夕闇迫る稜線(りょうせん)に、ポツンポツンと黄金色の明かりがともった。星々との交信開始を告げているみたいだ。百数十億光年のかなたをのぞく天文ドーム群が沈む日に照らされている。
“宇宙に一番近い島”ハワイ島。その最高峰マウナケア山(4、205メートル)の山頂付近にワゴン車で着いたのは午後5時半。気温零度。2時間前まで半袖シャツだった体に防寒具を巻き付けても、きりりと澄んだ冷気が体に張り付く。手元の気圧計は610ヘクトパスカル。空気も薄い。動くと胸のあたりが苦しい。
ここに世界から13基の望遠鏡が集まっているのは気候が観測に最適だからだ。日本のすばる望遠鏡がひときわ輝いて見える。地の際が虹のように発光する。20分余りの夕焼けショー。星の饗宴(きょうえん)がまもなく始まる。
四国の半分ほどの広さのハワイ島は100万年前に生まれた火山の島。コナ国際空港に降り立つと一面黒々とした溶岩平原が広がる。200年前のファラライ山噴火によるものだ。南東部キラウエア火山は今も溶岩を吐き出し、海辺を焦がす。「大地が生まれる場所」。そんな言葉が浮かぶ。
「届いている光は何年も前のもの。もうその星はないかもしれない。タイムマシンに乗っているみたいだねえ」。日本に16年間住んでいたというガイドのリチャード・ホーキンズさん(42)の声にため息がもれる。日没後、山頂から700メートル下りて星空観測。持参した理科年表の一夜漬け知識を基に空を見上げる。
星空が深い。北極星が低い。ガイドが用意した望遠鏡をのぞく。二百数十万光年先のアンドロメダ星雲だ。にじんで見える光は、この島がまだ海中に眠っていたころのもの。
東の空、オリオン座が横倒しに現れた。腰には“星の揺りかご”オリオン大星雲が輝く。1500光年のかなた。この光が放たれたころ、南方マルケサス諸島からポリネシアの民が3500キロの海を渡ってハワイに初めてたどり着いた。日々、仕事に追われるだけのおじさん記者もちょっぴり荘厳な気持ち。
島内には太古の民が刻んだペトログリフ(岩刻画)が点在している。その一つが北西部のワイコロア・ビーチ・リゾートにある。ティファニー、コーチ、ルイ・ヴィトン…。ブランド品が並ぶショッピングセンターの裏手に保護区はこつぜんと現れる。人やカヌー、北斗七星、意味不明の図柄。文字を持たなかった民の子孫へのメッセージか。「いつごろのものなのか、はっきりしないんです」と語るガイドのノエノエ・ケカワルワさん(40)は、ここを管理するリゾート会社の従業員だ。




















