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全州南部市場

全州南部市場 韓国・全州市 青年の志 伝統が支え

衣料品や雑貨、グルメなど多彩な店が密集する全州南部市場

衣料品や雑貨、グルメなど多彩な店が密集する全州南部市場

 韓国の仁川空港の外は耳が痛くなるほどの寒さで、慌ててバスに乗り込んだ。目指すは南西部に位置する全羅北道、道庁所在地の全州市。活気がある市場があると聞き、興味を持った。

 目的地の全州南部市場にたどり着いたのは、すっかり日が落ちたころ。アーケードの下、300以上の店が軒を連ねている。飲食、衣料、雑貨…。目移りする多彩な品、ぐずつく鼻でも、はっきり分かる香ばしい匂いにわくわくしながら、先へ進む。寒さも和らいだ気がした。

 初めての場所だが、かつて暮らしていた金沢市の近江町市場を懐かしく思い出した。品ぞろえは異なれど、多様な店が凝縮された濃密さ、雑然とした雰囲気は似ている。そういえば同市と全州市は姉妹都市でもある。

 観光ガイドのヤン・ジョンソンさん(40)が「朝市もにぎやかですよ。アーケードの外に、近郊のおじいさんやおばあさんが野菜や海産物を並べます」と教えてくれた。後日、早朝に再訪したところ、言葉通り、市場の隣を流れる全州川沿いや橋の上に、品物が並べられていた。薄暗がりの中、暖をとるためのたき火がやけに明るい。凍った魚やカニ、山と積まれた白菜などを見ながら歩いているうちに、やがて空が白んでいた。

魚介類がずらりと並ぶ朝市

魚介類がずらりと並ぶ朝市

 時間を夜に戻そう。南部市場は500年以上の歴史があり、祝い事の準備に欠かせない市場だった。ただ日本の商店街のように、近代化の中でにぎやかさが失われていった。若年層を呼び込もうと、市場の2階に登場したのが「青年モール」だ。

 2012年5月に、意欲ある若者たちが店を構える場としてオープン。2階はもともと市場の一画だったが、過去の火事で多くの店が去り、10年以上空いていた。出店者の年齢はおおむね39歳までだ。

 複数ある階段から2階に向かう。訪れたのが夜ということもあり、薄暗さに少し二の足を踏みつつ上った。両脇にはさまざまなタッチの肖像画、歓迎してくれているらしい「ゆるキャラ」の絵があり、笑いを誘う。少しでもにぎやかにしようと、店主たちが描いたという。

 豊富な品が並ぶ1階の市場と趣が異なり、こぢんまりとした店が多い。バーや喫茶、食堂、手作りの革製品やキャンドルを扱う雑貨店など。小物作りやコーヒーの入れ方を体験できる店もあり、リピーターを獲得しているという。当初12あった店は、現在は31までに増えた。写真撮影は断られたが、10人も入れば満員になるバーでは、常連客らしきグループが楽しそうに酒を酌み交わしていた。

青年モールへの階段脇に描かれたロケットの壁画=いずれも韓国・全州市で

青年モールへの階段脇に描かれたロケットの壁画=いずれも韓国・全州市で

 青年モールのマネジャー、キム・チェラムさん(32)は「若者の力は大事だが、昔から商売している方々の協力や近くに観光名所がある点が大きい」と成功の理由を語る。近くの名所とは伝統家屋「韓屋」が密集する全州韓屋村。レンタルした韓服を着て散策したり、屋台で買い食いしたりできるスポットだ。韓屋村を訪れた人々に青年モールをPRし、観光客や常連客を呼び込んでいった。ここでは伝統が革新を支えている。

 「青年モールは店を構える若者のゴールではない」とキムさん。「何年か店を続けてから、外で独立し、より大きな店を構えてほしい」。空いたスペースに次の「青年」が入る。そんな成長の場として続くのが願いだ。

 1階に下りようとして、階段の壁画が目に留まった。素朴な手描きで描かれた、広大な宇宙の中を飛ぶロケットと宇宙飛行士。若者の夢を載せているように思えて、深く印象に残った。

  文・写真 谷口大河

(2019年2月1日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
韓国の仁川、金浦空港には日本各地の空港から直行便が出ている。
全州市にはソウル市内の高速バスターミナル発の高速バスで約3時間。
韓国高速鉄道(KTX)ではソウル駅から全州駅まで約1時間半~2時間。

◆問い合わせ
韓国観光公社東京支社=電03(5369)1755、同大阪支社=電06(6942)0847

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★豊南門
南部市場の目の前にある城門で、市を代表する文化財。
黒い瓦屋根と色鮮やかな装飾の対照が美しい。
近くには壮麗な殿洞聖堂もある。

★全州韓屋村
瓦ぶきの伝統家屋「韓屋」が700軒余り密集する、国内最大級の韓屋村。
朝鮮王朝の初代国王・李成桂の肖像画を安置した慶基殿があり、歴史ドラマのロケ地に度々なっている。
趣を生かした飲食店やゲストハウスも多い。

★全州の食
市内には本場の伝統酒を味わえるマッコリタウンがある。
マッコリはヤカン入りで、チヂミやキムチ、豚足などテーブルに載りきらないほどの料理と一緒に出てくるのが定番。
ビビンバ発祥の地といわれ、日本のドラマ「孤独のグルメ」ロケ地になった店もある。

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