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江差町 北海道 栄枯の港に響く追分

鴎島から見た江差町。手前には復元された江戸幕府軍艦「開陽丸」が浜辺に横たわる=北海道江差町で

鴎島から見た江差町。手前には復元された江戸幕府軍艦「開陽丸」が浜辺に横たわる=北海道江差町で

「イカ、イーガ、イカ、イーガ」

日本海に面した北海道南西部、江差町の朝はイカ売りの声で始まる。3人いる行商のうち、杉野悦男さん(82)は昔ながらに自転車で振り売り。漁期の6月から11月まで、江差港で水揚げされた生きイカを数十キロ仕入れて、毎朝のように自転車の荷台に積んで得意先を回る。

「キュッキュッ」。まな板の上でもまだ鳴き声をあげているスルメイカは、いかそうめんとなって朝の食卓をにぎわす。透き通った身はよく締まり、コリコリとした食感が味わえる。

北海道が蝦夷地とよばれた江戸時代、江差は上方と結ぶ交易船、北前船の終着の港として栄えた。綿作の肥料としてニシンは一躍脚光を浴びた。ニシン漁最盛期には「江差の5月は江戸にもない」といわれるほど繁栄。しかし、無尽蔵と思われたニシンも乱獲により、大正時代に入ると漁は下火となり、ニシンの群れが江差沖にいなくなって幾星霜。イカ釣り船が港から繰り出す。

ニシン漁全盛の名残とどめる網元、回船問屋の住宅が、旧海岸線沿いに現存。一帯は「いにしえ街道」として街並み整備されている。

いにしえ街道からちょっと山手に上ったところに、明治のハイカラ建築、旧桧山爾志(にし)郡役所(江差町郷土資料館)がある。2階バルコニーに出ると、海から風速15メートル以上の強風が吹き付けてきた。180度開けた大海原に白波が立っていた。「こんな風はいつものこと。よく晴れた日には60キロ沖の奥尻島も見えますが、今日はちょっとかすんでいますね」と、学芸員の宮原浩さん。それでも、湾曲した海岸線がおよそ50キロ先まで遠望でき、気宇壮大になる。

視線を手前の江差港に落とすと、天然の防波堤のような鴎島と港の間の浜辺に、3本マストの大きな帆船が見えた。1868(明治元)年の戊辰戦争中に、榎本武揚らを乗せて活躍した幕府軍艦開陽丸を復元した施設という。

当時最強の大砲を積んだオランダ建造の軍艦は江差沖で暴風のため、座礁して沈没した。施設内部には海底から引き揚げた遺物三千点が展示されている。

郡役所建物の前に、幹が途中から90度曲がった松があった。「土方歳三・嘆きの松ですよ」。宮原さんが教えてくれた。新撰組の生き残りを率いた土方は、榎本の艦隊に合流。ここで榎本と沈んでいく開陽丸を見つめ、この松をこぶしで叩きながら男泣きしたと伝えられる。

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