富山県高岡市から北へ。「万葉線」というゆかしい名の路面電車が射水市新湊とを結んでいる。古く、大伴家持が越中の守(かみ)として赴任し多くの歌を残した地。富山湾に面して国府(現・高岡市伏木にあった)のすぐそば、奈呉ノ浦と呼ばれた海辺を万葉歌人はことに愛したことだろう。
新湊は県内有数の漁港である。午前2、3時に出漁した漁船が戻ってきて、朝の競りが5時30分きっかりに始まる。活気ある漁港の風景は日本全国あまり変わらないが、ここでは昼間にも競りが行われる。午後1時。港が再び活気づく。「昼もあるのは富山ではここだけ。日本でも片手で数えられるほどしかないんじゃないかね」と漁協の兄さん。
夏場はアジ、甘エビ、サヨリ、カキ、クルマエビ、バイ貝。アマダイ、マトウダイも。富山湾特産として人気急上昇の白エビが最盛期で、8月に入ってマグロ。9月になれば漁期の長い紅ズワイガニが再び登場し、にぎわう。ゼラチン質の多い、ちょっとグロテスクなゲンゲというのがシーズンではないが、干物はいつでも味わえる。
刺し網、底引き、定置網など漁法が多いので魚種も豊富という。朝昼によっても漁法が違ってくるそうだ。岩ガキは素潜りで。最近の燃料高騰の折でも漁場は富山湾内の近場だから、ほかの漁港に比べれば有利なのだ、とか。
漁港は見学自由。県内の小学生も来ている。子どもたち同様、引率の若い先生もその様子に興味深げだ。魚の名前を誰彼なしに尋ねていた。
「やはり新湊は海産物が魅力ですからね」。東海北陸自動車道の全線開通で観光担当の市の職員もPRに力が入る。ここまで来なくては味わえない新鮮な魚、手に入らないめずらしい魚がある。市内にはすし屋が目につく。口の肥えた、とりわけ魚にうるさい地元の人をも満足させねばならないわけだ。




















