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【福井】開高健が愛したかに丼 福井県越前町

ジャンル・エリア : まちおこし | グルメ | 特産 | 福井  2014年11月27日

かつては下を国道が通っていた自然のトンネル「呼鳥門」=福井県越前町で

かつては下を国道が通っていた自然のトンネル「呼鳥門」=福井県越前町で

色も鮮やか“海の宝石箱”

 日本海の冬は、海鮮のおいしい季節。福井の味覚といえば「越前がに」で、今年は6日に解禁された。越前海岸には、期間限定で食べられる食通ゆかりの“丼”がある。

 越前がにはオスがズワイ、メスがセイコと呼ばれる。セイコはズワイに比べて小さく、身は少ないが、地元の人たちはみそや内臓などを好んで食べる。越前町梅浦の「ふるさとの宿 こばせ」で提供される「開高丼(かいこうどん)」は、セイコガニ8杯と米2合を使った豪快な丼。かつてこの宿を訪れた昭和の作家、開高健(1930~89年)が愛し、命名した経緯がある。

 開高が初めて「こばせ」を訪れたのは65年12月。ベトナム戦争の従軍の疲れを癒やす目的だった。5代目経営者の長谷裕司さん(53)は「先代によると、開高先生はカニをご所望し3泊された。料理を出し尽くした後、特別なものではないが、カニそのものの味を楽しめる家庭の味として提供したのが丼だったようです」と話す。一心不乱に食べた開高は大変気に入り、「開高丼と名付けなさい」と語ったという。その後も亡くなる前年まで十数回訪れ、この丼に舌鼓を打った。

メスの越前がにを、たっぷり使った開高丼=福井県越前町の「ふるさとの宿 こばせ」で

メスの越前がにを、たっぷり使った開高丼=福井県越前町の「ふるさとの宿 こばせ」で

 赤、白、黄緑と色鮮やかな開高丼は、身やみそ、外子(卵)、内子(卵巣)が2層に盛られている。目の前に出された瞬間、ほのかに磯の香りが漂った。開高が「海の宝石箱」と称した逸品は、口に入れるとプチプチとした食感や、濃厚な海鮮の味わいが広がった。しょうゆ味の効いたご飯は硬めにたき、カニ殻から取っただしで味付け。「当時、開高先生が召し上がったスタイルを忠実に再現している」と長谷さん。私たちは大人3人でようやく食べきったが、「量は質に転換する」と語った開高は、1人で完食したというから驚いた。

 当初、裏メニューだった開高丼は十数年前から広く知られるようになり、今年も土日祝日の昼時は予約でいっぱい。漁期を終える年末までの提供で1万1400円。9000円、6800円の小さめサイズもある。

 越前海岸沿いの斜面には、12月から2月にかけてスイセンの花が咲き誇る。東尋坊や呼鳥門(こちょうもん)など、日本海の荒波と風による自然の造形も堪能できる。 (古谷祥子)

 ▼メモ 越前海岸へは車利用が便利。「ふるさとの宿 こばせ」=(電)(0120)370018=へは、北陸道・敦賀ICから国道8号を福井方面へ進み、越前・河野しおかぜライン(旧河野海岸有料道路)と国道305号経由で約1時間。JR北陸線の最寄り駅は武生。12月1日から来年2月末までは、JR敦賀駅から越前町の、それぞれの宿泊先まで行けるシャトルバスを運行する。料金は片道1000円。宿泊先への予約が必要。

(中日新聞夕刊 2014年11月27日掲載)

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