
一般には知られていないが、飛行機好きなら誰もがあこがれる場所がカリブ海にある。セントマーチンと呼ばれる、地図では見落としてしまいそうな小さな島だ。名付け親はあのコロンブス。長い間恋い焦がれていたこの島を訪れた。
島の南西のマホビーチと呼ばれる浜辺が、飛行機好きなら真っ先に向かう場所。隣接するプリンセス・ジュリアナ空港への航路の直下にあり、浜辺を超低空で通過する飛行機を見ることができるのだ。頭上わずか20メートルほどのところを大型機が飛んでいくのには圧倒される。これまでに、マニアをうならせるような空港をいろいろ見てきたが、ここは別格だ。さらに他に類を見ない、おもしろい光景にも出合えるのだ。
飛行機がやってくるころ、浜辺に人が集まってくる。海に入る人、砂の上に腰を下ろす人、小高い堤防の上に立つ人、それぞれが思い思いに到着を待ちかまえる。
雲の合間に誰かが豆粒のような機影を見つけた。「来たぞ」。呼応するように歓声が上がった。「今度のはでかいぞ」。周りではお祭り騒ぎが始まった。
浜辺に向かって飛行機と海面に映る機影が迫ってくる。押しつぶされてしまうのではと思えるくらい、頭上すれすれを巨大な機体が通過していった。振り向けばすぐ目の前には滑走路。ドスンという音が辺りに響くと同時に、舞い上がった細かい砂が顔に当たった。目を開けていられないほどだ。
離陸時はもっと衝撃的だ。滑走路の全長が2400メートルほどと、大型機が離陸するにはぎりぎりのため、飛行機は滑走路端まで来て一度止まりエンジンを全開にして飛び立っていく。それを50メートルほど後ろで見ている方はたまったものではない。ジェットエンジンの威力はすさまじく、みな木の葉のように吹き飛ばされて、悲鳴とも歓声ともつかない大声をあげて海へと転げ落ちていく。
浜辺に危険を知らせる看板があるのだが、誰も気に留めることはなく、立ち入り制限といったヤボなこともないので、飛行機の離着陸の度に同じ光景が繰り広げられる。危ないのはわかっちゃいるけど、やめられないのだ。
飛行機の飛来が一段落すると浜辺には静寂が訪れる。レンタカーで市街地へと向かった。




















