【本文】

  1. トップ
  2. お出かけニュース
  3. 生誕250年・一茶の故郷 長野県北信濃地方

生誕250年・一茶の故郷 長野県北信濃地方

ジャンル・エリア : 甲信越  2013年03月14日

一茶の句碑が立つ大湯

一茶の句碑が立つ大湯

庶民慈しむ句の情景が

 雀(すずめ)の子 そこのけそこのけ お馬が通る

 俳人、小林一茶が詠んだ春の句である。今年は生誕250年と聞き、一茶が愛した信濃を訪れた。

 一茶は1763年、柏原村(長野県信濃町)の農家に生まれた。15歳の時、奉公に出た江戸で俳諧師を目指す。

 生涯に2万句を詠んだといわれる一茶の人となりを紹介しているのが「一茶記念館」である。直筆の日記帳にはその日の天気や会った人を克明にメモ。筆まめな人だったんだなあと思う。また手紙のやりとりも頻繁で「俳句を通して人との付き合いも大切にしたようです」と学芸員の中村敦子さんは話す。

 実はこの記念館にはネコ館長がいる。現在は2代目の「うみちゃん」。毎朝8時すぎに300メートル離れた自宅から歩いて“通勤”してくる。そういえば一茶は小さな動物を自分自身に置き換えた句も多い。中でもネコを題材にした句は300以上。「人により添いつつ人にこびない。そんな猫の生態に一茶も引かれたのでしょうか」と中村さん。

 信濃町を訪れたのは2月末のこと。豪雪地帯で知られる同町だが、この日も家の軒先には雪がうずたかく積もり、一茶の句「是(これ)がまあ つひの栖(すみか)か 雪五尺」が浮かぶ。雪深い土地で暮らす大変さをしみじみ感じた。

 39歳で帰郷し父親の死をみとった一茶は各地を巡り門人を増やしていく。信濃町から東方に約30キロ、ゆっくりと湯治を楽しみ滞在日数が153日に及んだ湯田中温泉(山ノ内町)には「田中河原の記」があり、共同浴場「大湯」の前には句碑が立つ。

 一茶選の初期の俳額が残る中野市は、土びなの里でもある。土びなには奈良家が製作する中野人形と西原家の立ケ花人形の二系統がある。奈良家の5代目奈良久雄さん(80)が作る人形は鮮やかな色合いと、ほっこりした顔がなんともかわいらしい。

土びなに目をやる奈良久雄さん

土びなに目をやる奈良久雄さん

 地道な作業を続ける久雄さんの姿を見て育った次男、由起夫さんが跡を継いだ。きっかけは「父親の作った人形を見た瞬間、魂が入っているのかと思った」ことだった。

 全国行脚を重ね自分の力で俳諧師になろうとした一茶。その強い生き方は、庶民が大切にしてきた土びなを地道に作り続ける奈良さん父子に受け継がれたようだ。

 ▼メモ 「一茶記念館」へは信越線黒姫駅で下車、徒歩5分。開館時間は午前9時~午後5時。入館料は高校生以上500円、小中学生300円(19日まで半額)。無休だが16、17日は要予約(電)026(255)3741。奈良久雄さんの人形展は25日~9月25日に中野市の「日本土人形資料館」で開催。土びなが一斉に並ぶ「ひな市特別展」は15日~4月1日、中野陣屋・県庁記念館で。通常は店舗販売しない土びなを販売する即売会は31日に中野商工会議所で開催。長野県名古屋事務所(電)052(263)4118

(中日新聞夕刊 2013年3月14日掲載)

旅コラム
国内
海外