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日本らしい“継続”の形 伊勢神宮(1) 式年遷宮 三重県伊勢市

ジャンル・エリア : 三重  2013年03月21日

緑が生い茂る伊勢神宮内宮の正殿

緑が生い茂る伊勢神宮内宮の正殿

 今も昔も「お伊勢さん」として親しまれてきた伊勢神宮。今年は20年に一度、社殿を新しく建て替える式年遷宮が行われる。そこで4回にわたって伊勢神宮の旅を特集。1回目は式年遷宮のあらましを文筆家、千種清美さんの寄稿で紹介する。

常若の心

 「お伊勢参り」は春がいい。五十鈴川の清き流れに手を浸し、緑茂る参道を歩く。ざっざっざっ、参道の玉砂利がよく鳴るのも春の陽気のせいだろうか。かつては田植えの繁忙期の前に人々が参拝に来たことから、「お伊勢参り」は春の季語になっている。ことにことしは式年遷宮が行われるとあって、伊勢の町も活気づいている春なのだ。

 江戸時代の俳人、松尾芭蕉が「尊さに皆押しあひぬ御遷宮」と詠んだのは元禄二(1689)年の時。奥の細道の旅を終えた芭蕉は、その足で伊勢へ向かったのである。あの芭蕉も伊勢神宮の遷宮に注目した。

 「宮を遷(うつ)す」という遷宮は神を祀(まつ)る社殿の造営修理のためにご神体を遷すこと。伊勢神宮だけでなく、全国の神社でも実は行われている。けれど、伊勢神宮の場合は20年という周期(式年)で、社殿を新しく建て替えることを祭りとして行ってきた。改修のための遷宮ではないのである。それを飛鳥時代から続けている。

 そこには伊勢神宮ならではのシステムがある。社殿を建てる御敷地は東西に2つ並ぶ。遷宮のたびに交互に新造されるのである。現在お参りするのは東に建つ社殿。今度は西に造営中で、白いシートで覆われた中で作業がなされている。この10月には、こちらの社殿に神様が遷る。

 それにしても、壊れたわけでもないのになぜ遷宮を行うのか。そこには「常若(とこわか)」という神道の精神が根底にあるといわれる。「若」とは年齢的なものではなく、若々しい、瑞々(みずみず)しいこと。大切な神を常に新しい社殿に祀り、常若の力を得てもらうというのである。日本人はわびさびといった古いものにも美意識をもってきたが、また新しいものにも力があると考えてきたわけだ。私たちも新しいものを身につけただけで気分がリフレッシュする。これも新しいものに宿る清浄感がもたらす効用なのだろう。

 遷宮は、また古代のままの形を新しくして現代に伝えてきた。伊勢神宮の社殿は古代の米を納める倉、穀倉が発展した建築で日本最古の形式といわれる。古い形をした古いものは多くある、新しい形の新しいものはさらに多い。けれど古い形をした新しい社殿が式年遷宮ゆえに伊勢に存在する。「常若」の心がもたらした日本らしい“継続”のシステムなのである。

 春はさまざまな節目を迎える季節。お伊勢参りで「常若」の心を感じ新たなスタートを-。 (文筆家)

 ▼千種清美(ちくさ・きよみ) 皇学館大非常勤講師。三重の地域誌「伊勢志摩」編集長を経て文筆業に。新幹線車内誌「月刊ひととき」に「伊勢、永遠の聖地」を連載中。三重テレビで放送中の情報番組「お伊勢さん」全10本の脚本を担当。著書は「伊勢神宮 常若の聖地」(ウェッジ)ほか。三重県観光審議会委員。

(中日新聞夕刊 2013年3月21日掲載)

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