総延長10キロ、巨大な鍾乳洞
「わー、すごいっ」。天を刺すように立ち並ぶ岩の塔を縫うようにロープウエーが上昇する。悲鳴交じりの歓声があちこちで上がった。雲に煙る奇岩は、さながら水墨画に描かれた仙境。こんな場所が地球上にあったのか。静かな興奮が体を包む。
中国湖南省の北西部、張家界市にある武陵源景勝区。桂林や敦煌といった世界的な観光地に比べれば知名度はまだ低いが、その潜在力は計り知れない。369平方キロの面積に、約三千の岩塔が林立する絶景は1992年に世界自然遺産に登録された。近年はホテルや空港の整備が進み、観光客を増やしているという。
ロープウエーが終着駅に着くと標高1200メートルを超す天子山自然保護区だ。展望台のある賀龍公園からは、群生するエノキダケのような奇岩群を一望できる。なぜこんな景観が生まれたのか。「かつてこの一帯は海底だったのですが、2700万年前に地殻変動でせり上がり、その際に岩山の固い部分だけが残ったのです」と現地ガイドの喩字林さん(30)。
ふと、展望台わきにパソコンを操作する少年たちを見つけた。彼らは地元の少数民族ドゥチャ族で、観光客相手にデジタルカメラで撮った写真を印刷して売っている。秘境気分はしぼんだが、こんな場所でパソコンとは。素直に驚かされた。
次に向かったのは、喩さんが「一番おすすめ」という袁家界。こちらも高台から岩峰を見下ろす景勝地。「中国のグランドキャニオンと呼ばれているけど、本家よりすごいかもしれない」と豪語する。いくら何でも…。ところが。
「ありえねー」。峡谷に面した展望台に出ると思わず叫んでしまった。天子山も絶景だが、袁家界の岩はより間近に迫る。数十、数百の奇岩がニョキニョキと天に伸びる様は、グランドキャニオンにそびえ立つニューヨークの摩天楼といった趣。谷までの標高差は300メートルほどだが、足元は断がい絶壁。のぞき込むと足がすくむ。
「最初は、世の中にこんな景色があるなんて信じられなかったよ」と得意げに笑う喩さん。見るだけで背筋が凍る岩塔群だが、その壁にしか生えない貴重なキノコ「岩タケ」を採るために岩壁をよじ登る人もいるそうだ。




















