みは幕末から時間が止まっているようだ。

「本州で1番星が見える天文台」に選ばれた日原天文台では満天の星が出迎えてくれた=島根県津和野町で

「本州で1番星が見える天文台」に選ばれた日原天文台では満天の星が出迎えてくれた=島根県津和野町で

 夜は町内にある日原(にちはら)天文台に出掛けた。ハレー彗星(すいせい)が地球に接近した1985年に、全国初の公開天文台としてオープン。「本州で1番星が(きれいに)見える天文台」に選ばれたこともある。75センチ反射望遠鏡は世界最大級のすばる望遠鏡と同じ技術を使用したもの。天体少年だった私が今回ぜひ訪れたかったところだ。

 天文台に着くと、満天の星が出迎えてくれた。天の川も見える。まるで天然のプラネタリウムだ。望遠鏡では土星の輪や火星の模様「大シルチス」も見ることができた。

 天文台で目についたのが「願い星★宅配便キット」。願い事を書いて天文台の専用ポストに入れると、太鼓谷稲成神社に奉納し、おたき上げを行ってくれるというもの。早速250円を支払い、子供の夢である「宇宙飛行士になりたい」と書いてポストにいれた。

 天文台では「星と森の科学館」を併設。各惑星や月の説明板の下に体重計が置いてあり、乗ってみると、木星では184キロと計測され衝撃。月では体重が6分の1の12キロとなり笑顔になった。

)石見神楽は軽快なリズムとわかりやすい演目で初めてでも楽しめる

石見神楽は軽快なリズムとわかりやすい演目で初めてでも楽しめる

 石見地方の神楽はひと味違うという。同県大田(おおだ)市の温泉津(ゆのつ)温泉にある龍御前(たつのごぜん)神社で夜神楽を見学した。今回は温泉津舞子連中が「恵比須(えびす)」と「八幡」を上演。軽快な楽器のリズムに豪華な衣装、明快なストーリーは初めての私でも楽しむことができた。

 石見神楽についてもっと知りたい-。神楽面の工房が温泉津駅近くにあると聞いて「小林工房」に向かった。工房主の小林泰三さん(38)は温泉津舞子連中のメンバーでもある。神楽面の絵付け体験をしていた東京から来た会社員女性(26)は「目元がちょっと違うだけで表情が変わってしまう」と難しそうに筆を走らせていた。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産に登録された伝統的工芸品「石州和紙」。約1300年の歴史があり、神楽の大蛇(おろち)にも使われている。その和紙作りが体験できると知って、予約した同県浜田市の石州和紙会館を訪れた。

 紙すき初挑戦。2枚のはがきを作る。材料を数回桁(けた)に入れ、桁を振ることで水分を落としていく。1回目は桁の振り方が悪く、しわになってしまった。伝統工芸士の西田誠吉(せいぎ)さん(63)は「何度でもやり直しができますよ。そして自然のものしか使わない。石州和紙は究極のエコなんです」と教えてくれた。

神楽面の絵付け体験では自分だけのオリジナル面を持ち帰ることができる=いずれも島根県大田市で

神楽面の絵付け体験では自分だけのオリジナル面を持ち帰ることができる=いずれも島根県大田市で

 石見神楽は幅広い年齢層によって継承され、石見の人の生活の一部となっている。そして日々進化していると聞いて驚いた。「古いもの」を大事にする石見の人々。都会暮らしの私には新鮮でまぶしく、きら星に見えた。

 文・写真 須藤英治

(2018年10月12日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
羽田から萩・石見空港へ。
空港から津和野へは乗り合いタクシー(要予約)がある。
新幹線は新山口駅からJR山口線で津和野駅へ。
拠点となる益田駅へは広島駅からのバスもある。

◆問い合わせ
日原天文台=電0856(74)1646
島根県西部県民センター観光振興課=電0855(29)5647

おすすめ

ランチのおすすめコースは2160円。

ランチのおすすめコースは2160円。
三瓶小豆原(さんべあずきはら)埋没林公園

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★ボンヌママン・ノブ
オーナーシェフの上田幸治さん(46)は豪華寝台列車「瑞風(みずかぜ)」の車内料理を監修。
ランチのおすすめコースは2160円。
電0856(23)2060

★神楽面絵付け体験
1時間半ほどで完成できる。
8500円。
要予約。
小林工房=電0855(65)2565

★手すき和紙体験
1時間程度で完成する。はがき2枚で540円。
要予約。
石州和紙会館=電0855(32)4170

★三瓶小豆原(さんべあずきはら)埋没林公園
縄文時代の森が地中に埋もれ、根を張ったもの。
長い幹を残すのは世界的に貴重で、国の天然記念物。
電0854(86)9500

★香木の森公園
スーパー地方公務員寺本英仁さん(47)監修のレストランがある。
ハーブを使ったクラフト体験施設や日帰り温泉、宿泊施設も。
電0855(95)2369

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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