伯備線特急「やくも」の車窓から米子の間近で大山が見えた。雪を冠した姿が神々しい。これから境港に水木しげる版妖怪変化を見に行くのである。米子駅の0番線境線ホームがもう、その世界への入り口になっている。「ねずみ男」の絵看板やモニュメントがホームのあちこちにある。
米子駅の「ねずみ男駅」に始まり境線の各駅に妖怪愛称名が付いていて「傘化け駅」(河崎口駅)、「砂かけばばあ駅」(弓ケ浜駅)などなど。水木しげるの故郷、終点境港駅が「鬼太郎駅」である。そして乗った列車が「ねこ娘」だった。
ピンク色の車両の正面に、横っ腹に、車内の天井に、歯をむいたおかっぱ娘がいっぱい。気色悪い? いや、幼稚園のネコバス的感覚で面白い。地元の客がぱらぱらとしか座ってないから、いい大人が遠慮なく喜んでいると、単線のすれ違いで「目玉おやじ」に出合った。ほかに「鬼太郎」「ねずみ男」の四車両が米子-境港間を走っている。全部で16駅、約40分。
境港の町中は鬼太郎だらけ。まんじゅう、せんべい、酒、郵便局、交番、タクシー。みんな頭に“鬼太郎”が付く。商店街歩道の「水木しげるロード」に妖怪ブロンズ像が立ち並ぶ。大小さまざま120体。
一つ一つ見ていくと日が暮れてしまうから代表的なのを二、三紹介。ゲタをあしらった鬼太郎は大作で、“年男”のねずみ男は握手攻めに合っている。頭をなでられた「ぬらりひょん」はてっぺんがてかてか。「豆腐小僧」の前では女性グループがなにがおかしいのか、きゃあきゃあ喜んでいた。「妖怪壁画倉庫」「妖怪神社」まである。
昔は敬遠気味だった暗い、怪しの世界が今や行楽の対象に。年々過熱気味で、一昨年92万人台だったロードの人出が昨年150万人近くまで急上昇。ゴールデンウイークには「鳥取砂丘」の倍の22万人を集めて鳥取県内随一の人気だった。また「水木しげる記念館」は昨年夏、開館5年目で100万人を突破した。
境港市観光協会の会長で記念館館長でもある桝田知身さんは「一般の人にも広く妖怪が親しめるようになったのは水木先生の功績」と話す。マニアには検定試験があり、昨年全国から618人が受験、初級201人、中級51人合格。お化け好き、妖怪ファンというのは一度ハマるとやめられなくなるものらしい。「かっぱの泉」との公園も近く作られる。お隣、島根県の出雲には八百万の神々が集うというが、ここ境港にはユーモラスな妖怪、お化け仲間が集まって、わいわいにぎわっている感じ。愉快な話ではないか。「無機質な、ぎすぎすした今の世の中が少しでもなくなってくれればいいですねえ」と桝田会長。




















