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【京都】海に暮らす舟屋の里 京都府伊根町

ジャンル・エリア : まちおこし | グルメ | | 近畿  2014年10月09日

舟屋を望む湾内では、魚釣りも体験できる

舟屋を望む湾内では、魚釣りも体験できる

独特な家、異郷の味わい

 穏やかな海に向かって、大きく口を開けた家々が浮かんでいるように見えた。1周5キロ、ぐるりと円を描く小さな湾。背後には山が迫る。狭い海辺の土地から海に押し出されるように、隙間なく軒が連なる。間違いなく日本家屋なのに、そこに暮らす人々の海に密着した独特な生きざまが濃厚に伝わってきて、異郷に迷い込んだかのようだった。

 京都府伊根町の伊根湾は若狭湾の西部にあり、さらに奥まった入り江になっている。風のない日の海は、湖のように波が穏やか。潮位は年間を通じて50センチほどしか変化しない。日本海の豊かな漁場に生きる漁師たちは江戸時代中期、狭い土地を活用するため、海辺に石垣を積み「舟屋」を建てた。

 木造2階建ての1階は船置き場兼作業場。海から傾斜がついていて、そのまま船を家の中に引き入れられる。捕った魚は網に入れ軒先の海で生かし、食べる分だけさばく。家の中から釣りができ直接、漁にも出られる。伊根湾の地形だからこそできる、漁師の家の理想型だ。

 現在ある230軒の舟屋は明治から昭和初期に建てられた。住民たちは往時の軒数を減らすことなく守り続け、2階は今も生活の場だ。2005年に国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されたことも、家並みを守る大きな支えになっている。

 かつては湾外との交通が船しかなく、道路ができても都会から遠い“秘境”だった。中部、関西方面からの高速道路整備が進み、近年は観光に力を入れている。住民が町並みや舟屋の中を案内するコースを設け、軒先からの釣り体験も始めた。漁船での湾内遊覧もあり、案内人の山田敏和さん(65)は「舟屋は海が玄関口。漁師と同じ目線でのんびり過ごしてほしい」とほほ笑んだ。

 新鮮な海の幸は、もちろんこの地の自慢。京都の料亭で「丹後ぐじ」と呼ばれるアマダイは、素手で触らず、1匹ずつタグを付ける徹底した品質管理でブランド魚として売り出している。冬場は寒ブリやカニも旬を迎える。

新鮮な魚にこだわった「かもめ」の定食=いずれも京都府伊根町で

新鮮な魚にこだわった「かもめ」の定食=いずれも京都府伊根町で

 舟屋を使った民宿や食堂があり、魚は毎朝、漁港で仕入れる。食堂「かもめ」の看板メニューは、1500円で刺し身と煮魚、イカの煮付けなどが付く定食。おかみの宮下礼子さん(72)は「旬の魚を使うのでメニューは毎日違います。伊根の家庭の味そのままです」と話した。 (森耕一)

 ▼メモ 伊根町周辺へは、7月に舞鶴若狭道が全面開通し、名古屋から名神高速、北陸道を通り、最寄りの京都縦貫道・与謝天橋立ICまで、すべて高速道路で来られるようになった。鉄道はJR京都駅から北近畿タンゴ鉄道経由の直通特急で天橋立駅まで約2時間。さらに丹海バスで1時間。住民ガイドや釣り体験は予約が必要。問い合わせは町観光協会(電)0772(32)0277

(中日新聞夕刊 2014年10月9日掲載)

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