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美瑛、旭川、夕張

美瑛、旭川、夕張 北海道 凍る「神秘のブルー」

ライトアップで幻想的な表情を見せる「青い池」=北海道美瑛町で

ライトアップで幻想的な表情を見せる「青い池」=北海道美瑛町で

 真っ暗な雪原に青白い光の筋が差し、立ち枯れたカラマツと幻想的な池が浮かび上がった。「おおっ」とわきあがる歓声。氷点下5度、凍り付いた空間が白や青のライトアップで刻々と姿を変える。夏の間は水面の青さで人気の北海道美瑛(びえい)町の「青い池」は、雪と氷に閉ざされた冬も海外からのお客さんを中心に熱気であふれていた。

 ブルーリバーの異名を持つ美瑛川。水に含まれる微粒子が太陽光を乱反射して美しい青色になるという。同町観光協会の庄司篤史事務局長(46)によると、1988~89年の十勝岳噴火による砂防工事で、美瑛川の川筋を付け替えた際に偶然小さな青い池ができた。山深い場所だが観光資源になるとひらめいた役場が少しずつ整備を進めたが、当初は知る人ぞ知る場所にすぎなかった。

 ブレークの端緒は青い池の写真が米アップル社のパソコン壁紙に採用されたこと。世界の各地から人が来るようになり、「何が幸いするか分かりません」と庄司さん。冬場のライトアップは3年前から。パッチワークのような広大な丘陵農地の風景を楽しむ夏の観光は定番だが、ライトアップで青い池を幻想的に再現することで真冬の観光の目玉に育て上げた。

愛らしい姿が観光客に人気のペンギンの散歩=旭川市の旭山動物園で

愛らしい姿が観光客に人気のペンギンの散歩=旭川市の旭山動物園で

 冬の目玉といえば、美瑛町の北、旭川市の旭山動物園。週末は動物園行きのバスが朝から満員になる人気ぶりだ。雪上のペンギン散歩や、動物たちの「もぐもぐタイム」に大人も子どもも感嘆の声を上げる。

 水中トンネルを行くアザラシが、気になる子どもを見つけるとじゃれつくしぐさをしたり、のんびりのイメージのカバが見せる水中での軽快さに驚く。「カバのおなかを下から見たり、キリンの足元を間近に見られたりする動物園はここだけ」と坂東元(げん)園長(57)。金網に座るユキヒョウは真下から見上げたら、毛皮のソファのように見えた。「動物の多彩な動きや魅力的な表情を自然に見せたい」と、動物に心地よい環境を工夫する。解説や案内板はほぼ全部手作りで、イラストや写真を多用し親近感がわく作品ばかり。「経費節減で始めたんですけどね」と、坂東さんは笑った。

 130年近い歴史を持つ鉄路が3月末で廃線になると聞き、夕張市のJR石勝線夕張支線に足を延ばしてみた。1両の気動車を目当てに鉄道ファンらしき人たちでほぼ満席だった。

3月末で廃線となるJR石勝線夕張支線。夕張駅のホームは鉄道ファンなどでにぎわう=夕張市で

3月末で廃線となるJR石勝線夕張支線。夕張駅のホームは鉄道ファンなどでにぎわう=夕張市で

 終着の夕張駅で「お帰りなさい。」のメッセージが入った手作り記念品(つまようじ入れ)を乗客一人一人に手渡し、黄色いハンカチを振る元気な女性に出会った。市内の観光ガイドや語り部を務める松宮文恵さん(71)。夕張が舞台になった映画「幸福の黄色いハンカチ」を地で行く。

 市の財政破綻後の2009年から、有志で活動を始めたという。ユーモアあふれる軽妙な語り口で、石炭博物館など市内各地で夕張の歴史を伝え続ける。「再生に向け行動して街を守るのは市民の自分たちだべさ」

 夕張をたつ時、私も松宮さんが振る黄色のハンカチに見送られた。急速な人口減少と高齢化が進む夕張。鉄道がなくなるという苦境でも、アイデアを絞って街の再生に熱を入れる人たちに勇気づけられる旅だった。

 文・写真 五十住和樹

(2019年2月8日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
青い池へは東京、名古屋から空路で旭川空港へ。
空港から美瑛駅までバスで約15分。
同駅前から「美遊バス」が青い池のライトアップコースを3月下旬まで運行している。
大人2500円、小学生1000円。
運転日など問い合わせは美瑛町観光協会=電0166(92)4378。
旭山動物園は旭川空港からバスで約35分。
夕張駅へは札幌から。

おすすめ

ケンとメリーの木

ケンとメリーの木
カレーそば

カレーそば

★美瑛の丘めぐり
「美遊バス」は3月下旬まで週末を中心に、白銀の丘をめぐるコースも運行。
ケンとメリーの木、セブンスターの木など見どころで約15分停車する。
大人2500円、小学生1000円。

★旭山動物園
ペンギンの散歩は3月中旬ごろまでの積雪期に午前11時と午後2時30分に実施予定。
3月は午前のみ。
入園料は大人820円、中学生以下無料。
電0166(36)1104

★カレーそば
炭鉱マンらに愛された夕張のソウルフード。
とろみのついたカレーがそばの上に載り、厳冬期でも冷めない。
「夕張カレーそば協議会」会長の「吉野家」=電0123(52)2448=店主高橋一太さんは「元祖の味を工夫して受け継いでいます」。
コンビニのローソンで同店の味を再現したレンジ麺を北海道限定販売(450円)。 

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。