市場を抜けると、世界文化遺産のアーヘン大聖堂がそびえる。8世紀後半、フランク国王のカール大帝がこの地を都と定め建設した。以後六百年にわたり、神聖ローマ帝国皇帝の戴冠式の舞台となった。中に入ると圧巻。高さ32メートルの天井には色鮮やかな宗教画が描かれ、壁面のステンドグラスも見事だ。欧米からの観光客が感嘆の声を上げている。日本人にはぴんとこないが、この町の歴史は、西洋の人々を引き付け続けている。
ここは、温泉でも有名だ。18、9世紀には、貴族たちが療養に集まってきた。「女性遍歴で有名なカサノバ(1725-98年)も三回、訪れています」とボルシュさん。今でも、地下4000メートルから74度のお湯がわいている。市内には噴出口があり、カップを持った市民が飲用にしている。湯治客も多い。
夜は市民の集まる居酒屋に行った。大型スクリーンでは、サッカーの試合を放映中。客は全員、ドイツ国内リーグのブンデスリーガ二部に所属するアレマニア・アーヘンのサポーターだ。36年ぶりの一部昇格に望みを残し、そのために負けてほしいチームが試合中で、ビール片手に熱心に観戦している。結果は、そのチームの勝ち。なんともいえないため息が店内に満ちた。
まだ、眠るのには早い。この町にはカジノがあるのだ。一応、ネクタイを締めパスポートを持って勇んで出かけた。20ユーロ(1ユーロ=約142円)だけチップに変えた。「グッドラック」。受付の男性がウインクしてくれる。2ユーロから賭けられるルーレットのテーブルでは、白髪のおばあちゃんがほおづえをついて勝負を楽しんでいたりして、とてものんびりした雰囲気だ。市民のほか、観光客も多い。ちなみに私は120ユーロ勝った。
帰国後、アーヘンから朗報が届いた。アレマニアが一部昇格を決定! あの居酒屋で、サポーターたちはどんなに喜んだことだろう。ビールジョッキをかち合わせる音が聞こえてくるようだ。
(文・写真 林栄司)
(2006年5月12日 夕刊)




















