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大歩危・祖谷

大歩危・祖谷 徳島県三好市 雲海広がる妖怪の里

断崖絶壁の絶景スポットから、雲海に包まれる祖谷渓を眺める観光客=いずれも徳島県3好市で

断崖絶壁の絶景スポットから、雲海に包まれる祖谷渓を眺める観光客

 日本三大秘境の1つに数えられる徳島県三好市の大歩危(おおぼけ)・祖谷(いや)地方は、“雲と伝説の里”だ。雲海に包まれた山里には、平家の落人伝説と児啼爺(こなきじじい)をはじめとする多くの妖怪伝説が伝わる。四国山地の深山に潜む霊気と豊富な山の幸が観光客を大歓迎してくれた。

 「へっぴり腰だなあ」と同僚を笑っていた若者も、自分が渡る時はやっぱりへっぴり腰。祖谷川にかかる「祖谷のかずら橋」は長さ45メートル、幅2メートルのつり橋で、5トンのシラクチカズラを編んで作られている。足場の板と板の隙間が広く、14メートル下の清流が手に取るように見え足がすくむ。平家の落人が追っ手から逃れるため、簡単に切り落とせるようにとカズラで作ったとの言い伝えがある。

 1185年の壇の浦の戦いで、幼い安徳天皇が入水(じゅすい)し、平家は滅亡した・・・というのが平家物語の結末。しかし、同地方には、壇の浦で亡くなったとされる平清盛のおい、平国盛が安徳天皇とともに祖谷の地に生き延びていたという伝説がある。国盛の子孫は代々この地に住み、姓を「阿佐」に変えたというのだ。

 
足場の板の隙間が大きい「かずら橋」はスリル満点だ

足場の板の隙間が大きい「かずら橋」はスリル満点だ

 徳島県と高知県の県境近く、人里離れた山の中腹にある平家屋敷・阿佐家(非公開)に住む23代目当主、阿佐道彦さん(69)が代々伝わる「平家の赤旗」を背に、もうひとつの平家物語を語ってくれた。「ご先祖さまを大事にしたい」という。

 渓谷美で有名な大歩危は妖怪伝説の宝庫でもある。漫画「ゲゲゲの鬼太郎」で知られる児啼爺など54の妖怪伝説が伝承されている。地元はこの一帯を「山城大歩危妖怪村」と称し、妖怪の里歩きツアーを行っている。ガイドつきで古道のハイキングを楽しめる。

 「山にはさまざまな危険があり、子どもにその危険を教えるため妖怪伝説が生まれた」が、同妖怪村事務局長の平田政広さん(59)の説明だ。「高知と高松の真ん中で人の往来が多い。そんな中でさまざまな言い伝えが残ったのだろう」という。

 江戸中期からの民家や石垣が印象的な「落合集落」では、古民家を改修して宿泊施設として貸す「古民家ステイ」が4月から開始。仕掛け人は、古民家再生をプロデュースしている米国人のアレックス・カーさん(59)。39年前、祖谷に住むため落合集落のぼろぼろになった茅葺(かやぶ)き屋敷を38万円で購入した。以来、外見をそのままに内部を近代的に改装し、世界中から集まる若者の交流の場になっている。

 古民家ステイでは、8軒の古民家を再生する計画だ。現在、1軒目が出来上がり、工事中の2軒は6月にも完成する。再生した古民家を訪ねると、窓いっぱいにダイナミックな風景が広がる。カーさんは「梅雨時が最高。下から雲がもくもく湧き上がってくる。1日中眺めていても全然飽きない」と絶賛した。

「古民家ステイ」からの景色は「1日中眺めていても飽きない」と話す発案者のアレックス・カーさん=いずれも徳島県3好市で

「古民家ステイ」からの景色は「1日中眺めていても飽きない」と話す発案者のアレックス・カーさん=いずれも徳島県3好市で

 祖谷にいると、地元の人が「ここの雲海はすごい」と口々に言う。実際、この日ホテルで目覚めて窓の外を見たら一面の雲だった。まるでホテルがそのまま飛行機になったかのよう。旅行に出掛け、天気が悪くてがっかりすることが多いが、大歩危・祖谷でがっかりすることはない。最高の雲海を体験できるのだから。

文・写真 引野肇

(2012年4月6日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
JR岡山駅から大歩危駅まで約1時間40分。
高知竜馬空港から大歩危まで車で約1時間20分、
高松空港から同約2時間、徳島阿波おどり空港から約2時間。
大歩危駅からはタクシーかバスで移動。

◆問い合わせ
三好市観光案内所=電(0120)404344、
三好市役所観光課=電0883(72)7620

おすすめ

展示品の妖怪

展示品の妖怪

★大歩危峡観光遊覧船
そそり立つ砂質片岩の渓谷美を楽しみながら往復30分の船旅。
大人1050円、子どもは半額。
予約はレストラン大歩危峡まんなか=電0883(84)1211

★古民家ステイ
1棟を貸し切りで利用。
定員は2~4人で1人当たり8000~1万4000円(素泊まり)。
食事は自炊かケータリング。予約は桃源郷祖谷の山里=電0883(88)5120 

★妖怪屋敷
大歩危峡のほとりにある道の駅「大歩危」1階にある。
展示品の妖怪のほとんどが地元の人々の手作り。
大人500円、子ども300円。
道の駅「大歩危」=電0883(84)1489

★祖谷温泉
急峻(きゅうしゅん)な渓谷をケーブルカーで170メートル下った谷底にあり、
源泉掛け流しの露天風呂。
日帰り入浴は大人1500円、子ども800円。
ホテル祖谷温泉=電0883(75)2311

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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