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【長野】源智の井戸、名水を料理やコーヒーに

ジャンル・エリア : まちおこし | 文化 | 甲信越  2013年11月10日

昔も今も「当国第一の名水」といわれる源智の井戸=松本市中央で

昔も今も「当国第一の名水」といわれる源智の井戸=松本市中央で

 松本市街地は、女鳥羽川と薄川の複合扇状地。市内有数の湧水地帯で、たくさんの湧水や井戸があるが、「源智(げんち)の井戸」は、江戸時代の「善光寺道名所図会」で紹介された「当国第一の名水」だ。松本市女鳥羽の画家田口勝さん(69)は、ひしゃくの水を口にするや、「軟らかく、甘い」と声を上げた。

 地域の貴重な水源だったこの井戸は、城下町となる江戸以前から、飲用水として広く使用された。

 しかし、大正時代の上水道の普及で、水源の役割が薄れ、開発とともに井戸の湧水量も激減。歴史遺産として、1967(昭和42)年に市特別史跡に指定されたが、ふたをされ、利用する人もなくなった。

 こうした状況に、往時をしのび現状を憂えた地域住民たちが、井戸水の復元を願った。市職員だった田口さんも源智の井戸をはじめ、市内の商店や民家など松本の古き風情を描き続けていた。ちょうど文化財係に配属され、すぐに名水の復元に掛かった。

 井戸は89(平成元)年に修復。隣接地に40メートルを掘削して安定した水量を確保した。名所図会の絵では六角形だった井戸の木枠を八角形にして取水しやすくし、ベンチを置き、くつろげる小公園にした。

 それから4半世紀。地元住民が定期的に清掃し、地元以外からくみに来る人が増え、コーヒーにお茶に、炊飯や料理までに利用する人が絶えない。今年10月末までに老朽化した井戸の枠が取り換えられ、せせらぎを設置。井戸沿いの高砂通りには自然石をはって整備され、装いも新たにした。

 「源智の井戸には特別の思い入れがある」という田口さん。来し方を振り返り「松本らしさには水が欠かせない。水を生かすのが大事で、ここにきて市内の井戸や湧水の整備が進み、水巡りが楽しくなってきている。そのきっかけになった源智の井戸の修復を思うと、本当にうれしくなる」と目を細めた。

(武井孝博)

 <源智の井戸>松本市中央3、瑞松寺の西隣。1849(嘉永2)年刊行の「善光寺道名所図会」で「当国第一の名水」と称賛された井戸。酒造業者はことごとくこの水を使い、歴代の藩主が不浄を禁じる制札を出して保護してきた。

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